第31話 第二の出資依頼
そうだった。
俺とイネス、ゼノビア、他種族の妻から産まれた子供は全員ベースリングだ。
しかもまるで俺が増えるみたいに赤い髪と深紅の目の男児ばかりで母親の要素が全然なかった。
ハーピーのディルが続ける。
「遺伝優先度。アンタらもカテゴリー鬼に孕まされた女が産むのは絶対に雄の鬼だろ?人の間でもそれがある。ぶっちゃけカレギアは話す鬼と変わらんのよ」
ドワーフの戦士が発言する。
「ついこの間も、ドワーフ女狩りがあって何人か兵士に攫われた。俺達は取り戻すためにベースリングの街に行こうとしてたんだがモンスターと兵士に邪魔されてたんだ」
「チャンスが来た。俺達が攻める番だ」
「やめろ!街を襲うな」
マネージャーが言うがドワーフの戦士は言い返す。
「女を取り戻して何が悪い!」
女将が言う。
「敵は兵士、国だけだよ。剣を向けてきたら他とも戦うけどさ」
クーランが考え込んで話す。
「それを信じて良い根拠は?」
女将が考えて答える。
「ドワーフは山の中暮らしでしかも大食い。地下で作物なんて育つわけがないから外の農家との共存は絶対に必要さ。農家からは嫌われたくないんだよ」
「ドワーフとの共栄とは外の農家がドワーフを食べさせるシステムなんですね」
「ドワーフは力持ちさ。大工や鍛冶、戦闘はこっちでやる。ベースリングは農業集中だね」
クーランは考え込む。
「農家に兵糧を頼んで集めるんだ!明日出陣だ!」
先に食べ終わった戦士ではないドワーフがそれに頷いて店を出ていく。
「この地域のベースリングの役所は何をしていますか?」
「あぁ、税取ってるくらいしか意味が無いね。ここは食料が大事だからドワーフが掘った金属で両種族分をできる限り払ってるよ」
クーランは女将とやり取りしてさらに考え、そして何かを覚悟したようにアラン達に向き直った。
「今から今回の依頼料を払います。そして追加依頼をお願いして良いですか?」
「おー、兵士とやる気か」
俺は笑い、マネージャーは横柄にクーランの出した3000クロスをひったくる。
「追加ってなんだブラザー?」
エミールに向き直ったクーラン。
「冒険者僕の出資依頼です。まず西に二日の街に行きます」
「ふざけるな!国に逆らうな!」
わめくマネージャーに首を横に振るクーラン。
「街に着いたら僕達はモンドさん、エフゲニーさん両家計七名を連れて彼らの目的地であるこのドワーフとの共栄圏に護送します。これがお願いしたい内容です」
「あの空地の人達か。国とは関係ないな」
アランが頷く。
「騙されんぞ!兵士との敵対は絶対させん!」
わめくマネージャーを無視してクーランは財布そのものをマーティンに渡した。
「完全前払いです。お願いします」
「俺、カネを持つのは初めてだ。何時もこいつが受け取ってたからな」
俺からしたらそこそこの手際で財布をしまうマーティン。
「カネだけとって依頼は受けるな!」
「依頼成立。明日出発だ」
マネージャーを無視してアランが笑う。
「女将さん。リッキーさん達をこの地に住まわせていただきますか?」
「字は分らないけど農業をやるならドワーフは文句言わないよ。借り部屋も案内する」
女将が頷き、リッキーさんが頭を下げる。
「クーラン。何から何までありがとうございます」
「あの時、モンスターを突破したら状況は変わると言ってしまいました。変わった結果を反映させたいんです」
「ところで何か心配事か?なんか深刻な顔したぞ、お前」
俺の問いにクーランはトリルを呼んで話す。
「全財産を出したよ。僕達は徴税で滞納することになるね」
「皆を助けるためです。私も覚悟します」
「あー。生きてると面倒だな、その辺」
―――
翌朝、何とかドワーフの戦士達から条件付きで食料を分けてもらった僕達九人の冒険者。
「結局ドワーフと合同ではないか!」
