第26話 子供達の憧れる冒険者。アランパーティー
荷物を持ったリッキーさん一家と共に冒険者ギルド前でアラン達を待つ。
養子達はたまにギルド内をのぞき込んだりして他の冒険者の姿を見ているようだ。
アラン一行、戦士三人に斥候三人とマネージャーが到着。
いかにも頑丈で重そうな大丸盾と長剣のアラン、屋外用長槍と閉所用突剣のヴァイス、片手斧と必要なら松明も武器に使うというブラスの戦士三名。
斥候のリーダーを名乗る黒い肌のエミールは注意力が売り、僕よりちょっと大柄な程度のチームで最小のヤオは投石が特技と言い、革鎧も着ない麻服のマーティンは奇術のように様々な手道具を取り換えて見せた後で姿を隠す。
アランのマネージャーの荷物は冒険者に持たせているらしく、彼の荷は随分少ない。
マネージャーが面白くなさそうに声をかける。
「子供に荷物だと?足が遅くなるではないか」
「薪です。道中で軽くなっていきます」
「おう、薪集めしなくて済むのは良いな。えらいな」
リッキーさんが答えるとエミールが子供達にサムズアップ。
「皆大人達の言う事を聞いてね。変な物を見つけても近づいちゃ駄目よ」
トリルが子供達に言い含め、ヤオが付け加える。
「俺達冒険者が外の輪だ。輪の中に入って歩いてくれ」
「はい」
子供達の受け答えは良い。
もともとトリルが冒険者というのもあるだろう。
マーティンが隠れて先行し、僕達三人を含めた冒険者八人がリッキーさん一家とマネージャーを囲むように出発する。
―――
依頼側冒険者付きで六人より多く、マネージャー以外は貧しい服装の僕達を襲う盗賊はそうはいない。
襲われるとしたらモンスターだろう。
「ふん、最下位トリル。ようやく人数だけは三人に戻せたようだな。しかし魔術士二人とは撃たれ弱い。また壊滅するのではないか?」
マネージャーがトリルに対してうるさい。
「私達も絶対に成功させたい身です。そちらに協力は惜しみません」
トリルが切り上げようとするがネチネチと嫌味が続く。
「魔法職か。どんな事が出来るんだろうな?」
輪の先頭のアランは期待を込めたように笑う。
「俺達、パーティー組むのもマネージャーさん指定で他の冒険者と魔法を見る機会がなかったんだ」
ブラスが補足する。
「防具が弱いのは指摘された通りです。頼りにさせてもらいます」
僕が頭を下げるとヴァイスが「まかせろ」と短く返答。
初日の野営。
僕達冒険者九人で警戒交代のすり合わせ、リッキーさんは不器用な手で薪を組み、子供達は寝る場所を出来るだけ狭くするために毛布の場所を話し、マネージャーは葉巻を吸っている。
「指が欠けているのか、親父さん」
「リッキーさんですね。積み石の事故です」
エミールが見抜き僕が頷く。
だがエミールはリッキーさんの包帯をさらにじっと見て考え込んでいた。
食事時、皆が不味い保存食に対して、マネージャーはブランデーケーキを見せつけるように貪っている。
自慢が終わり自分用の良い毛布にマネージャーがくるまったすぐ後、人差し指を口前で立てたポーズのマーティンが子供達の前に姿を現す。
「今日だけだぞ」
奇術のようにマーティンに預けられていたマネージャーのベーコンが取り出される。
子供達の期待の中リッキーさんと子供達に七つに切り分けられたベーコンが振舞われた。
羨ましがったプリムラにリッキーさんは自分の分を渡してしまったけどね。
最初の見張りは僕とヤオ、ヴァイス。
「なぁ、訊いて良いか?」
「……答えて良い事なら」
ヤオの切り出しに少し警戒する。
エミールがもしも感づいたとしたら……。
僕とヤオに緊張の走る中ヴァイスが黙って左の小手を外し包帯を見せた。
しばらく沈黙した後、僕は左袖をまくって火傷を見せる。
ヤオがため息をつく。
「……お前もか」
「マネージャーさんが国から派遣された役人と聞いています。内密にしていただければ」
