第22話 クーラン(2)
リヴィールが僕達の死の光景を映す。
騎兵の槍であっさり胴を貫かれた僕は深く刺さり過ぎた槍ごと捨てられた。
斧で頭を割られ、長剣で腹を裂かれた弟達。
わざわざ馬から降りた兵士達は母と女児達を嬲った後、短剣で首を掻っ切る。
兵士達はさらに奴隷を狩りながら御師様の庵に辿り着く。
これを無視するはずもない兵士達は火矢を一射。
御師様の怒りに触れた。
ここで兵士達の後ろからさっきまで殺していた奴隷達のアンデッドが集まる。
ゆっくりと僕の遺体が兵士達に歩み寄り、しかし途中で止まる。
成人した奴隷の遺体が数人がかりで僕に刺さっていた槍を引き抜いて一人がその槍を構える。
それを終えた後で僕を含めた奴隷達が一斉に襲い掛かる。
「なんだ!?本能で襲ってこないぞ!?」
槍が馬を突き兵を落馬させ、それに群がって殴りかかる。
中には兵の予備武器を掴み襲い掛かる者もいた。
アンデッド達は骨格を折られるなどをしない限りは動きを止めない。
ある程度の犠牲を出しながらも奴隷の遺体を動けなくする兵士達。
しかしこの犠牲になった兵士と馬が立ち上がる。
武器も鎧もある兵士のアンデッドが生き残りを襲う。
更に予備の武器は奴隷達が分配して扱いだす。
こうして起こった惨劇は誰の命令か分からないが四日ほど兵士が投入され続けたが、戦うほどに強化されていくアンデッド達に兵士達が根負けした。
「兵士達が逃げて何日たったか覚えていません。私の他の亡霊達は冥界に旅立っていきました。死んだ日が早かった家族は争いの途中で旅立っていました。しかし私だけ何故か旅立つ先が何処にも見えなくてこの世界に留まってしまいました」
「お前もか。俺も冥界への門ってのが分からねーんだ」
「貴方達みたいなのが亡霊から悪霊に変わる可能性があるのよ。静かになったころ私はこの子に会いに行ったわ」
争いの後の僕の独白に御師様が続ける。
「コントロールの利かない悪霊は本当に何をするか分かった者じゃない。亡霊でいるうちに原因を調べたくてね」
「私は事の経緯を御師様に話しました。生まれから暴力で虐げられていたこと、それを暴力で返し短期的な自由を得たこと、それを超えた暴力で結局全てが喪われたこと。御師様の結論は僕の予想していなかったものでした」
「蘇生したわ。あえて焼き印と睾丸の欠損が残るようにリザレクションではなくリヴァイヴァルでね」
「私は暴力を手に入れたかった。結局は自分の自由の担保になる物で手に入る可能性がある物はそれだけでしたから。しかしまず御師様が僕を弟子として最初に教えたことは魔法職工者への道でした」
「上には上がいることは既に身をもって知っている。それ以外の選択を選べるようにね。文字を教え、数字を教え、……それでも何時か暴力に手を出せるように魔力全般を教える方法だったわ」
「お前はそっちも優秀だったからなー。覚えてる中では……お前の師匠さんぐらいしか上は居ねー。あれはもー伝説だよ」
「今もご存命よ。デスティンも会ってもらうわ」
修行中の僕は一切笑っていない。
「嫌だったんですか?」
トリルの問いに答える。
「嫌ではありませんでした。楽しいとも思いましたよ。しかしやはり焦りはありましたね」
「敵が居ないと笑わないのよ。クーランが貴女達に笑った事が無いならその方が良いのよ」
「楽しくて笑わないのはやっぱり変だよ」
プリムラが憐れむ目線を送る。
「暦が読めるようになったのはこの庵に入ってから。五年の魔法職工者修行を続けた後、御師様から戦闘魔法職の勧めを頂きました」
「霊媒士になったんだね。珍しかったから?」
プリムラの問いに首を横に振る。
「最も人を殺しやすかったからです。モンスターからの死は平等。人の自由の敵は結局人ですから。人の顔して人を攻撃する者は始末が悪い。仮に僕が殺されても毒が残り殺すべき相手が死んでいる結果が欲しかった」
