↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナキリムシ  作者: ゆうちぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/25

第十一話 カウントダウンの鐘

1

 施設全体が激しく鳴動していた。

 天井の崩落とともに、統治機構の無人警備ドローンが群れをなして雪崩れ込んでくる。

「アキ! 燃料は確保できたか!?」

 カムジ・チャモロがナイフでドローンのセンサーを破壊しながら叫んだ。

 全身泥だらけのアキ・パパニカは、重たい青光のシリンダーを両手でしっかりと抱え直す。

「取ったぞ! これで『アストラエア』が動く!」

「よし、野郎ども! ズラかるぞっ!!」

「ギィィィーーーーーッ!!」

 ポン・ペロペが口から泥の砲弾を吹き出し、迫り来るドローンの群れを牽制する。

 三人は崩れゆく第零解体場の通路をがむしゃらに駆け抜け、旧世界の格納庫へと飛び込んだ。

 格納庫の中央で、漆黒の宇宙船『アストラエア』が鈍い光を放って静かに佇んでいる。

「アキ、燃料シリンダーを後部のメインリアクターに叩き込め! ペロペ、お前はバイパスの回路を繋げ!」

「わかった!」

 アキは船体後部のハッチをこじ開け、熱を帯びたシリンダーを中央スロットへ強引に押し込んだ。

カコン……ガチィィィン!!

 重厚なロック音が響き、船体全体に蒼いプラズマの脈動が走り抜ける。

『――システム起動。旧世紀型脱出艇アストラエア、メインエンジン再起動――』

『――ターゲット:月面第4領域。ブースター点火まであと120秒――』

「動いた……! 動いたぞ!!」

 アキが叫んだその時、格納庫の巨大な天井扉が激しい爆破音とともに吹き飛んだ。

2

 空から降り注ぐ炎と硝煙の中、無数の黒い軍用機を従えて降り立ってきたのは――統治機構総司令官、マクベス・トカチェフだった。

「どこへ行くつもりだ、エラーの子供たちよ」

 マクベスの冷酷な声が、通信スピーカーを通じて格納庫全体に響き渡る。

「月は『純粋な記憶の聖域』だ。泥と感情のバグに汚れた君たちが足を踏み入れて良い場所ではない」

「うるせぇんだよ、イカレ司令官が!!」

 カムジが操縦席から身を乗り出し、アストラエアの下部機関砲をマクベスへ向けて掃射した。

バババババババッ!!

 しかし、マクベスの周囲に展開された強力な電磁シールドに弾かれ、弾丸は虚しく散っていく。

「我が統治機構の迎撃衛星《ギロチン》が、すでに上空で照準を合わせている。この船が地上を離れた瞬間、分子レベルで蒸発することになる」

「ハッ……脅してんじゃねぇよ!」

 カムジは操縦レバーを力任せに握りしめた。

「俺たちはな、最初から無価値だって捨てられたガキなんだよ! 蒸発だろうが何だろうが、月に一発殴り込みをかけなきゃ死んでも死に切れねぇんだ!」

「カムジ……っ!」

「アキ、ペロペ! 座席に掴まってろ! 一気に大気圏を突き抜けるぞ!!」

『――ブースター点火まで、あと10秒……9……8……――』

 ポン・ペロペがアキの隣に飛び乗り、不安そうにアキの手をギュッと握りしめた。

 アキはその温かい手をしっかりと握り返す。

「大丈夫だ、ペロペ。俺たちは……絶対に行く。奪われたお前の名前を、サラの心を……全部取り戻すために!」

『――3……2……1……点火(プラズマ・イグニッション)!!――』

ゴォォォォォォォォォォォンーーーーーーッ!!

 まばゆい蒼炎が格納庫全体を包み込み、重力を置き去りにするように『アストラエア』が地上を蹴った。

 爆風の中、夜空を破って上昇していく一筋の光。

 少年たちの、地球への最後の叛逆が始まった。

(第十一話・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。