第24話 旅先へ思いをはせ
木皿を割ったすぐ後、僕に体を返すことになったデスティン。
翌朝僕達はリッキーさん達を気にして朝食に時間をかけず、出発の準備を始めていた。
鴉は皆が嫌がるので僕の肩に止める。
コントロールされたアンデッドなのでしっかり肩を掴んでいる。
「クーランが今まで集めていたシャードよ。ここに帰るのは相当後になるから旅先で使いなさい」
御師様から追加で小袋を渡される。
シャード鏝は自前を持ち歩いているから書き込みレベルならどこでも出来る。
他の形成器具も壊れにくくかさばらない物だけは運べるが完全な工房には及ばない。
しかしカレギアでは王都止まりの技術だ。
国外の工房は期待して良いのだろうか?
「では御師様、務めを果たしにまいります」
「すまん。ちょっと聞いときたいことあるから先行っててくれ」
僕のあいさつの後でデスティンが御師様に向き直る。
「先に行って良いよ。冒険者モードになると優秀忍者だからすぐに足取りを追って合流するわ」
御師様も答える気があるようなので僕達は出発する。
―――
「ナタリー。お前はどうなんだ?寿命が既に尽きたお前は亡霊か悪霊じゃないのか?」
「ツァーリと同じ、無理に死体を自分の魂でコントロールしている状況ね。私は寿命が尽きたから蘇生奇跡も意味がない。ツァーリは餓死だから蘇生出来るわ」
「舌が無いんじゃ飯も適当になるよなー。昔の飯はもっと美味かった」
「そうだった?」
「やっぱり母性か?クーラン拾ったのは」
「クーランのような拾い物が現れるのはどれだけ確率が低かったか。後継者問題は本当に賭けよ」
「クーランにタマがあれば子供に期待できたんだがなー」
「親と子は何考えるかは別よ」
「あー。子の方が腐るケースもあるか」
「クーランは封印を知ったら継いでくれるでしょう。人に疑り深いから。ただ、あの子が死んで蘇生が受けられない状況になると詰みよ」
「俺にあいつの体を使わせたのはそれか。分かった、ちょっと鍛えてみる」
「クーランのやる事が無いときに冒険者モードでね。日常はあの子の方が貴方より上よ」
「ひでーな」
「日常の貴方はベッドだけは上手だったわ。あの数の女同士で大きな喧嘩しなかったのが不思議ね」
「そこはお前含めて良い女揃いだったからなー」
「あの娘達はクーランをどう見てくれるかしらね?本心見せても付いてくれるなんて思ってなかった」
「タマが治療されたらどーするんだろうな?ホントの男を取り戻したら」
「それはクーラン自身も変わる可能性があるから何とも言えないわ」
―――
デスティンはあっさり昼に合流した。
「斥候なしの三人なんて余裕だ。足跡の乱れ無し、何も起こらなかったみたいだな」
「おかえり。ここは『番犬』の範囲内だからね。何を聞いてきたのかな?」
「たまには俺に体を貸して鍛えろって話さ。まずは肉を増やすために食を太くしないとなー」
「今は限られてるからゆっくりできる場所とお金が揃ってから考えるよ」
プリムラがここで聞いてくる。
「デスティン?裸だけど、周りに人が居ないなら亡霊鏡で私達と話しても良いんじゃない?」
「おー、それだ」
「今僕のバッグの中に入ってるよ。魔力を通してみよう」
僕はバッグの中に入れたままの亡霊鏡を起動する。
「見えないね」
「バッグの中じゃ駄目かー」
「あ、声は聞こえましたよ」
トリルが驚く。
「なるほど。光が遮断されて姿が見えないけど声だけが届いてるから話は聞こえるんだね」
もともと亡霊が見えている僕には指摘されないと分からなかったことだ。
「これも使いようだな。普段はこれで良いかもしれねー。隠れて話したいときに鏡を止めるんだ」
「効果時間は僕の魔力次第だね。魔力も体も両方鍛えないと」
その後の旅程は順調だった。
「緑の肌の裸女」
