第34話 苦い目的達成
時折光を照射しては方向を変える天使。
倒れているのは兵士、役人。
生きて怯えている兵士、役人も少数いる。
多分関る機会がなかった者らしいけど、この数でこれが終わったら街は機能するのだろうか?
「降りてくるぞ?」
「屋内に入るのかな?天使の入った所は全て調べよう。『天使は』攫われたドワーフを殺さないよ」
天使の動くきっかけでドワーフ女性が殺されている可能性はあるけど急ぐだけ急いだ。
全力で走るとベースリングよりドワーフは足が遅いらしい。
特にワジはとても鎧が重くて追いつけそうにない。
「トリルさん、ドワーフの集団に一度ヘイストを。ベースリングの僕達ではドワーフ女性達は付いて来てくれないよ」
第3階位の奇跡にはエリアヒールもあるため1回だけにしてもらった。
官憲の犯罪者牢、執政館どちらも外れだった。
次に天使が向かうのは豪邸だった。
「なんだここ?」
「伯爵の私邸かな?奴隷がいる可能性があるね。牢はあると思うよ」
「ドワーフと言わず全部開けるか?アラン」
「開けるぞ、エミール」
アランと僕の相談で奴隷牢全てをアラン達は開放すると言い出した。
「逃がすからにはこの領から離れないと、次の引継ぎ領主に戻されてしまうよ。ドワーフとの共栄圏まで護衛出来るかは別問題だよ?」
「やるぞ」
アランの決心は固い。
昔僕も奴隷解放を狙ってリッキーさん以外は完全に失敗している。
今回は天使によって兵士がズタズタになってるけど心配は尽きない。
天使は一部屋ずつ光を照射していて、館内で追いついてしまった。
「天使が照らした部屋から順に調べていこう。トリルさん、造物主から声が聞こえたら僕達にも教えてくれるかな?」
彼女が造物主の裁定を聞き取れるキーパーソンだ。
数部屋を順に調べ一階で奴隷牢を発見。
「ここだ!女達だ!」
もうすでに皆傷物にされたであろう全裸のドワーフの『女牢』に怒り、鉄格子戸を斧で殴り始めるドワーフの戦士達。
エミールはこと切れた看守から鍵束を取り出し順に牢を開けていく。
「ここじゃないよ。きっかけはどこ?」
僕はトリルと天使を追い続ける。
付いて来たのはプリムラとディル、デスティンだけだった。
二階に上り領主の血族に光を照射する天使。
そして一つの部屋に入った時だった。
「禁忌を発見。抹消せよ」
トリルが口を開いた。
今まででもことさら強い光が放たれ、中に居た魔術士や僧侶が倒れ、そして書架や何かしらの機具も消去していく。
「ひっ!?」
光が収まった後トリルとプリムラが悲鳴を上げた。
「……そうだね。ベースリングを作り替える研究であるならそちらも被害者がいるはずだったんだ……」
子宮、卵巣を摘出されたドワーフとベースリング女性の遺体が合わせて六人ベッドに横たわっていた。
―――
天使が居なくなり僕達は帰る準備を始めた。
アランは一応メンバーと言えるマネージャーの死を伝えるためトリルと共にギルド支部へ入り、ディルも取材のため付いていく。
ヴァイスとエミールはマネージャーの遺体から彼の身分証とアランパーティーで稼いだ彼ら本来のお金を回収するため外へ。
ドワーフとブラス、ヤオに想定より膨れ上がった人数を食べさせながら東へ行くため、伯爵邸食糧庫の略奪と護送の指揮を頼む。
そして僕とプリムラは依頼人として、マーティンは依頼の受諾者としてモンド、エフゲニー両家を迎えに空地へ。
全員集合の場所はギルド支部前。
ギルド支部に入るとまだ説明は続いていた。
正確にはある一点で受付がごねていた。
「マネージャーが亡くなったのなら王都に帰って招集を受けてもらわないと」
「いえ、依頼途中ですのでそれを完遂するため東へ行ってもらいますよ。完全前金で頼んだので放棄は困ります」
横から僕が口を出しマーティンは渡した僕の財布を取り出す。
「とりあえずマネージャーさんとここの領主が死んだ理由は天使だ。王都に連絡だけ入れてくれ」
