第33話 カテゴリー天使
「遺伝優先度の暴力で他種を廃して、不当を働いたのはカレギアでしょう?遺伝優先度と寿命の反比例はむしろ他種との共存社会を適切にするのでは?」
「青二才め。それは過ぎ去った過去の話、私は未来を見ているのだ。食欲三倍以上の穀潰し種族など必要がない。共存など不要。ベースリングのみで完璧な社会を構成すれば良い」
僕の質問を笑って切り捨てる伯爵と呼ばれる僧侶。
「来たよ、クーラン」
プリムラの声で振り向くと彼女とトリルだけでなく、アランパーティーとディルまで一緒にいる。
「実験。どんな事をするかは想像したくありませんが、不自然な人造モンスターを作っておいてベースリング以外を許さないとは二枚舌では?」
「分からんのか?土地と地位は有限なのだ。もし長命種が君臨してはその椅子は決して短命に継承されることはない。寿命の長短は差別社会を作る。動物はともかく人は一種で良い」
「それで遺伝優先度と寿命の両方をとって差別をする側に立つんですか」
伯爵は差別を否定しているようで肯定している。
「時がたち他種がいなくなればその認識すらなくなる。私の考えは当然の物となる」
カレギアの成り立ちは外のディルから指摘されるまで知らなかった。
忘れるのは多分本当だろうね。
「差別の為に人相手に戦争起こす。今直面しているモンスターに剣を向けずに何を考えているんですか」
「ずっと笑ってるけど全否定なんだな。クーラン」
「うん、クーランは嫌いな人に笑うんだよ」
ディルとプリムラが後ろで話している。
「ここではドワーフしか手に入らんが三倍でも見せる成果としては十分。この功績で我が子を王女と婚姻させ私は伯爵から国父となる。そして大陸全土に進出しエルフの寿命を得る。カレギアで大陸を塗りつぶすのだ」
「そうですか。つまり貴方は出世の切り札として周りにはまだ伏せている。貴方が居なくなれば止められるというなら貴方はここで殺します」
「難しいことは分からんがドワーフはあいつを許さん!」
ワジが周りに聞こえるように吠え、呼応するようにドワーフ達が吠える。
僕が伯爵を巻き込むようにマインドブラストを放つ。
「貴様の魔法だったか!だが青二才の技量で私の抵抗を超えられるものか」
精鋭で固めてるようで伯爵の親衛隊で効果があった者はごく少数。
その少数を排除するようにすぐに人員が交換される。
「またお前か!いい加減にしやがれ!」
僕のすぐ後ろでヴァイスの声が上がる。
振り向くと彼はマネージャーの腕をひねり上げていた。
マネージャーの手にはそこらに落ちていたであろう矢が握られている。
僕を後ろから刺そうとして止められたらしい。
「お前達には伯爵の素晴らしさが分からんのか!?」
「言ってることは分かりましたが素晴らしいとは思いません。結局はそれはカレギア貴族で独占されますよ。平民はそのまま、他国文化を認めないため奴隷はむしろ増えるでしょうね」
イサラ国の血が入る僕は予測を話した。
「だったら俺達も反対だ。奴隷なんて不幸を押し付けるもんじゃない」
アランが宣言し盾を一度下ろして自分の顔を伯爵にさらして見せる。
トリルが僕の傍に立つ。
「勇者候補生ではないか。勇者が国に逆らうな」
「アランの考えは私が改めさせます。私にも寿命を!」
マネージャーがヴァイスに捕まったまま伯爵に媚びる。
「ふん、勇者候補生は捕らえる……しかし青二才。お前はこの戦の要、我が奇跡で死ぬがよい!レインボウレイ」
頭上から虹色の光線が僕に降り、体を焼く。
開戦でプロテクションをもらってこの威力、一人狙いの奇跡で良かった。
瀕死で跪いた僕はワジの助けを借りて何とか立ち上がってみせる。
「……うぅ……」
「クーランさん、無理は駄目ですよ!ヒールを」
体の火傷を治され僅かな体力のまま立ち上がった僕に伯爵は吐き捨てる。
「奇跡に耐えるとは罰当たりな。だが二度はない。レインボウレイ」
