第32話 コンバット。ドワーフ奪還戦
僕達は罠を解除しながら西、街を目指す。
「日のあるうちに街に入るぞ!」
僕からの報告は昨夜皆に伝えている。
モンスターが夜でも目が見えるかどうかは分からない。
亡霊が分からないドワーフ達もはやる血気とこの理由で日中の接敵を目指していた。
相手が動かなくても罠のせいで急ぎでも夕になると斥候達は見立てている。
「勇者候補生を国に逆らわせるなんて大問題だ!絶対戦うな!」
アランか自分の体面を気にしてマネージャーはわめく。
「依頼の内容では本当に戦わなくても良いよ。後ろで兵士の陣が壊れるまで待って、安全が確認されたら護衛対象を迎えてくれれば十分」
「お前はどうする?」
「僕は勇者候補生パーティーの正式メンバーじゃないよ」
アランの質問にはぐらかしてみせた。
日が若干落ち始めたころ斥候達が戻って来る。
「本当に数が居るな。モンスターも3体で間違いない」
エミールから報告が入り、ドワーフ達は盾と弓を準備。
「遠さで言えば弓は魔法より遠い。魔法の強みは広さですよ。弓の撃ち合いを盾で守りながら進んで魔法が届く距離に近寄ったら魔法が広く襲いかかってきますね」
「魔法なんてこっちにはない。いつもこの差で苦労してたんだ。どうする?」
ドワーフ戦士の長がこの説明に質問を返す。
「魔法の弱点は回数制限がある事です。だから「より多くを巻き込める効率」を求めています。なので僕に専属の盾持ちを少数精鋭だけつけて先行させてください。本隊が届かない距離なら僕達を狙うか迷いが出ますよ」
ワジが弓を手放して僕の背もカバーできるタワーシールドを持って来た。
「精鋭だぞ。俺が付く」
「僕が状況を混乱させた後本隊は一気に相手に詰めてください」
「お前一人でそんなに崩せるのか?」
戦士の長にへらへら笑うディル。
「死霊術は場を荒らす。分からん殺しだらけなんだこれが」
「クーランさん私達も行きます」
トリルとプリムラが先行に加わろうとするが断った。
「奇跡は味方に使う物だよ。本隊と一緒に待って欲しい。先行の数が増えると魔法が来る可能性が高くなってしまうよ。盾で守ってもらってね」
「絶対会うから。クーラン待ってて」
プリムラの声に背を向け最前列で僕は笑う。
この先に人を人と思わない僕が敵だと思っていた者達がいる。
この時のために選んだ死霊術、必ず敵を崩してみせる。
―――
「プロテクション」
トリルの奇跡がほぼ号令のように盾を前に並べたドワーフが進む。
僕も奇跡の影響を受けたことで前進。
敵味方の矢戦が始まる。
「クーラン。お前の盾は上に構えろ」
デスティンからのアドバイスを受け盾を頭上に持ち上げ、前からの矢はワジに任せてじりじりと進む。
最初はなかなか進めなかった。
しかし、本隊と離れるとたった二人の突出をわざわざ狙うのは効率が悪いのか矢が少なくなっていく。
狙撃より大群に向けた乱射の方が簡単らしいね。
「まだか?」
「もっと前へ。進めばモンスターも狙えるからね」
ワジとやり取りしながら盾を構えたまま進み続ける。
使う魔法は第2階位マインドブラスト一択だった。
御師様の庵でこの国の奇跡にはサニティが無いことを知れた。
精神魔法を打ち消すことが出来ないと分かっているから。
「もう少し……着いた。マインドブラスト」
兵士達とモンスターの怒り、そして『恨み』に極端な感情を暴走させる。
ハーバンズパーティーはコンフュージョンの価値が全く分からなかった。
「一体のモンスターが予想外の行動をとっても面倒なだけ」と言っていたっけ。
でもこれが今盾で身を寄せ合ってた20人規模、しかもモンスター付きで始まる。
「なんで薬をやらなかった!?止めろ!」
「薬は食わせました!」
「一部兵士も味方に見境なく剣を振っています!」
「な、何をする貴様らー!」
敵が同士討ちするエリアから次のエリアを狙う。
