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偏差値4

 **** 泥沼学園1年G組


「みんな、おはようさん♡今日もナイスな一日になる様にがんばりましょう」

「さて、今日は、1週間後の課外演習の話をするわね」

「あなた達は、偏差値が低すぎてここに来たわけだけども、何もしなければ、もっとレベルが下がっていくのよ。そのうち10歳の子にも負けるわ」


「けっ」

「ざけんな」

 教室内がざわついた。


 ナイスはニヤリとしながら

「嫌でしょ。だから、偏差値が低くても負けん気だけはあるあなた達は、この課外授業で実力をつけるのよ」

「書いてある物の準備と、それから今から4人一組のチーム作って、ね♡」

 と励ました。


 直ぐにチーム編成が始まった。

 だが、既にクラスには仲良しグループも出来ている、一方あぶれ者もいた。


「ザック、組もうぜ」

 ラッシュがザックに話をもちかけた。


「ああ?何で全部無しのオメエと組むんだよ。何の得もねーだろ」


「同室のよしみだ。それに見てみろよ!俺とお前だけだぜ、誰にも声かけられてないの」


「お前と一緒にするな。おれはちゃんと属性もってんだよ。それに、あそこ、もう一人いるだろが」

 とザックはクイっと顎で指した。


「おっ彼はえっと???」


「あいつはガク、あいつも同室だ。おい、ガク」


 ビクゥ


「あいつ超人見知りでよう、大丈夫か、ほんと」


 ラッシュとザックの二人はガクに近寄り声をかけた。

「ガクって言うんだな。俺ラッシュ。よろしくな。それと、ようこそハズレ者一味へ」

 ラッシュは無理やりガクの手を取り、握手をした。


 ハ、ハズレ者一味?僕もその仲間になったということ?

