旅立ち
クロノスとカイロスはそれぞれ僕を見つめている。
「あんた・・・何を言ってるんだ?もうクロは私たちじゃなくても、倒すことができるんだぞ?もうあんたの出番はないだろ!」
メイジーの言葉はどこか必死さの先に、愛情に似た何かを感じた。もしかしたら、心配してくれているのかもしれない。
だが、僕はもう彼女の言葉に反応することはなかった。そして僕も二人の顔を見つめた。
「君が?」
カイは驚き過ぎて、逆に表情が乏しい。
「君はわかっているのか?我々を殺せば、ジーブスにとって重要な役割を任され、それは次の後継者が現れない限り永久に続くんだぞ」
「しかも、この事は決して公言することもできない。だから・・・」
カイは言葉を詰まらせた。
「一生孤独と戦うことになる」
だが、僕はそんなことは重々承知している。そして一度高ぶる気持ちを整理した。
「わかっています。でも、僕はこの長い旅を経て、何一つ役に立てなかった。何もかも、誰かの後ろでただ運命を眺めているだけでした。でも、それはたとえこのあと僕が何もせず、そのままこの旅を終えたとしても同じこと。僕はそんな自分が嫌なんです」
気づけば自分でも漠然としていた本心が口から言葉になって放たれていた。
「僕はこの旅で自分のルーツを知りました。そして世界・・・いやこの銀河の見聞まで広がってしまった。それで何も感じず何にもせずにいることこそ、ジーブスとしてゲルダファとして罪だと思うんです」
すると、カイは全力で首を横に振った。
「だが、君は本当の孤独を知らないからそう言えるんだ!君はこれから家族も友人も作ることができなくなる。周りが目まぐるしく変化していく中で、自分だけは決して変化することがない。それを感じるのはこの広い銀河で僕だけで良いんだ」
カイの熱弁への反論が、どんどんと頭の中に湧いて出てくる。
「孤独なら僕も知ってますよ。僕には本当の家族なんていませんでしたし・・・もう慣れました。それに友人を作れないのは嘘ですよ。だってあなたには僕がいるじゃないですか?」
言ってすぐに少し恥ずかしくなった。
「だからこそ、その友人に僕の運命を背負わせたくないだよ・・・」
「運命に従うも抗うもよし!どちらを選択するにしても、あなたの思い描く未来を実現できる方を選ぶとしたら・・・?」
すると、ここまでずっと黙って我々の話を聞いていたクロがそっとカイの肩に手をおいた。そこまで腕を持っていくのも一苦労だっただろう。
「彼の言うとおりかもしれないぞ。彼ほどこの星を代表するに相応しい人物はいないんじゃないか?」
それは僕がジーブスやこの銀河の理を知っていることもそうだが、僕にはゲルダファの血も流れているということもその一つなのだろう。
「それに我々は結局この輪廻の罰を受けていない。そろそろ私たちの順番なのかもしれないぞ」
クロはこちらを見ていた。今の姿はあの時、テレビに向かってこちらに呼びかけていた総理大臣の姿だ。あの時、彼はどういうつもりであの行動をとっていたのかはわからない。もしかしたら、やましいことを考えながらやっていたことなのかもしれないが、それでも僕の記憶の中では、国民のために行動するリーダーに見えていた。
カイはクロの言葉を聞くと、最後にもう一度、僕の方を見た。
「本当に君はこれで良いのかい?時と瞬間、二つのことを同時に司るというのがどういうことなのか。それは僕たちにも分からない。どんな苦痛が待っているか分からないんだよ」
答えは決まっている。
「僕が思い描く未来を作るにはこの方法しかない!」
「わかった・・・・」
少しの沈黙のあとカイは静かに返事をすると、クロの方を向いた。
「ちゃんと罪を償って来世では良い人間になるんだぞ!」
「お前こそ、妙な気起こして世界大戦なんか起こすんじゃねぇぞ!」
二人がそんな話をしている中、僕はメイジーと話をしていた。
「わかったわ!あなたがそれで良いなら!でも、本当にうまくいくのかしら?」
「恐らく!」
僕は自信満々に曖昧な言葉を発した。
「それじゃあ困るんだけどなぁ・・・」
僕はそういうとクロの方に両手を向けた。僕は妄想した。クロの今の体が朽ち果て・・・いや、浄化され新たな肉体に生まれ変わり、そして幸せな家庭を築いている姿を。
そしてクロは悲鳴や叫び声を上げることなく穏やかにその場に倒れた。
カイはクロの亡骸を目にして、少し涙ぐんでいた。
僕はゆっくりカイの近くへと向かった。これから僕は友人を殺す。それだけ聞くと、カイに向かっていく僕はまるでホラー映画の怪物そのものだ。
「本当にこれで良いんだな!」
僕は黙って頷いた。
「確かに、僕たち兄弟が時の神とか言われても信憑性がないよな」
カイの口調がいつも通りに戻った。そして僕にメガホンレーザーを手渡した。
「頑張れよ!」
「カイも!」
我々はお互いに抱擁し合った。その時、気持ちに一瞬の迷いが生じてしまった。抱擁している腕が離れようとしない。
このまま離れてしまったら、もう後戻りができない。
すると、カイがゆっくりと僕の腕を自分の体から離した。
「また会おう!僕は君のことがわからないかもしれないけれど、僕は君とまた出会えることを楽しみにしているよ!」
僕はメガホンレーザーを向け、目を閉じようとした。しかし、僕は友人の最後の瞬間・・・いや新たな旅立ちを見届けなければならない気がした。
「ヴォンヴォヤージュ!」
僕はメガホンレーザーのスイッチを押した。最後の最後で彼はとてもダサい旅立ちになった気がしたが、それはそれで彼らしいと思い、涙と笑みが溢れた。
こうして、銀河最大の大事件は幕を閉じた。
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