アランはそう言ったところでヴァイスたちが少ない荷物でギルドに入って来た。
「どれが役人の身分証か分からない」
ヴァイスの持って来た遺品から名前と姓のあるカードを受付に渡す。
「国に伝えてください。先の伯爵と「同じ考えの者全て」に神罰執行者が来ますよ」
受付が怯えて頷く。
別に神罰で消える者がいるならそれは良い。
しかし被害者が出てから天使が動くなら未然に防げる方がなお良いからね。
街の戦場跡から少し離れた場所まで無理に進んで野営。
街からの追手は来ない。
ディルに食事を与えながら話す。
「もう街は防衛すらままならない。暫くは冒険者動員で街を固めることになると思うよ。あとは追ったらまた天使が来るかもしれないってプレッシャーもあるだろうね」
「そりゃ追えないねぇ。ネタとしては特ダネだった。印刷が待ち遠しいねぇ」
「ハーピーに手はないけど印刷ってどうしてるのかな?」
「もちろん手のある種族に頼むね。アタシら取材は記憶力で運ぶんだ。大陸ジャーナルは男のハーピーが取材。それ以外の種族で出版。女のハーピーは文盲のため声で届けるアナウンサーだな。ハーピーは言葉だと最強なんだこれが」
トリルとプリムラは特に男を恐れる『女牢』の二種族の女性達の世話でここを離れている。
衣服のない女性達は毛布を羽織り、男性への恐れが少ない女性達が周りの支援でなんとかトラウマ持ちをサポートをしている。
トリルが女性の左腕にヒールを使い焼き印を消して見せた。
この話が伝わり翌朝に焼き印治療の時間が設けられることになった。
デスティンは斥候能力持ちとして一番外にいる。
無事に翌朝を迎え、出発準備中にトリルが奴隷だった人を集め始めた。
3回のエリアヒール、9回のヒール。
使い切ってもまだ漏れがある。
「今日はもう無理ですが明日からも、治療の続きをしましょう」
逃亡奴隷のやる気は目に見えて上がりドワーフ戦士から荷運び役を申し出る者が出始める。
戦士達は護衛に集中、旅程は思ったより遅れることはなかった。
名前のない奴隷が今後、平民に混ざって暮らすための名前を相談しながら進む。
知能が動物並みならこの群れの大きさに諦めたのか運よくモンスターからの襲撃なしで元の集落に二日かけて到着。
エリアヒール2回で逃亡奴隷の焼き印は治療が済んだ。
「ワジさん、この人数を受け入れられるかな?」
「ガレカ山脈沿い全部がドワーフの共栄圏だ。南北に広い。事情を話してここ以外でも耕す土地を工面してもらう」
「なら役所への届け出は行先が決まってからだね。女将さんに頼んで暫く役所から匿ってもらえるように寝食の準備を相談しよう」
「女性の服。集めてもらわなきゃ」
プリムラの指摘に頷く。
「ドワーフは四人足りなかった。そっか。神様、旅立つ死者に安らぎがありますように……」
女将は実験の犠牲となった女性に冥福を祈り、女給仕達を仕切って方々に連絡を入れる。
それを見届けて僕は皆の元に戻った後、モンド、エフゲニー両家をリッキーさんの暮らす仮部屋へ案内する。
読み書きの出来るリッキーさんは役所とのやり取りで絶対に必要な人になる。
モンドが感極まって頭を下げる。
「先生。俺達を本当にここまで連れてきてくれてありがとうございます!」
エフゲニーも安堵したのか涙ぐむ。
「俺達冒険者が戦うところを近くで見た。あんな怖い仕事を弟にさせなくて済むんだ」
「いえ、街からここまでの旅の費用を出したのはクーランさんですよ。しかし御無事で良かった」
「白兄ちゃんって、やっぱり変な人」
第一章を書きあがりました
一話三千文字程度で三八話になります
ただいま第二章の肉付け中です
皆様にお願いがあります
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全てに対応出来るかは分かりませんがコメントをお待ちしています




