第11話 到着。しばらくの滞在
僕たちは全ての遺体を街道脇に並べた。
「彼らはいったい何者だったのですか?」
馬車から全員が出て尋ねる。
「武装はまともな物、魔法職もいた。冒険者か兵士のなれの果てだ」
ベテラン斥候の答えにプリムラが驚く。
「兵士、って騎士階級じゃない。なんで?」
「お嬢様。資金基盤で興ったリデン家の方が異例なのです。戦うだけの騎士で特に戦績の悪い者には没落はあることなのです」
プリムラにヤコブが答えた。
兵士、冒険者には身分証があり、奴隷にも焼き印が押されている。
僕は死体を漁り身分証を探した。
「あった。冒険者身分証。……税金滞納の印があるね」
「そうか。死体の身ぐるみを剥げ」
僕の言葉に斥候が全員に指示を出す。
「逆にこっちが盗むの?」
プリムラとヤコブ、そして人と初めて戦った冒険者女性陣が驚いた。
「違います、プリムラお嬢様。彼らは冒険者税を滞納して盗賊行為をしたから冒険者ギルドに全部差し押さえられるんですよ。僕達の懐には何も入りません」
「やっぱり盗んじゃダメだね」
僕は字が読める者として彼らの身分証とお金をまとめて一つの袋に入れる。
戦士二人が装備品を集め、トリルは旅の道具を預かり、斥候二人は隠された漏れがないかを詳しく調べる。
「特に文章らしきものはない。これで全部だ」
プリムラがトリルを呼ぶ。
「木のフレイルよりこの銅のメイスの方が強そうだよ」
僧侶の遺品のメイスを勧めるプリムラだがトリルが断る。
「それも差し押さえなので使えませんよ」
トリル一人では重かった道具類を僕と斥候たちで分担して持ち、プリムラと商人が馬車に入り改めてすぐそこの王都へ向かう。
―――
昼過ぎ僕たちは王都ファンドルに到着。
最初に向かう場所は冒険者ギルド。
冒険者達とヤコブ、そして物見遊山のプリムラが中に入り、まずは受付に今回の依頼内容を報告。
ヤコブから無事に報酬金が配られる。
「税金増えてないよな?よっしゃ!」
僕が現段階の納税額を一人一人伝えるとトリル含む五人の臨時のパーティーは考え込む。
「それでもこんだけ取られるか。まぁ、気をつけとこう」
「では、我々は荷下ろしに王都のリデン商店に……お嬢様、もうまいりましょう」
ヤコブがプリムラに呼び掛けるが彼女はまだ見ていたいらしい。
「あとで。もっとここに居る」
「また我儘を。……クーラン殿、我々は明朝から、王都の工房を見学させていただきます。我々の商店はここです。明日の視察の打ち合わせのため是非貴方がお嬢様を連れ帰ってくださいませ」
ヤコブ達は僕にプリムラのお守りを任せて先に荷下ろしのために馬車を走らせた。
次に襲撃冒険者の件に移る。
まずは僕が彼らの身分証とお金の袋を職員に差し出した。
「今朝、税金滞納の身を持ち崩した冒険者から襲撃に会いました」
それに合わせて臨時パーティーが盗賊の所持品全てを差し出す。
職員数人が集まり全ての荷を受け取って奥に戻っていく。
「ねぇ、あたし達はどうなるの?報酬もらえる?」
今回が初対人の女性戦士が聞いてきたが僕は首を振る。
「もらえないよ。逆に彼らへの差し押さえ額が税を下回っていたとしてもこっちが補填する理由はない。損得なし。『モンスターと同じ』だよ」
それを聞き届けた臨時パーティーは奥の卓で食事を始める。
彼らがまた個人活動になるのかこれを機にパーティーを組むのかは分からない。
僕はとりあえず明日の案内と御師様の大事な預かり物のためパーティーを組む気はなかった。
なぜかここに残っていたトリルが沈んだ顔で受付に進み出る。
「……勇者候補生トリルです。私のパーティーが私を残して壊滅しました」
その言葉に職員が一人、彼女を連れて別室に入っていった。
そうだった。
最初、彼女はバートとボルスの三人パーティーだった。
暫くの時間が経ってトリル達が返ってくる。
職員が掲示板に張り紙を張ると僕達字を読める者の数名が掲示板に集まった。
