メイジーの物語
僕の視界は普通の今いる場所の風景と、僕を心配そうに見守っている仲間の姿が映っている。だが、頭の中では、あの時・・・富士山が噴火して、我々があの時代から脱出するときの様子が映っていた。
「私が富士山の火口に投げ込まれた時、富士山の噴火で私とレチウムがこの日本という島国の大半の地域に降り注がれた。その時、私の生存本能が異常な反応を示して、レチウムそのものになった」
もう早速、話について行けなくなってしまった。あの時、メイジーは蛍のような発光体になったような気がするが・・・それが関係しているのだろうか?
「それから私は富士山の火山灰と・・・この大地と共に時を刻まなければならなくなった。何年も何年も、孤独だった。時々、何かの拍子に大地に変なことを起こして、それが童話とか伝説になったりもしたけど、それはあくまで偶然に起きたことで基本的には何もないまま、時が流れていった」
メイジーはその当時を思い返しながら、僕の頭の中で語り始めた。彼女の言葉の一つ一つが心に響いてくる。
「正直、その時の感情は悔しさや怒りがほとんどだった。まさか、自分がこんな生き地獄を経験しなければならなくなるとも思っていなかったし、なぜそうならなければいけなかったのかも分からなかった」
僕の頭の中では彼女が経験した何千年という時の流れが走馬灯のように流れている。頭がおかしくなりそうだ。だが、彼女はそれを等速で経験しているのだ。
「あら、同情してくれているのかしら?」
「僕には想像できない・・・」
僕がそう呟くと、彼女の説明が再び始まった。
「そうよ、本当に長い時間が流れたわ。その間にも自然災害や争いなんかも経験した。そして身近でジーブスの愚かさを目の当たりにしてきた。私には観察する時間とそれについて考える時間がいくらでもある。100年過ぎたあたりから、私は死ぬことはないということもわかっていた」
なかなかなパワーワードが出たと思った。
「その間に彼らの愚かさを自分と重ねた。そして彼とも・・・。私たちがやろうとしていることがいかに愚かなことだったのかを、何百年かけて気づくことができた」
彼女の言葉にはそれに気づいた贖罪の念よりも、どこか怒りや憎しみをさらに感じる。
「そして、この地球にクロがやってきた。若かりし私と共に。私は悟りを開いた状態でその当時の自分を客観的に見て、彼は私のことを復讐心を利用して、自分の計画のコマに利用していただけだったことがわかった。分かっているわ。気づくのが遅いことくらいわ・・・」
だんだんと、彼女の感情の深いところまで感じ取れるようになってきた。これ以上、僕は話を聞けるか分からない。でも、彼女の話は止まらなかった。
「そこから愚かな私とそれを操る男の数々の悪行を黙って見ていることしかできない時間が流れた。偽装で結婚した旦那の姿。偽装とはいえ本当の私の子供。そして、あなたたち・・・」
僕らの姿が客観的に映っている。その感情はもはや「懺悔」という二文字しか当てはまらない。
「でも、できることはほんの少しだけあった」
脳裏に映る光景では、彼女は何かの植物に働きかけていた。その植物とはぶどうだった。そしてそのぶどうはヴァインズ邸で栽培されているワインになるためのぶどうだった。
彼女は一体何を働きかけたのか?確かにあの騒動を起こしたのは彼女自身だが、それゆえの何か手助けをされていたということなのだろうか?
だが、それに関する詳しい説明はなかった。
「そんな時、私に転期が訪れた。この宇宙の運命が私にもう一度チャンスをくれたのだ」
情景にはあの巨大地震と海坊主のような津波・・・実際にはIGTOの乗り物だったのだが、それがよぎっていた。
また、あの時の情景が蘇る。でもそれは偽りの記憶だったのだ。
「それは一体なんだったんですか?」
僕は気を紛らわすように、メイジーの話を進めてもらった。
「タガニウムがこの地球に落ちてきた。タガニウムのエネルギーが私に取り込まれて、レチウムと結び合わせることであなたたちがつけたダサいレットストーンとかいうものができたの」
確かにダサいが、あれは濁らないための対策で、あれが真面目な僕のセンスだとは思われたくはない。
「つまり実態を持てるようになった私は、ただ存在しているだけでなく、働きかけることができるようになった」
彼女から感じる感情は、霧が晴れたように清々しい気持ちに変わっていた。
「それから私は、あなたたちを助けるため・・・彼を倒すための戦いが始まったわ」
「ちょっと待って!じゃあレットストーンの正体は・・・」
「私ってこと。サプラーイズ!」
僕は、頭の中で疑問が止まらなかった。
「じゃあ、あなたがレットストーンを触った時とか、核兵器を爆発させる時も?」
「ええ、IGTOのメンバーはあのままだったら、隠蔽をするところだったし、それに私がいたらさらに話がややこしくなるだけだから、あのタイミングで消したってわけよ。核ミサイルの件については・・・まぁわかるでしょ?あれは逆に見返りが欲しいくらいだけどね・・・」
彼女の心が再び悔しさで溢れていた。
「実は、あの時に私は総理のやつを倒そうとしていたのよ。でも、恐らく奴は私の存在に少しは気づいていた。そのせいで仕留めるところまではいけなかった・・・」
メイジーの説明が終わると、心がようやく落ち着き、頭の中もスッキリとした。
「これで私のこれまでのことを分かってくれたかしら?」
彼女は嘘をついていないと思った。そして僕は、チラッと彼女の気持ちに触れた時に、見せた母への思いは本物だと感じた。母の記憶も何もかも嘘なのに、本当というのもなんとも矛盾していると思うが、僕はそれも踏まえて彼女を信じることにした。
「それで、これからどうすればいいの?」
「そうね、話せるうちにもう一つ話しておかなければいけないことがあるわ」
今の僕には彼女の話を聞く耳があった。
「クロを倒す方法についてよ・・・」
確かに、それを知っているのは心強い。だがメイジーの声には少し重々しい雰囲気を感じた。
「彼を倒せるのは、カイではなくてあなたよ」
そんな気がしていた。
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