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ミスター・ブルーズ 〜命運を握る背中のあざ〜  作者: マフィン
竹林と月とかぐや姫

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クロの敗北

 カイは得意げな表情でクロを眺めていた。


 「まったく、お前は昔から小賢しい奴だった」


 「そのせいでしょっちゅうおふくろに怒られてたっけ?」


 そもそもジーブスにも母親や父親の概念があることに驚きだった。


 「ああ、でもそのおかげで私はお前を超えるための努力をしてきた。そしてその努力を私は無駄にするつもりはない」


 クロは今にももう一度カイに攻撃をしようとしていた。ところがいつまで経っても彼から攻撃がくるどころか、体の関節一つ動くことはなかった。


 「おい、どうなってるんだ?」


 クロの表情には戸惑いの色がうかがえた。一体彼に何が起きているのか、僕にも全く見当がつかなかった。


 「いやいや大げさな。僕は兄貴の身体の動きを止めたわけじゃないぞ?ただ、身体の変異作用を逆転させただけだ」


 「ということは・・・」


 「頑張れば身体は動かせるはずだけどなぁ」


 カイがそう言うと、クロはようやく一歩足を前に踏み出した。だが、それを行っただけで、すぐに息が上がってしまっている。


 「ありゃま?ここまでするつもりはなかったんだけどなぁ・・・すまん・・・」


 カイは軽い口調で謝罪していた。果たして本当に想定外だったのであろうか?


 「なるほど、敵ながらあっぱれと言ったところか?」


 メイジーの声が聞こえる。


 すると、クロが息を荒げながら、カイをにらみつけた。


 「お前のそういうところがいつも嫌いだった。なんでもすぐにやりこなしてしまう。それなのに、お前の態度はいつも軽い。私が苦労してやったことも、その何倍も上のものをわずかな時間で作って、ひょうひょうとしている」


 カイは何も言わず兄の言葉を真剣に受け止めているようだった。


 「どうせ、そのおもちゃを使って私のDNAを書き換えたのだろう?なぜだ?なぜおまえはそれをそんな意図も簡単にできる?なぜそんな才能があるのに、無駄に使うのだ!お前が私を裏切らなければ、私はこんなに苦労せずに、目的を達成していたというのに・・・」


 クロの悪態をまっすぐに受け止めながら、カイはゆっくりとクロに近づいた。


 「なぜだ・・・お前はあの組織が憎くないのか?」


 すると、カイはクロの目の前で立ち止まると、大きくため息をついた。


 「もちろん憎いさ。IGTOという組織そのものには反吐が出るほどだ」


 「だったら、なぜ私と共に復讐を果たさない。それどころかなぜ私の前に立ちはだかるのだ!」


 どうやらクロは自分自身の敗北が決まっていると早々に悟ったようだ。そして、今までの悔しさや憎しみといった感情が一気にあふれ出てしまい、自分でもどうすることもできずにいた。


 それを受け止めているカイの表情も、どこか憐れんでいるようにも見える。


 「僕は、兄貴と敵対したかったわけでも、IGTOを守りたかったわけでもない。ただ、短い時間、ともに戦った仲間がたまたまIGTOのメンバーだっただけで、僕はその仲間を守るために戦ったまでさ」


 すると、クロは涙を流しながら、笑い始めた。まるで自分をあざ笑うかのようだった。


 「結局、お前は私の先を歩んでいたということか。私がIGTOの幹部に迎え入れられ、まわりの組織員たちに憎しみを抱いている間、お前は彼らを仲間として受け入れていたというわけか」


 クロの身体はだんだんと、本来の姿に戻ろうとしている。


 「それに僕は、こんな立場になって守りたいものが増えたんだよ。この星に僕たちが住むようになってから、様々なところでいろんな瞬間があるんだよ。それは良い物ばかりではない。それでも、その瞬間瞬間を大事にしたいとあのままだったらジーブスが思えたと思うかい?僕は、そんな瞬間を自ら感じることができない分、それを守る責任があると思っている」


 カイがそう言っている頃には、クロの姿はすっかり、総理の姿に戻っていた。


 「君だって自分の立場を思い出すまでは、その瞬間を大事にしていたんだろ?だから総理大臣になった。目的は逸れたかもしれないけど、きっかけは変わらないはずだだろ?」


 クロは一生懸命に腕を動かすと、内ポケットから一枚の写真を取り出した。僕の位置からは見えなかったが、恐らく、息子の写真だろう。


 クロとして自覚するよりも前、彼は人間として、父として本当に生活をしていたのかもしれない。


 IGTOへの復讐心の原因はそこにもあったのかもしれない。


 「カイロス、お前は本当に私を殺すつもりなのか?」


 「ああ、殺してもまた新たな人生が始まるだけだ。もう兄貴を憎しみと復讐心で縛りたくはない」


 「だが、お前はどうなる。お前にそんな背負わせるわけにはいかない」


 ようやくクロの瞳が穏やかになったような気がした。


 「どちらにしても、兄貴はIGTOにつかまって、死ぬよりもひどいことになる。僕はそれも嫌だ。だったら、兄貴にはどっかで生きていてほしい。それには僕がこうするしかできないだろ?すべてを知っている人間でないと・・・」


 「だったら、僕がいる」


 気づいたら、僕の口は勝手に発言していた。


 このお騒がせな兄弟は、不思議そうな表情でこちらを見ている。

評価、ブックマーク等もしていただけるとかなり嬉しいです!

よろしくお願いします。


感想も待ってます。


記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1

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