文句を言うマネージャーより気になるのはディルだ。
髪と羽毛は黄土色、深緑の瞳をしている。
「面白くなってきた。頼むぞクーラン」
彼は腕がないから入浴、着替え、排泄も不便で男の僕が世話係になっていた。
厄介者扱いはこれだったらしいね。
そんな彼が取材のため同行する。
マネージャーとディルが行きの護衛対象だ。
ドワーフの戦士達と進むと昨日のモンスターの遺体は既になかった。
「死体が無いな。わざわざ持って帰ったのか?」
「人造モンスターだから製造者の指示があったのかもしれないね」
ドワーフ戦士のワジ、僕の前のディルの世話係と話し合う。
鉛色の髪と髭、灰色の瞳をしているが、今は全身が鉄の塊で覆われている。
大集団の僕達の前に斥候が先行している。
どうやら誰でも使う道にも関わらず罠が設置されているそうで斥候達は何度か停止指示を出している。
僕達は七人、ドワーフは女性達を連れ帰らなければならないので放置はできない。
ドワーフは指が太いが器用な者はかなり多いらしく斥候も増えている。
対して魔法職は全くいない。
「さすがに踏み固められた街道だから穴は掘ってないな。バネで横から石をまき散らす奴とトラバサミが置かれてるだけだ。櫓から街道に出るあたりに集中してあるな」
ヤオはそう報告していた。
更に斥候達の前にはデスティンが先行している。
「街まで進む。この足止めでどんだけ人を集めてるかな」
襲撃はなく野営の時間まで進む。
僕がトリル、プリムラと食事を終えようとしたところで兜を脱いだワジが食料を追加で持って来た。
「もっと食え、ガリガリ。お前らはそんなんで本当に戦えるのか?」
ドワーフは魔法職が戦えるイメージを持っていない。
馬鹿にした様子はない。
ディルの世話をしてただけあって面倒見がいいのだろう。
そのディルが僕を使って食事をとるためにやってくる。
「いや、魔法職ってのは分からないんだ。そりゃ体が出来てた方が良いんだけどな。クーラン飯食わせろ」
へらへら笑うディルに頷いてワジの持って来た食料を切り分けてスプーンで口に運ぶ。
「クーランさん。私達は戦うことになるんでしょうか?」
トリルの問いに頷く。
「絶対にドワーフを街に入れないだろうね。今襲撃が来るかもしれないよ」
「いや、街の前を固めてるな。罠で時間稼ぎして前に進まねー」
デスティンが帰って来た。
「冒険者は動員されてる?」
「いや、兵士ばかりだ。ただあのモンスターが3体いた。隠すため冒険者には関らせねーってとこか」
「あのモンスターが3体……兵士と同時に使うつもりかな?」
「お前いきなり何言ってるんだ?」
ワジが尋ねてきた。
僕は少し考え、デスティンの調査内容だけ伝える。
「兵士達は街の前で陣を敷いて、あのモンスターが3体居るみたいだね」
ディルが僕を見て聞く。
「テレパスブック無し。魔術士?僧侶?霊媒士?」
「え?霊媒士知ってるの?」
プリムラの白状にへらへら笑うディル。
「知ってるよ。カレギア以外では普通に居るさ。むしろなんで死霊術を使わないのかが分からんね」
少し期待を込めて聞いてみる。
「国外に死霊術の魔導師は居ますか?」
「もちろん。立派な技術体系さ。魔術と死霊術を同時に覚える召喚士、戦士と死霊術を掛け合わせた復讐者ってエリートクラスも居る」
「司祭や君主相当ですね」
トリルが納得する。
「とりあえず、本当なのか?」
ワジがまだ信じられないように聞き返す。
「街の前に罠はあった?」
「寸前にはないなー。罠と弓の波状攻撃すればもっと固いのに半端してるぜ」
「街の前に罠はないらしいけど、普通に数が怖いね。気をつけて行こう」
第一章を書きあがりました
一話三千文字程度で三八話になります
ただいま第二章の肉付け中です
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