↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナキリムシ  作者: ゆうちぇる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/25

第十話 第零解体場の決戦

1

 巨大なプレス機が重い金属音を響かせ、ベルトコンベアの上を無数の廃棄物が流れていく。

 統治機構の直轄施設『第零解体場』。ここは12歳を超えて使い古された機械や、社会から「無用」と切り捨てられたナキリムシたちが集められ、砕かれる最果ての地だった。

「……ここが、第零解体場か……」

 アキ・パパニカは天井のキャットウォークから、眼下に広がる地獄絵図を見下ろしていた。

 隣にはカムジ・チャモロ、そして泥の身体を丸めて気配を消すポン・ペロペがいる。

「奥の『中央エネルギー保管庫』に、旧型船を動かす高圧プラズマ燃料がある。警備を叩き潰して一気に奪うぞ」

 カムジがナイフの柄を握り直し、ニヤリと不敵に笑う。

「アキ、ペロペ。燃料を手に入れたら、俺が警備を引きつける。お前らはそれを持って『アストラエア』まで走れ」

「また一人で残る気かよ!? ダメだ、今度は全員で帰るって決めたろ!」

「へっ、甘ぇこと言ってんなよお坊ちゃん。全員で脱出するために……っ!?」

 カムジの言葉が途切れた。

 キャットウォークの先端、降り注ぐ火花の中に、一人の女が立っていた。

 軍服の胸元をはだけさせ、両手には巨大なプラズマカッターを携えた統治機構の処刑人――マクベス・トカチェフの側近だ。

「エラー感染体および廃棄体を発見。これより解体作業を開始します」

 女の冷徹な声と共に、プラズマカッターから青白い熱線が放たれた!

バチバチバチッーーーーーッ!!

「伏せろっ!!」

 カムジがアキの頭を押さえ込み、間一髪で熱線を回避する。溶けた金属の天井がドロドロと床に垂れ落ちていく。

2

「ペロペ! カムジを援護しろ!」

「ギィィィーーーーーッ!!」

 ポン・ペロペが弾丸のように跳躍し、処刑人の顔面に向かって泥の塊を吐き出した。

「なっ……不潔なゴミが……!」

 視界を奪われた処刑人が一瞬体勢を崩す。その隙を見逃さず、カムジが地を這うようなスライディングで肉薄し、ナイフで足を払い飛ばした!

「今だ、アキ! 奧へ走れぇっ!!」

「くっ……任せたぞ、カムジ!」

 アキは崩れ落ちるキャットウォークを駆け抜け、中央エネルギー保管庫の重厚なシールド扉へと飛び込んだ。

 保管庫の中央に設置されたガラス管の中で、青く眩い光を放つシリンダー――高圧プラズマ燃料だ。

「これさえあれば……月へ行ける……!」

 アキが非常用ロックを解除し、熱を帯びた重量級のシリンダーを両手で抱え上げたその時――。

キーーーーーーン……!!

 頭の奥底で、今までで最も強烈な電子ノイズが炸裂した。

 視界全体がバグのように歪み、文字化けした空間の裂け目から、聞き覚えのある声が響く。

『――ア・キ……聞こ……えますか……?』

「なっ……!? この声……サラサラ・クック……!?」

 空間のノイズが晴れた場所に浮き上がったのは、巨大なモニターに映し出されたサラサラ・クックの異形なシステム顔だった。

『無駄ですよ、アキ・パパニカ君。あなたが月を目指すことすら、月面記憶銀行の予測アルゴリズムの範囲内なのですから』

「なに……!?」

『地球に残された全てのエラー(不純物)を誘き寄せ、宇宙ごと一網打尽にする……。マクベス閣下が用意された『最後の清掃プログラム』が、すでに始まっているのですよ』

ズズズズズズズ……!!

 第零解体場全体が、牙を剥くような激しい振動に包まれる。

 天井が割れ、巨大な宇宙迎撃要塞の砲門が、この解体場全体に向けられて固定されていく。

「ははっ……罠だと知ってても行くさ!」

 アキはシリンダーを抱き締め、サラサラ・クックのモニターを激しく睨みつけた。

「俺たちが月へ行くのは、システムに従うためじゃない! お前らが奪った記憶と心を……全部叩き壊して取り戻すためだ!!」

 アキは扉を蹴破り、カムジとポン・ペロペが待つ戦場へと飛び出していった!

(第十話・完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。