極悪サラブレッド
特効薬を撃ち込まれたメンバーたちは、次第にオオカミ人間の姿から元の姿にもどろうとしていた。だが、まだまだオオカミ人間たちは絶えずこちらにむかってくる。
「そりゃ、今まで生きている人間の数だけいるってことだもんね。その人たちをすべて治すってなったら、これからあんたも苦労するんじゃないの?」
デルが他人事のようにカニカマにそう言い放ったとき、彼女の撃ち込んでいた特効薬が空っぽになっていた。
「ちょうどいいタイミングですね。あざの方、よく見ててくださいね」
目をつぶりながらかぐや姫がそう言うと、彼女の手に握られていた特効薬の入れ物が緑色の光を放ち始めた。
僕はこの光景を前にも見ている。そう、レットストーンのあの時だ。僕の時は爆発を引き起こし、IGTOのメンバーを一網打尽にしてしまった。
だが、かぐや姫の話では、そうはならずその物質をしっていれば、それに見合う効果が発揮されるようだが、この光の発色の仕方は、どう考えても爆発する未来しか見えない気がした。
だが、そう思っているのはどうやら僕だけのようで、みんな静かに行く末を見守っている。
もしかしたらここまで来て失敗しても、もうどうしようもないという意思表示なのかもしれない。
すると、緑の光はさらに輝きが増すと、無数の粉のようなものに姿を変え、かぐや姫はそれを操るように、両手を前に出した。
たちまち緑の粉はまるで向かってくるオオカミ人間たちを巻き込む砂嵐のように飛んでいくと、オオカミ人間たちは動きを止め、緑の砂柱に飲み込まれていった。
一体あの中で、なにが起きているのかはこちらからは全く確認することはできない。
だが、かぐや姫の満足そうな表情を見るに、どうやらうまくいっているという事だけはわかった。
そんなかぐや姫は結果を見ることなくこちらに身体を向けた。
「分かったかしら?」
「分からないです」
僕は即答した。そりゃ触れるだけでああなってくれるなら、最初から苦労しないはずだ。
「私の力ではあれぐらいのことしかできないけれど、あなたならもっと力が発揮できるはずよ?」
「それは何を根拠に?」
僕は思わず思ったことを考えもせず口に出していた。
「あなたにはジーブスとゲルダファの血が流れている。どちらもこの宇宙においては特殊体質をしている。あなたはその両方の力を兼ね備えているわ」
なんかそう言われると、自分はすごいのかもしれないと思うが、正直このタイミングで言われてもなんにもうれしくはない。何ならこの二つの種族はどちらも銀河の敵みたいな立ち位置の種族として語られているとなると、極悪種族のサラブレッドでしかない。
それに、何度も繰り返すようだが、僕も一度はこの技を使っている。まぁ意図せずではあるが・・・。
「ああ、そうね。あなたは一度失敗していると思っているのよね」
また僕は心の声を漏らしていたのか?だが彼女はそのことに言及することなく、話をつづけた。
「あなたはレチウムを触ったことで大爆発を起こしたと思っているみたいだけど、本来、あの物質は発光するだけよ」
「でも、それはタガ二ウムと結合して・・・」
カイもその議論に参加してくれている。そう、あの時はタガ二ウムと地球の物質が結合して、レットストーンという物質になって、それが兵器としてなぜか人間には影響がなく、IGTOやメイジーに影響を及ぼしていると今まで思っていた。
すると、かぐや姫が不思議そうな表情を浮かべていた。
「あなたたち、何を言っているのかしら?鉱石と鉱石がくっつくみたいなことを言っているのかしら?そんなこと聞いたことないわよ?」
「じゃあ・・・」
なんだか元々知るはずのなかった常識が違うと言われてしまうと、もはや何を信じていいかわからないという感情を通り越して、もうなんでもよくなっていた。
「もしかしたら・・・」
かぐや姫は急に何かをひらめいたように、目を見開いた。
「なんですか?」
「これも彼女の仕業なのかしら?」
かぐや姫はそうつぶやいた。
「彼女・・・?」
僕はかぐや姫に問いかけたつもりだったが、彼女は上の空だった。
「かぐやさん、何か知っているなら教えていただけませんか?」
僕は、少し感情的になってしまったが、それでもかぐや姫は少し驚きながらも、優しい笑顔をこちらに向けてきた。
なぜかそれにほっとしている自分がいるのは気のせいだろうか?
「そうよね。でも多分私の口から説明しても、今のあなたは私を信じられないと思うから、自分で確かめてみると良いかもしれないわね」
「確かめる?」
かぐや姫は無言でうなずいた。
だが、僕はそれに対してさらに困惑した表情を浮かべていたに違いない。
「心で問いかければきっと答えてくれるはず。そうよね?」
かぐや姫は間違いなくいま、誰かに呼びかけた。この中にいるだれかではなく、目に見えない何かに対して・・・。
僕は誰と対話をするべきなのか?
「そろそろ、あなたがこの争いを終わらせる時が来たみたいよ。でもそれには彼女の力を借りなければいけないみたい。私はきっと力を貸してくれると思うわ」
もう訳が分からない。だが、彼女の言う通り今の僕は、自分で確かめなければ理解しようとしないだろう。それに今までもこんなことは当たり前のように起きた。
でも、なぜか怖い。
「何が怖いのよ?」
そう、僕はこの声が怖いのだ。
「何よ、失礼じゃないのよ!」
やはりそうだ。僕の頭の中で、メイジーの声が響き渡っている。
「久しぶりね。まぁ私はずっとあなたを感じていたけどね・・・」
僕は今更彼女と何を話せば良いのだろうか?
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