そのうちの一名の反応はひと際目立つものだった。
「マックス。待機命令だ。招集がかかるぞ。トリルパーティーが壊滅した」
「招集か。今受けた依頼をキャンセルして来い。ハーバンズ!アラン!居るか!?」
マックスと呼ばれた二十歳を下回りそうな青年が広間に呼び掛ける。
ハーバンズが居ないのは彼らの派手さを知ってるからすぐ分かった。
反応して立ち上がったのはデスティンより、というよりかなりの大柄だが成人したての様な若い顔立ちの男だった。
「マックス?呼んだか?」
「アラン、勇者候補生は全員待機だ。トリルパーティーが壊滅した。全員揃い次第、教王宮に招集だ」
アランとその仲間達は文盲らしく、掲示板に興味がない様子だった。
「招集?俺、王宮行きたくないぞ。あ、トリル居る。行かなくていいだろ?」
「ん?確かに居るな。だが待機だ。受けてる依頼があったらキャンセルしろ」
アランとマックスのやり取りで勇者候補生、トリルを含め三人に視線が集まる。
「勇者候補生って何?」
素人プリムラがそんな三人と僕に質問する。
「君は……依頼人かな?受けてあげられなくて残念だ。勇者候補生は教王様に資質を認められた限りなく少数の人間だ。宰相様曰く勇者は国家の指定『迷宮』を攻略する使命を与えられる。俺はマックス。十八歳。勇者候補生でありマクスミルザ伯爵の息子だ」
「トリルです。十五歳です。勇者候補生になった理由は分かりません。でも宰相様は冒険者となって戦えと命ぜられて……」
「俺、アラン。暦読めないけど成人かな?なんでか知らないけど勇者候補生にされた。俺なんて城からマネージャーさんまでつけられて無理やりやらされてる」
三人の自己紹介にプリムラが首をかしげる。
「なんでわざわざ冒険者?貴族が冒険者になるのは変ってクーランが言ってた。戦ったことのないトリルとアランに戦えって言ったのも変」
その台詞でマックスが初めてプリムラの隣の僕を見た。
「……白もやし。ハーバンズパーティーの奴だな。あいつは何処だ?」
「僕はパーティーから追い出されてしまい、今は新人が入ってます。彼が何処に居るのかは知りません」
白もやしというストレートな評価に僕は軽く、デスティンがものすごく笑う。
「なんだ。嫌なことはさっさと済ませて冒険したかった」
アランはがっかりしてパーティーメンバーの卓に戻る。
アランパーティーは全員文盲、戦士と斥候、男性のみで構成されている。
城からのマネージャーさんに生活面は完全依存かな?
「奴らは全員学がない。俺達は全員が貴族階級として教育を受けている」
彼らを目で追う僕とプリムラにアピールするようにサゲる、なんだかハーバンズと似た気質のマックスだった。
僕とトリル、プリムラは空いた卓につく。
たまたまアラン達の近くだった。
遅い昼食のため保存食をバッグから出す。
蚕蛹の煮つけ、ボソボソのビスケット。
「クーラン、虫だよ。体に悪いよ」
嫌な顔をするプリムラ。
「お前もこれ食うのか。炒めて食うと美味いんだよな、これ」
大きな体でこちらをのぞき込む純粋な笑顔のアランに答える。
「これ?蚕だね。昔蛹になる前の幼虫を食べて怒られたことがあるよ。絹糸を出す前に食べるともったいないって」
「絹糸ってなんだ?」
「食べてるこれは繭の中身でね。外の繭は絹糸にされて取引されるんだよ」
「もっと良い食べ物ない?」
プリムラの文句にトリル、アランと三人で「良い保存食?」と首をかしげた。
2026/8/22追記
第一章を書きあがりました
一話三千文字程度で三八話になります
これから第二章の肉付けを行います
皆様にお願いがあります
この作品にはこのタグをつけた方が良い、ルビは毎回振った方が良い、などのアドバイス
誤字の指摘、その他の感想を受け付けております
全てに対応出来るかは分かりませんがコメントをお待ちしています