光は現れた。
虹色の光線に先んじるように天から降りた光が僕への光線を遮っていた。
もう沈む寸前の赤い夕陽とは別の白い光球、その中に見えるのは。
「貴方は人まで合成獣にしたんですか!?」
人の姿に翼が増設されたハーピーとはまた別の何かだった。
―――
あまりにも人に似ている合成獣。
顔は端正過ぎて性別も分からず一切の表情を浮かべていませんでした。
クーランさんはその心が獣か人か、また本意か不本意かの区別が出来ずどうするべきか迷ってるようでした。
「アナライズ。名称未設定、カテゴリー天使、弱点不明」
私がアナライズした結果にクーランさんは愕然として急いでドワーフ達に指示を出しました。
「全隊止まってください!あの光は決して関ってはいけない!」
「あいつが作ったモンスターだろ?」
ワジさんの確認にクーランさんは首を横に振りました。
「人に、生物に見えるけどあれは神造道具です。造物主の作品です。決して攻撃しないでください」
「神造道具がいったいなぜここに来たんでしょう?」
私が驚いて質問したらクーランさんは説明してくれました。
「人の前に直接現れる天使。それは必ず造物主に逆らった者に神罰を執行するため送られた仕様だよ。関ってはいけない」
「造物主の作りし世界の理を曲げ、あってはならぬ人の変質を産む者よ。汝は破滅した」
私の頭の中に声が流れます。
天使は一切口を開かず、クーランさん達は無反応。
ただ、反応を返したのは伯爵達僧侶でした。
これは天界からのこの場に居る私達への交信だったようです。
「あってはならぬだと?人が未来を見て何が悪い!」
私は天界の声を皆さんに伝えました。
「そもそも人はベースリングだけじゃないんだなこれが。やっぱ粛清は造物主には許せんのね」
ディルさんは頷いてます。
「あってはならぬ人の変質?やはりベースリングの寿命は造物主の規格なんだね」
クーランさんが考え込みます。
伯爵がレインボウレイを天使に向かって放ちます。
「造物主の力を借りた奇跡が造物主の作品を壊せるはずがないのに」
クーランさんの言葉にアナライズブックを見返すと光属性無効の文字が浮かび上がってました。
「それを抜きにしてもまず勝てませんよ。罪人より弱い神罰執行者が送られるとは思えません」
クーランさんの言葉通り、兵士達の矢をいくら受けても揺るがない天使は強い光を伯爵達に照射します。
照射された光は兵士の陣を一巡りした後こちらにも向かってきました。
光はドワーフの皆と私達も飲み込み……。
「うおっ!?あれ?全然痛くない?なんだこれ?」
確かに私達を飲み込んだ光はそのまま過ぎ去っていきました。
「驚いたよ。ドワーフやハーピーには影響がないかもしれないとは微かに期待してたけど、ベースリングの僕達まで生きてるなんて」
「痛くない」とアランさんが言っていた通り私達は無傷でした。
クーランさんは伯爵の奇跡でひどい火傷を負ってましたが、この光は別の物だったみたいです。
「こいつを見ろ。はったりじゃなかった」
ヴァイスさんが目の前にマネージャーさんを投げ出しました。
一切傷がないのにピクリとも動きません。
兵士達も倒れたまま誰一人として動きませんでした。
「街に飛んでくよ!?」
プリムラさんの言った通り天使はこの場から街を目指します。
「天使が現れたきっかけ……ドワーフ女性が被害に遭ったのかもしれない。ワジさん、追いかけよう」
「なんだと!?急げ、助けられるだけ助けるぞ!」
クーランさんの指示で私達は白い光を頼りに街に入りました。
第一章を書きあがりました
一話三千文字程度で三八話になります
ただいま第二章の肉付け中です
皆様にお願いがあります
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全てに対応出来るかは分かりませんがコメントをお待ちしています