僕の本心に引くトリルとプリムラ。
「戦闘に関わる修行は一年ほどでした。旅の仕方、全ての魔法、可能な限り知られているモンスターの特徴を学び、そして魔力のコントロールのため魔法職工者としての修行も厳しくなりましたね」
「出来なくなったことも自覚させる必要があったし、戦闘魔法職の魔力を使った魔法工芸品を教える必要があったからね」
光景が王都に変わる。
「領主の奴隷だった期間は暦が読めなかったから実年齢は不明でしたが私は今から半年ほど前にギルドに登録を済ませ、短期間は個人で活動しました。魔法系統の正体不明。そこに目をつけたのが勇者候補生ハーバンズでした。彼はどうやら自分が特別だから特別なメンバーをと考えていたようです。持っている知識は可能な限り教え、僕は決して万能ではないと言っていたのですが理解されなかった。結果彼のメンバーを追い出されました」
「ハーバンズさん君主だから。特別扱いに飢えていたんでしょうね」
トリルが頷く。
「ハーバンズにお金を全て取られた私は、一度御師様の元に戻り腕を磨きなおそうと思っていました。そしてキュアポーション騒ぎを御師様から聞いた私は、トリルとデスティン、プリムラに会った。」
考え込む三人。
「今嘘はつけませんよね?」
「それは保証するわ。この姿を見せている限り魔法は解けてないよ」
トリルと御師様のやり取りにプリムラが最初に質問。
「パパがひどい事したけど私の事嫌い?」
「私の父も悪人ですよ。それを嫌い御師様の教育を受け私はこの性格です。プリムラもセルヒオとは分けて考えてますよ。自分を今から作れば良いでしょう」
「環境変わった。私これから」
プリムラが元気を出す。
トリルがちょっとすね気味に尋ねる。
「私の命ってどうでも良いですか?」
バートが僕に助けを求めるあの時が映し出された。
「助けてくれ!トリルだけでもいい!助けてくれ!」
「彼の望みでした。私では勝てない相手がいることを知っている。しかしどうにか出来るなら望みを叶えたい。冒険者は他人の望みで生活を成り立たせる者ですから」
「お前、人の好き嫌いが激しーな」
笑うデスティン。
「生きて欲しい人も居れば私が殺してしまいたい人も居るでしょう」
「それで私は?」
なお問うトリルに答える。
「生きて必ずリッキーさん達と東に逃げてもらいます。貴女の生を望む人は私を含め多い」
「守ってくれますか?」
「守りましょう」
ここで母が口を開く
「人は死んだ後に『あの人はどうだった』と語られるべきではないんです。死んだ後より生きている間に価値が認められた方が良い。生きるという事の意味は死より大きいのですよ」
デスティンが苦笑いしながら頷いた。
「本当のクーランはこんな感じよ」
―――
指輪を外された僕は恥ずかしくて顔を誰にも合わせられない。
「貴方を大切に思ってくれる人を見つけてほしい。私の叶わなかった望みを貴方に託すわ」
冥界灯からの母の別れの言葉がさらに追い打ちになる。
「次よ、クーラン」
「これ以上何を?」
笑っている御師様に恐る恐る顔を向ける。
「デスティンでポゼッションの本来の使い方を見せなさい」
「本来のポゼッションですね。では今からデスティンさんに死霊術を使います。基本は無害なので抵抗しないでください」
「ツァーリに使ったやつか。あれ応用って言ってたな?」
デスティンに向き合ってポゼッションを使用。
僕の体から魂が抜け出し、デスティンの魂が入り込む。
「おー?」
声帯は僕の物だけど体を動かし、話してるのはデスティンだった。
第一章を書きあがりました
一話三千文字程度で三八話になります
ただいま第二章の肉付け中です
皆様にお願いがあります
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全てに対応出来るかは分かりませんがコメントをお待ちしています




