速達便
三人のべリングキャットのメンバーから放たれるマシンガンの弾は凄まじい音を立てて容赦なく、樫太郎に向かって放たれていた。
「樫太郎さん!」
僕は思わず彼の名前を叫んだ。僕がそう叫んだところで事態は何も変わらないのに、人はなぜこういった状況の時に、決まって叫び声をあげてしまうのか?そのくせになぜ叫び声は、これほどまでに無力なのだろうか?
その時、またあの感覚が襲った。耳ではなく、頭の中に響いてくるあの声だ。そう、かぐや姫の声だ。
「それはそれだけ、あなたが彼のことを思っているからです。声は想いの強さです。それに決して無力なのではございません。ただ、使う方法が違うだけなのです」
かぐやの声はいつもお告げとか預言者みたいな凄みを感じる。その声はさらに続いた。
「生物の共通する弱点は孤独です。孤独は誰しも感じやすくそして最も恐怖を感じるもの。この事に例外はありません。声はその弱点から身を守るための唯一の手段なのです」
でもそれが今の状況と何の関係があるのだろうか?
「今のであなたの正確な位置がわかりました」
かぐやの声が少しいたずらっぽさを感じた。果たして今の言葉は何を意味しているのだろうか?その答えは聞くことはできなかった。
まぁ期待もしていないのだが・・・。
「そして恐らく、あなたに声は彼にも生きる意志を少なからず強固なものにしたに違いないでしょう」
かぐや姫がそう言い終えるや否や、べリングキャットたちは銃の装填をするために樫太郎への襲撃を一時中断した。
その時彼らの目の間に、樫太郎の姿が現れた。彼は目にも止まらぬ速さで距離を詰めると、気がつけば一人は片足で、もう一人は刀を持っていない方の手で、そして残る一人は刀の柄の部分で見事に制圧していた。
だがよく見ると、身体中が傷だらけで、それに比例するくらい刀もボロボロになっている。まさか、あのマシンガンの弾を出来る限り刀で自身から逸らしていたというのか?
僕と同じようにブルターやカイまでも驚きの表情が、顔に刻み込まれている。
「すまん・・・私でもこれ以上は戦えないようだ。今のうちに早く先へ進んでくれ・・・」
樫太郎は息を切らしながら、どうにか僕たちにそう伝えた。そんなボロボロの状態なのに、樫太郎は片足立ちの状態で、三人の手練れを制圧していることになる。
我々は彼のためにも、先へ進むしかない。これはかれこれずっと思っていることだったが、どうやら運命は我々が先へ進むことを拒んでいるようだった。
進むべき方向の先からは、オオカミ人間たちがよし寄せてくる。彼らべリングキャットの三人やドリゼラは、奴らが来るまでの足止め要因だったのかもしれない。そして、見事にその役目を果たしたようだ。
「やはり、ここは戦場。一難去ってもその倍以上の災難が来ると言うことですか」
「そんなことは言わない方がいいぞ。僕の存在自体が迷信みたいなものに、それが存在するんだから、言霊だってあるかもしれないぞ?」
そんな軽口を叩きながら、カイはメガホンレーザーを構えると、高音域の音を発射させる。先頭のオオカミ人間たちが、もがき苦しんでいるが、その後ろからまたさらに元気なオオカミ人間たちが無数に現れる。
「ダメだ。数が多すぎる!」
「だったら、一か八か突っ込んでみるのも一つの策じゃないか?」
こちらの考えもだんだん余裕がなくなり、雑さが目立ってきた。このままでは目的地に辿り着くことなく全滅し、この銀河はめちゃくちゃなことになってしまう。
「その必要はございません」
また頭の中でかぐや姫が喋っていると思ったら、いつの間にか目の前に現れていた。
「かぐや・・・なぜここに・・・」
樫太郎の声が微かに聞こえてくる。
すると、かぐや姫は無邪気な笑顔をこちらに向けると、彼女を取り囲むように、上空からカニカマとデルが銃のようなものを構えて降り立った。
「お待たせしました!」
「特効薬の速達便だぜ!」
二人はまずべリングキャットの三人に何かを撃った。あまりダメージはないようだったが、三人はすぐに口々に何か言い始めた。
状況が分かっていないようだが、確かに日本語を話している。まぁ正確に言えば、メガホンレーザーの翻訳機能のせいで日本語を話しているのだが、とにかくどうにか効き目が出ているようだ。
「君たちはあの三人の手当てを」
「わかりました」
彼らはすぐに安否不明のメンバーの元へそれぞれが駆け寄って行った。
一方のデルの方も、こちらに迫ってくるオオカミ人間たちの対応に追われていた。
「ちょっと・・・これじゃ数が多すぎて薬が足りないよ!」
「でもこの別嬪さんが・・・」
するとカニカマの言葉にかぐや姫の表情が急に変わった。
「何?私に何か文句でも?」
「いえ!そんなことはありませんが・・・」
「せんがなんだ?」
カニカマは勢いよく応えるも、それに対するかぐや姫の揚げ足取りに圧倒されてしまった。
「すいません!お任せします」
カニカマはフェードアウトしていった。
かぐや姫はカニカマを一瞥すると、再びこちらに振り向いた。その表情はいつものかぐや姫のものに戻っている。
「あなたも手伝っていただけるかしら?」
「何をですか?」
かぐや姫は僕の背後を覗き込んでいる。
「いよいよそのあざの能力を使う時がきましたよ」
そんな言い方をされても、僕がワクワクすることはなかった。
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記念すべき第一話はこちら!https://ncode.syosetu.com/n3719ku/1




