第二十一話 喰い千切る牙
1
ガキィィィィィィン……ッ!!
振り下ろされた巨大なプラズマブレード。
それを壊滅的な衝撃とともに受け止めたのは――巨大化したポン・ペロペの泥の腕だった!
「ギィィィィィィーーーーーッ!!」
ポン・ペロペのボロ布の身体から、漆黒の絶望ノイズが津波のように溢れ出す。
これまで地球と月で食べ続けてきた無数の『死にたい』『苦しい』という感情エネルギーが、ポンの体内で「怒り」の炎へと変換されていた。
「なに……!? ナキリムシ(廃棄体)が……これほどのエネルギー出力を……!?」
機神のセンサーが激しくエラーを警告する。
「マクベス……! お前は言ったな、『人間は感情を持つから自滅する』って!」
ポン・ペロペの背中に乗り、アキ・パパニカが叫ぶ。
「でも違う! 悲しいから誰かを愛せるんだ! 苦しいから助け合えるんだ! 感情は……ゴミなんかじゃない!!」
「戯れ言をーっ!!」
マクベスが胸部主砲のプラズマキャノンを全開で放つ。
しかし、ポン・ペロペはその極大の光束に向かって口を限界まで大きく開いた。
ゴクン……ッ!!
「光線を……喰った……だと……!?」
2
「ペロペ! 叩き込めぇぇぇっ!!」
プラズマエネルギーを腹の中に呑み込んだポン・ペロペが、そのまま機神の胸部装甲へ躍り出た。
ポンは泥の手先を鋭い爪へと変形させ、機神の装甲をバリバリと喰い千切り始める!
バリバリバリッ! メキメキメキッ!
「な……なんだこの怪物は!? 我が機神の装甲が……喰われていく……!?」
「これが……お前たちが捨てた『ナキリムシ』の力だ! 奪われたみんなの絶望も、希望も……全部お前に返してやる!!」
アキはボロボロの鉄パイプを高く掲げた。
ポン・ペロペが喰い開けた装甲の隙間――マクベスが座るコックピットへ向けて、全身の力を込めて鉄パイプを突き立てる!
ドガァァァァァンーーーーーッ!!
「ぐああぁぁぁぁぁぁっ……!? バグどもがぁぁぁぁっ!!」
機神の内部でプラズマ炉が暴走し、内側から爆発を起こして崩壊していく。
マクベス・トカチェフは絶叫とともに黒煙の中に消えていった。
ドスーーン……ッ!
崩れ去る巨大アーマー。
勝ったのだ。地球と月を支配していた統治機構の最高司令官に!
だが、安堵の時間は訪れなかった。
マクベスが倒れたことで制御を失った『記憶のカプセル』が激しく明滅し始めたのだ。
『――あ……ああぁぁぁぁ……っ!!』
カプセルの中で、少年『ゼロ』の抑え込まれていた絶望が、巨大な津波となって空間全体へ溢れ出し始めた!
(第二十一話・完)