魔法戦が本格的に始まる前に出来る限り多く無力化したい。
兵士の多い部分狙いで2回目を使用。
「また兵士の造反が始まりました!伯爵!」
混迷の中デスティンが指揮者を探すような報告に反応する。
「まったく、何をしているか!クリアランス」
「変化有りません!?」
「そんな馬鹿な!?異常除去の集大成で治らんのか!?」
そんな会話で伯爵を特定するデスティン。
「戦場に出て奇跡を使うタイプか」
「合成獣を敵陣に向かわせろ!ここで暴れさせるな!」
けしかけられたモンスターは同士討ちをしていない2体。
矢の上まで高く飛んだモンスターは僕達を狙って進む。
「やべー。ここ狙いだぞ」
「やっぱり動物。群れからはぐれた者から狙うみたいだね」
「こっちは矢で手いっぱいだぞ。どうする?」
ワジの問いに僕は構えていた盾をずらして上の視界を確保する。
モンスターは2体が1回の魔法で収まる範囲に集まって同時に急降下を始めた。
「薬が効く仕様なら麻痺毒も効くかな。イムーバブル」
魔法の感覚ははっきり効いたことが分かった。
「こっち来い!ぶつかるぞ!」
その直後ワジに引っ張られてその場から離れる。
地表に衝突したモンスターの生死は分からないけど動かないまま。
「おい貴様!ベースリングではないか!」
ワジに運ばれた際に僕の姿が見えたらしい。
指揮官と思わしき僧侶が兵士に守られながら戦列の前に進んでくる。
―――
私はモンスターが墜落しても生きてクーランさんのすぐ傍にいるのがとても心配でした。
「お願いします。クーランさんのところまで進んでください!」
ドワーフの戦士達に頼んだらちょっと予想してなかった答えが返ってきました。
「よし、全員突撃だな!」
本当は私とプリムラさんを守ってくれる人達と少数でクーランさんに追いつくつもりだったんです。
でも攫われた女性達の為に皆血気にはやっていたみたいでドワーフの皆さんは鬨の声を上げ進んでいきます。
「トリル、行こう!」
プリムラさんは戦士の持つ大盾に隠れて進んでいきます。
私もすぐ隣の大盾に慌てて隠れてもう一度頼みました。
「クーランさんの所まで送ってください。まだモンスターは生きてるかもしれないんです」
「山場が来たか。前線に指揮官が出てるじゃない」
耳が良いディルさんがやはり大盾に隠れて進みます。
とても背の高いディルさんの前で盾を構えているのは。
「アランさん!?来ても良いんですか?」
「街に入るからな。進まないとな」
盾と弓を借りたアランさん達も一緒に進みます。
「モンスターは生きてるかもしれないんです」
「おう、とどめ刺さないとクーランが危ないな」
斥候達の弓とプリムラさんの火球でモンスターを撃ちながら進みます。
クーランさんを中心に紫の雲が現れてモンスターを巻き込んで消えました。
クーランさん自身が使ったポイズンブロウに似た魔法です。
「貴様、私の話の最中に勝手な行動をとるな。ははっ」
ディルさんはあの喧騒の中から聞きたい言葉を選んで周りに聞かせてくれました。
「なぜ今もドワーフを攫い続けているんですか?金属で税を納めるれっきとした国民でしょう?だよな」
クーランさんが指揮官に聞き返しているようです。
「不当だからだ。ベースリングは人の中で最短の寿命を強いられている。ふん」
面白くなさそうなハーピーのディルさん。
「他種など必要ではない。他種の寿命が欲しいのだ。我々ベースリングは最長であるエルフの寿命を手に入れるのだ。ドワーフはこの実験のただの足掛かりにすぎん」
怒りを露わにするドワーフの皆さん。
私達はやっとクーランさんに追いつきました。
第一章を書きあがりました
一話三千文字程度で三八話になります
ただいま第二章の肉付け中です
皆様にお願いがあります
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