 と思ったが、そんな事さえも言い返せず、ひきつった顔のまま、仕方なくラッシュの手を握り返した。


「後一人は、寮に戻りゃいるだろ」

 ザックが自信ありげに言った。


「そいつも同室なのか?」


「ああ、結局、同室の一味になっちまうな」


「それも面白いな。そんじゃあ部屋に戻ったら作戦会議だ!」

 ラッシュの目が輝いた。


 ****


 寮に戻った3人は、最後の一人のアレックスに声をかけた。

 アレックスはラッシュと同じく下の段に寝ていた。


「おい、アレックス、起きろ!課外演習の話すっぞ」

 ザックが寝てるアレックスをゆすった。


「えー眠いんだよ。あとにしてくれよ」


「オメー何時間寝てりゃ気が済むんだよ!」


「アレックス、俺はラッシュ、よろしくな---授業に出てこないと、退学になっちまうぞ」


「ダメ、それはダメだ」

 アレックスが叫びながらガバッと起き上がった。


「よっしゃ、これで同室の一味、全員揃ったな」

 ザックが気合いを入れた。


「じゃあまず、みんなの特徴を確認しようぜ。みんなは何が出来るんだ?因みに、俺は知っての通り、属性も適性も無しの偏差値ゼロだ」


「どうやって生きてこれたってんだよ。まったく。俺は、火属性だ。適性は30」

 ザックが言った。


「え?、悪くないじゃないか、何でここへ?」

 アレックスが驚いて聞いた。


「別にいいじゃねーか、人には事情ってもんがあんだよ」


「じゃあ俺ね。俺はアレックス・クラブ。属性は土、適性は15。低いだろ?はは」


「安心しろ!俺より低いやつはいない。悩んだら俺を思い出せ。お前の下にはいつも俺がいる」

 ラッシュが意味不明な説明をしたが、しかし、何となくみんな勇気付けられた。


「つ、つ、次は、、、僕、、ガク、、だ」


「おう、ガク、一発かましてくれ!」


「ひぇーーかますってなにーーー?」


「はっはっは、ひぇーじゃねーよ、全く。いいからお前のこと喋れよ!」

 ザックが腹を抱えて笑いながら言った。


「ぼ、僕の属性は木。てき、適性は40」


「すげーな。それなら偏差値60は超えてんだろ?他のエリート校でも行けたんじゃねーのか?」

 ザックが驚いて言った。


「そ、そんな。エリ、エリートのみなさんと顔を合わせることな、なんて、無理。絶対」


「性格の問題かよ。しゃーねー。まあ、ここには色んな問題を抱えてる奴しかいね〜からな」


「よし、火、土、木だな。それでどうする。俺には全くアイデアが思い浮かばないんだが!」

 ラッシュが元気よく言った


「そりゃ属性のないお前には無理な話だ。だが、オメーは、毎日毎日、どこでなにしてんだ?まあ俺にはかんけーねーが、一味を組んだ以上は聞いとかねえとな」


「ザックの言う通りだな。けど、別に隠してるつもりじゃないぜ。俺は何も持ってないから倒せる魔物は、スライムだけ。5歳からスライムだけを毎日休まず狩り続けてる。そしてある時から、疲れにくい体になって、鍛えて鍛えて、やっと受け入れてくれる学校が、ここだけだった。俺は今も毎日時間があれば鍛えに行っている。だからここにも殆どいなかったってわけだよ」


「そうか、そのゴツい手は、鍛えまくった証だったんだな、すげーじゃんか、おめーよー」


「いや、ザックに言われると照れるなぁ、はは」


「5歳からスライムだけ。それはそれですごいね。僕は基本的に寝てるのが好きなんで、魔法の勉強なんて殆どしてこなかった。だから君の努力は本当にすごいと思うよ」

 アレックスが自分の掌を見つめ呟いた。


「それで、今回の演習はだな」

 ザックが演習の内容の説明をしだした。


「宝探しだ。宝といっても満月草だがな。こいつを煎じて飲めば、治癒の効果があるって薬草らしい。この絵の通りだ。この満月草を一番多く取ったチームの勝ちってこった。場所はエリフの森。王都西門を出た先に広がっている森林地帯の事をそう呼んでいるらしい。まあ、俺には余裕だが、そこには大型のラット、コボルト程度の魔物はいるって、書いてあるぜ....っておい、汗かいてんぞ、ラッシュ。おめえまさか怖えのか?」


「こ、怖かねえが」


「声がうわずってんじゃねえか。情けねぇ。まあこの際だ。スライム以外も狩ってみろよ」


「え、ああ、やってみる」


 **** 学園長室


「少し調べたよ。称号について」


「ありがとうございます」

 ナイスは、窓の外を見つめながら話をする学園長が、いつに無く緊張した面持ちに思えた。


「現在この国で発現が確認出来ているスレイヤーは、ドラゴンスレイヤーの1つだけじゃった。ドラゴンスレイヤーは一匹でも倒せばそのトドメを差した物にその称号が与えられる。まあ100%ではない様じゃがの。どうやら核を割った時に、その溢れ出る魔力に触れる事で、それが称号として析出するという事らしいのじゃ。それだけドラゴンの魔力が凄まじいという事じゃな。そしてその理屈からすると、小僧はスライムの魔力だけを浴び続けてきた結果、称号を得るに至ったという事になるのぉ。恐らく他の魔物も倒していたら、この称号は得られんかったかも知れん…」

「そしてここからが重要じゃ」


 ナイスは少し緊張して学園長を見た。


「スレイヤーの称号を得た者は、最後、その称号に喰われるという事じゃ」


「く、喰われる?」

「それはどういう意味、、でしょうか?」


「ドラゴンスレイヤーは必ず火属性を得るのじゃ、しかも強烈な特殊魔法付きでの。じゃが、その火を制御出来ず、殆どの者が燃えてしまったというのじゃ。元々水属性持ちであれば対抗出来たらしいがの。そうして生き延びた人も過去にはいるそうじゃ。しかしな、その者は燃えて死んでいた方が良かったと思えるほどの最期を迎えたのじゃ」


「燃えた方が良かったと思える最期ですか?」


「ああ。生き延びたその者は、腕、足と徐々に鱗が出てきてな。最後は全身が鱗で覆われてドラゴンになってしまったというんじゃよ」


「それが喰われるという意味ですか?それではラッシュは、スライムになってしまう、ということでしょうか?」


「それは分からない。なにせ記録がない事のようじゃからなぁ。それに、まず、スライムの属性とはなんじゃろうかのう?」


「いえ、そう言えば、知りません」


「わしも知らん」


「でな、スライムをことのほか愛してやまぬ、変わった研究者がおるじゃろ?」


「ああ!ラネッサ・ボーン教授ですね」


「あやつに聞いてみようかと思うとる」


 **** 演習の日


「おはようみんな、4人1組で5班出来た様ね。作戦も練ってきたかしら?今日は1年全員でやるから、全部で35組が一斉に森に入るの。お互い注意して、怪我のない様にやってちょうだい♡」