プリムラが指さすが全体的に緑で赤い花をスカート状に生やしたモンスターに行かせないように止める。
「アルラウネ。ここは街道から外れてるから基本モンスターは無視しよう」
「クーランさん。あまり女性の裸を見ちゃいけませんよ」
トリルがたしなめる、が。
「女性ではなく両性だよ。あれは植物、ハーバンズ達がわざわざ花をむしって「使えない」って逆切れしてたっけ」
「何をやってるんでしょう」
ハーバンズの一面に呆れるトリルだった。
―――
王都に着いた僕達はギルドに用事が無いのでリッキーさん宅を直接目指す。
「トリル、皆さんおかえりなさい。怪我はありませんか?」
「すごい大怪我した」
リッキーさんの迎えに槍で刺されたプリムラが泣きつく。
「冒険者とはこのような者です。トリルさんが治療したのでご安心を」
僕の答えに複雑な表情を浮かべるリッキーさん。
「お義父さん。依頼はどうなりましたか?」
こちらこそ重要な案件だ。
「安心してください。依頼は受領され四日前に出発しました」
「おーし」
「おや?どなたですか?」
デスティンの声だけ聞こえて不思議そうに玄関を見回すリッキーさん。
「お気になさらず。他の家の収入具合はどうでしょう?退去出来そうなご家庭はありますか?」
「いいえ。食堂で話しましょう」
忍者として僕にだけははっきり聞こえる小声でデスティンが言う。
「今は鏡を止めてくれ。言いたい事を言っちまうかもしれねー」
僕達五人は食堂に養子達は台所に。
「依頼を張り出してすぐ私は市場を転々とすることを提案しました。金銭収入を多く得る事は村の皆賛成で以前よりは収益は上がっているようです」
そこは良い、しかし日数は厳しかったかな。
「両家の依頼が正式受領され出発した後、私は村の皆を集めて荘園化と村の脱出の話を切り出しました。しかし、大多数が指定農家になりたいと言い初めまして」
僕は以前にも話していた事を指摘する。
「徴税後だと指定農家になるのは難しい」
「それも話したのですが……希望の方が大きいようでして」
リッキーさんは何やら言葉を選んだようだ。
少数派に話を切り替えた。
「逃げる気のある家のお金と人数はどれほどですか?」
「土地の貧しい方達です。人数にお金が追い付いていないのが実情ですね」
「あー、貧乏子沢山ってやつかー」
デスティンの言葉を聞き確認する。
「何人ですか?足の速さは?」
「二家庭。老人幼児など遅い方を含む十四人です」
「大人数で足も遅い。かなり条件が悪い。食料も用意出来ないとなると4000クロス以上は必要ですよ」
「以前の七人2000クロス食料持ちの二倍ですからね」
「この家も逃がさなきゃなんねーしなー」
五人全員で悩む。
デスティンの指摘でリッキーさん宅の足の速さも気になった。
「この家は何人でしょうか。最年少は何歳ですか?」
「私とトリルを入れて八人。最年少は七歳が二人です」
問題はリッキーさんは私塾、孤児院経営であって農業生産者じゃない事。
食料を用意できない七歳児入りのリッキーさん宅の護衛相場は最低2500クロスからだろうか?
そしてそれで納税日前に旅立てるだろうか?
プリムラが質問する。
「私達三人が護衛冒険者になれないの?」
「依頼出資人になった者は積極的に冒険者活動はしないよ」
「どうして?」
「依頼報酬で他の雇われと取り分でもめてしまうのが目に見えてるからだね。そしてこれはギルドの徴税でも面倒事になる。基本は雇われだけで六人集めてお金を出す側に回るね」
「私、そんなこと考えてないのに」
「プリムラもトリルさんもそうだろうね。でも先人の負の遺産の積み重ねで出来てしまったんだよ」
第一章を書きあがりました
一話三千文字程度で三八話になります
ただいま第二章の肉付け中です
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