爆発力
僕は、カイの安否を心配しながら、さっきメイジーと話していた内容を思い出していた。クロの倒し方を聞いた時の話だ。
僕はあの時、カイでも倒し方が分からないので、本当にうまくいくのか半信半疑で聞いていた。
「彼が私と接触したのは、ゲルダファという復讐に燃える協力者を求めたからじゃなわ。あいつはただ、私がやっていた研究に興味があっただけなのよ」
「ヴァインズ邸の?」
「そうよ」
僕はそこでの出来事を思い出し、かすかに怒りを覚えたが、それをどうにか抑えた。
「あなたが怒るのも無理はないわね。ただ、一応言っておくけど、こうなる前の私の行動の目的は、クロと一緒だと思って・・・」
彼女が言いたいことはわかった。確かに、そんなことでいちいち感情を動かしていたら、体がもたない。だが、そうは言っても腹立つものは腹が立つ。
「続けるわよ?」
メイジーからも気まずそうな雰囲気を感じた。まぁ、僕のこの感情は直に彼女にも伝わっているはずだし、僕も彼女の後悔の念が伝わっていた。
「私の研究の最終段階で、肉体変異の研究はかなり進んでいたの。それが適合よ」
「適合?」
「つまり、ウイルスを使って体の変異を促すのと同時に、体のDNAを書き換えて、これが本来の肉体の完成体と思い込ませるという方法よ」
「それってつまりどういうこと?」
別に怒りの感情もなく純粋な気持ちで話を聞いていたにもかかわらず、僕は全く彼女の言いたいことが分からなかった。
「今からやろうとしていることは、ケイが作った万能薬で変異させているウイルスを除去して病気を治すような原理だけど、もしかすると、それがクロには効かないかもしれないってことよ」
僕は、彼女からケイの名前が出てきて、また少し怒りのボルテージが上がった。だがどこか彼女の心も動揺している気がした。
「何か隠してますか?」
僕の問いかけの後、少し沈黙が流れると、彼女の言いにくそうな口調が再び聞こえてきた。
「実は、そうしようと彼がひらめいたのも、私のせいというかなんというか・・・」
もう僕はそれ以上の話を聞くつもりはなかった。恐らく、ケイが息子の為に作った特効薬をクロが知った時にこの未来を予測してそうしたのだろう。だとしたら、もはや彼女は関係ない。
「でも、そしたらどうやってクロを倒すって話になるんだ?」
「もし、カイに策がないなら、私たちに残された策は力でねじ伏せることしかできないわね」
また単純明快なのか複雑怪奇なのか分からないことを言い始めた。
「どういうこと?」
僕ははてなマークをいっぱい彼女に送りつけるイメージを頭の中で描いた。
「あの核爆弾を阻止したときと同じ。あなたの力は何も考えず暴発させると、とてつもない爆発を引き起こすの。それをクロにも使うってわけね。でも、ただ爆発させるだけではダメ!」
「どうするの?」
「奴の体内から爆発させなければいけないわ。それには彼に空気中を漂うレットストーン、つまり私をいっぱい吸い込んでもらわないといけないわね」
やることが多いが、この会話の最中はメモを取ることができない。
「それはどうやってやるわけ?」
「私が合図を出すからそしたら、大爆発を想像してさえくれればいいわ」
そこまで難しくない注文で少し安心した。
「ただし、カイに策がなければの話ね」
「なんで、そこを強調するの?」
彼女なりの思いやりなのか?カイの手で倒してほしいという願望なのか?
「もし、クロをあなたの手で殺してしまえば、あなたが時の神として、この永遠に流れる時を司らなければなくなるの」
僕には、そのことがどれほどのことなのかあまり想像がついていなかった。すると、メイジーの言葉とともに、なぜか孤独感が押し寄せてきた。
「孤独って本当に恐ろしいと思わない?この感覚が永遠に続くのよ。一層のこと、何もなく漂うよりは、存在している価値を持つためにも、私が引き受けたいところだけど、この定めはこの星に囚われている者、つまりジーブスにしか引き継ぐことができないの」
「でも、そうなったら、カイだってそうなるってことだろ?」
「彼はもうすでに瞬間を司っているから・・・」
僕は、彼が以前漏らした言葉を思い出していた。彼は彼で孤独に疲れている。
「まぁどちらにしても、カイに策がなければ、こうしないと倒せないんですよね?」
「そうね。その関係でジーブス以外は、彼を倒せないから、あなたかカイしか、クロを倒すことはできない」
そのとき、今まで痛みもなにも感じていなかった背中のあざが少し熱くなった気がしていた。
この地球、宇宙、すべての運命を握っているのは、この何の変哲もないと思っていた背中の大きなあざだというのか・・・。
カイを吹き飛ばしたクロは、まさしく怒りの力で動いていると言っても過言ではなかった。
だが、もうすでにメイジーからは合図が出ている。僕も自分の運命に覚悟はできていた。かぐや姫のいう通り、僕は自分に嘘偽りなく選択をするつもりだ。
クロが今にも自分の力を使おうとしている。恐らくカイの時をさかのぼる力を使おうとしているのだろうか?どちらにしても、もう彼を倒すことができるのは僕しかいない。
いよいよだ!
「待って!」
突如メイジーの声が頭に響いた。
「なぜ?」
僕は出鼻をくじかれた。
「やっぱり、彼には策があったみたい!」
すると、思いっきり吹き飛ばされたカイが、メガホンレーザーから放たれている光のバリアに身を包みながら、立っている。
「書き換え完了!」
カイの姿を見てクロの怒りは頂点に達している様子だった。
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