「おっし、みんな聞けい!」

 片目に眼帯をした筋骨隆々の坊主頭という定番の鬼教官が登壇した。


「俺が今日の作戦の指揮を取るガーメントだ。俺は教師だが冒険者でもあり日々魔物倒しまくってる。激強い。で、お前らの安全のために言っておく。何かあったらこの救助弾を空に向けて撃て。上に向けて紐を引くだけだ。俺が必ず助けに行く」


「んなもんいるかよー」

 他の組の生徒が煽りを入れた。


「お、いいぞ、生意気坊主。その調子だ」

「森の中にはこの赤い布を腕に巻いた俺の仲間と各先生方が見張ってるからな。敵じゃないので、安心しろ。よし、15時までの5時間だ。それまでに戻って来ないと失格だ。頑張って行ってこい。クソガキども」


「おい、ザック、あれ女子だよな。何でいるんだ?」

 ラッシュが驚いて聞いた。


「お前、今頃何言ってんだよ。ここは共学だろが」


「男子校じゃなかったのか?……..イメージ狂うな」


「バカかオメエは。あいつらを女だと思うな。死ぬぞ」


「なにー、あれはナイス先生みたいなもんだってことか?」


「テメー声がでけえ!」


「あーん、聞こえたぞぉ。テメーあたしらがナイスと同じだって言ったのか?おー?よしよしよし。ぶっとばーす」

「座れや、そこに、クソが」


「おい、テメーら演習始まってんだぞーさっさと行かんかー」

 ガーメントが額に血管を浮かべて怒鳴り散らした。


「テメーの顔覚えたかんなぁ」

 ピンク色の髪をツンツンに立てたパンクの様な女子がラッシュを睨みつけた。


「ラッシュ、お前、厄介な連中に目をつけられちまったな」


「そうなのか?----まあ、演習頑張ろうぜ」

 ラッシュは全く気にする様子もなかった。


「こっちだと思う」

 ガクが何かを感じたのか小さな声で言った。


「お、ガク、何か探知したか!さすがだぜ」

 ザックがニヤけて言った。


 一味は、事前にガクを連れ、満月草を採る練習をしていたのだった。

 満月草は弱いが魔力を発している。

 その特徴をガクは捉える事が出来た。


「一つ目ゲットー」

 ザックが満月草を掲げた。


「こっち」

 ガクがどんどん見つけて行く。


 しかしだいぶ森の深く入ってきた。


 きゃーーーー


「悲鳴だ」


 一味は悲鳴のした方に走ってくると、女子クラスの生徒が魔物に襲われていた。

 だが、ピンク頭のパンク女子が

「テメーら、冷やかしに来たのかぁああ?」

 と、ラッシュ達に叫んだ。


「あ、さっきのアバズレ!」

 ザックが思わず本心を漏らした。


「んだとテメー」


「リョウ、そんなの相手にしてないで、ランをなんとかしないと!」

 ピンク頭の女子はリョウと言うらしい。

 一方ランと呼ばれた女子がコボルト二匹に囲まれていた


 ラッシュは思わず駆け出していた。

 そしてコボルトと女子の間に入り込んだ。


 コボルトは犬が二足歩行しているような魔物であり、大きさは、凡そ2mほど。ラッシュの肩を掴み、噛み付いてきたが、ラッシュはその上あごと下あごを掴み、背負い投げの様に投げ飛ばした。