黙って頷く二人。
翌朝、エミールはさりげなく僕とリッキーさん以外は平民であることを腕で確認。
斥候として僕にだけ聞こえる声で話しかける。
「ブラザー達のことを他に知っているのは?」
「子供にだけは内緒。大人達は知ってます」
心得が無いなりに小声で答えてみた。
エミールと離れた位置のヤオは頷いた。
マーティンも隠れて聞いているかもしれない。
他のメンバーは気にしていないならこれで良いのだろう。
二日目はあえて僕とトリル、エミールを同じ見張り組にしてほしいと提案する。
「ブラザー。どうする?」
「包帯をほどいてほしい。トリル、頼めるかな?」
少し考えこんだエミールは包帯を解き焼き印を見せた。
「ヒール」
エミールの黒い肌では目立たないが焼き印が消えたのが本人には分かる。
「残念ながら指や臓器の『欠損』治療はもっと上の奇跡なんですよ」
「ブラザー、トリル。もっと詳しく事情を訊いて良いか?」
「……リッキーさんと僕は南西の領からの逃亡奴隷でした」
「私達の村が貴族の荘園にされるという話になったんです」
「貴族にリッキーさんの身の上が知られたら奴隷に『戻されてしまう』」
頷いたエミールが話す。
「俺達は全員王宮の現役奴隷だ。アランが勇者候補生に選ばれてな。外に居たことのある名前持ちの男がパーティーメンバーに選ばれた」
「それで王宮役人のマネージャーさんが見張っているんですね」
トリルがマネージャーの意味に頷いた。
「タマが治らないのは残念だが、痛みのない火傷も癒される感覚って良いもんだな。トリル、俺達の腕、この旅の間に頼んで良いか?」
「分かりました」
「リッキーさんも治した方が良いね」
マネージャーに気付かれないように包帯を巻きなおしながらエミールが笑う。
「アホ役人には絶対気付かせない。俺達全力を尽くすぜ」
こうして見張り時間を利用して翌日はブラスを治療。
―――
三人目のアランの日になるはずの四日目昼。
先行のマーティンがアランの傍に姿を現す。
「来るぞ。数が多い」
「絶対輪の外に出るなよ」
ヤオの言葉に頷く子供達、素人ながら子供を守ろうと中央に居たリッキーさんが子供の前に立ち、子供に守られるためマネージャーが中央へ割り込む。
正面から飛んできたのは6体のラージヴァルチャー。
「飛ぶ奴だ!子供達は屈め!」
アランが吠え、マネージャーが頭を抱えてうずくまる。
高さで言えば魔法、次に投石、その次にリーチのある槍が有効なのだが。
僕が広さのある一手を切った。
「スロウ」
羽ばたく動きも遅くなったことにより意図せず高度を落とすハゲワシ達。
「来た時と速さが違う?」
ヤオの投石が命中する。
「プリムラ。戦士の武器にチリングタッチを」
「初めての魔法。チリングタッチ」
ヴァイスの長槍に青い光と霜がつく。
不思議そうに槍を見た後、ゆっくり滑空して降りるしかないハゲワシを貫くヴァイス。
「強い?」
自分の武器に対して言ったのだがマネージャーは「ひっ!?」とモンスターの強さと勘違い。
武器に何の魔法もかかっていないアランがハゲワシの片翼を剛力で斬り落とす。
子供達は武器を振るう冒険者に興奮している。
そんな中わざとマーティンが鉤爪で浅く傷を負う。
マネージャーの不安を煽るようにエミールが叫ぶ。
「やべぇ、怪我人が出たぞ。『皆傷を見せろ』!」
アランから大盾を受け取った治療済みのブラスがマネージャーを庇うように見せかけて彼の視界を覆い隠す。
エミールは早業でリッキーさんの包帯をほどき、全員が左腕を見せた。
「エリアヒール」
トリルの奇跡でリッキーさんの指欠損以外の全員の見える傷が癒えた。
第一章を書きあがりました
一話三千文字程度で三八話になります
ただいま第二章の肉付け中です
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