第二十話 黒き機神と最後の軍団
1
ズゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
爆音とともに現れたのは、全高数十メートルに及ぶ巨大迎撃アーマー――機神。
重厚な漆黒の装甲からは、月面記憶銀行から直接供給される莫大なエネルギーが激しく噴き出していた。
「マクベス……! 地球から追ってきたのか……!?」
アキ・パパニカが鉄パイプを握り直し、見上げる。
コックピットハッチ越しに、マクベス・トカチェフの冷酷な瞳がアキたちを見下ろしていた。
「当然だ。この『ゼロ』こそが我が統治機構の心臓であり、世界を管理するための唯一の礎。これを破壊させるわけにはいかん」
「礎だと……!? こいつを死ぬことも許さずに閉じ込めて、子供たちの思い出を燃料にしてることが管理かよ!」
「そうだ」
マクベスは微塵の迷いもなく言い放った。
「人間は感情を持つから争う。絶望を持つから自滅する。だからこそ『死にたいノイズ』をこの少年一充に集約し、残りの人間から不要な感情を減価償却する。これ以上の完全平穏がどこにある!」
「ふざけるな……! 感情を捨てて生きるなんて、ただの動く死体だ!!」
「問答無用。これよりエラー個体および異物『ゼロ』の完全消去を開始する」
機神の背部から、数十基の自律型攻撃ドローンが一斉に展開された。
その先頭に立つのは、地球で猛威を振るった清掃マシンや、月面で改造された凶暴なナキリムシたちの軍団だった。
2
「チッ! どこまでも湧いてきやがる……!」
カムジ・チャモロが血まみれの身体を奮い立たせ、前に出た。
「アキ! マクベスは機神と一体化してやがる! 外部からの攻撃じゃラチが明かねぇ!」
「カムジ……!?」
「俺がドローンどもを食い止める! お前はペロペと一緒に……あの機神のコアをブチ破れ!!」
「無理だ、カムジ! お前の体はもう……!」
「黙って見てろ、お坊ちゃん!」
カムジは胸元の真鍮製ペンダント――妹『ルラ』の刻印を強く踏みしめた。
「俺はスカベンジャーだ……ガラクタの中で生きて、ガラクタとして死ぬ……! だがな、妹の笑顔を取り戻すためなら、命の一滴まで燃やし尽くしてやるよぉぉぉぉっ!!」
カムジが手製爆薬を全開で起動させ、迫り来るドローン軍団の渦中へと特攻していく!
ドドドドドドドッ!! 爆風と閃光!!
「カムジーーーーッ!!」
アキの叫びが響く中、機神の巨大なプラズマブレードがアキへ向けて振り下ろされた。
「消え去れ、バグめ!」
「させるかぁぁぁぁぁっ!!」
アキとポン・ペロペが、迫り来る死の刃に向かって真っ直ぐに跳び出した!
(第二十話・完)