 もう一匹には顔にアッパーカットの様なパンチを喰らわせるとコボルトの体が1mほど浮き上がり、顔がひしゃげ、そのまま地面に倒れ落ちた。

 そして二匹とも逃げて行った。


「おーラッシュやるな。ここで炎は使えないから助かったぜ」


「ありがとう。助かったわ」

 コボルトに囲まれていたランが息を切らしながらお礼を言った。


 ラッシュは自分の手を見つめて放心している。


「ラン、大丈夫!」


「大丈夫よ。ミンカ、リョウ、サワ」


「それにしても、お前ら俺たちが来なきゃどうするつもりだったんだ。三人とも全く動いてなかったろうが」

 ザックが呆れた様に言った。


「ランと俺は炎、だし、サワとミンカは土だから、そんなに応用が利かねーんだよ。うっせーな」


「そうかよ、まあせいぜい入り口付近で頑張んな。戦えも出来ない連中がこんな奥に入ってくるのは馬鹿か命知らずのどっちかだかんなぁ」

 ザックが煽った。


「言ってろクソが、もう大丈夫だからよ。お前らあっちいけ」


 ガクがラッシュの袖を引っ張った。


「お、ガク、どっちだ」

 ラッシュの目に光が戻った。


 ガクが更に森の奥を指さした。


「じゃ、あばよ。あいつらに喰われないように、せいぜい気をつけな」

 ザックがそういうと一味は女子達と分かれ更に森の奥へと入っていった。


「ザック君、彼女達大丈夫かな?」

 アレックスが心配そうに言った。


「奥まで来なきゃ問題ねえだろ」


「あったよ」

 ガクがまた見つけた。


「よし、3つめゲットだ。いいペースだな」


 どっか――――ん

 どか―――ん

 どどーーーーん


「なんだ?」


「あっちだ!」

 ラッシュが走り出した。


「馬鹿か、派手に炎使いやがって」

 ザック達も続いた。


 ラッシュ達が現場に到着すると、既に腕に赤い紐をした冒険者風の男と他のクラスの先生が到着していた。


 すぐそばに数名の生徒と豚の様な顔をした魔物が倒れていた。


 先生たちは、生徒の治癒を行っていた。

 魔法は、適性値が上昇するにつれランダムにスキルが追加されていく。

 高適性値の一部の教師らは、治癒スキルを得ており、一定の治癒魔法が使えた。


 水属性の冒険者が森の火を消していた。


 ラッシュ達に気づいた教師が聞いた。

「おう、お前ら何組だ?」


「G組っす」

 ラッシュが答えた。


「一旦森から出ろ。オークがでた。想定外の魔物だ」


「だが先生よ、さっき女子たちが、この近くにいたぜ」

 ザックが伝えた。


「ほんとか、俺たちが行く。お前らは森の入口へ向かえ!」


「しゃーねー戻るか?って?あれ?ラッシュは?」

 入り口に向かって歩き始めたザックが気がつくと、ラッシュが消えていた。


 さあ?

 と、他の2人は首をひねった。


 ****


「いやもう、何これ!ラットでもコボルトでもないじゃん」

 女子たちは逃げまどっていた。


「おーい、どこだー」

 ラッシュは森の中を探し回った。

 しかし見つからない。

 ラッシュは耳をそばだてた。

「あっちかな?」


「誰か―、せんせー、全然違うじゃんよ、魔物がーー」

 女子達が枝や幹を避けながら森を逃げ惑っていた。


 ドスンドスン

 バキン

 バコーーーン


 棍棒を振り回してオークが迫ってくる。


「もう仕方ない」

「赤き炎は道しるべ、我に従い顕現せよ、紅蓮の矢、一本」

 リョウは森が燃えるのも仕方ないと、走りながら詠唱を終えると、振り向きざまに杖を振りかざした。

「フレイムアロー」


 ド――――ン


「あっちか!」

 ラッシュは音のする方向へ向かった。


「全然効いてないじゃん、何あの化け物」


「ミンカ、サワ、落とし穴でも掘れないのぉ?」

 ランが聞いた。


「無理に決まってんでしょ、走りながらなんて」


「サワ!、救助弾撃って!」


「ダメもう、走れない」

 一番小さいサワの体力が限界だった。


 ゴロゴロ

 サワが地面に倒れて転がった。


「あ、サワーーーーー」


 ゴア――

 ブヒャウヒャ


 オークが醜い笑い声を上げて、よだれをたらしてサワを鷲掴みにした。


 はぐぁ


 サワが短く叫ぶと、口から血を吐き、力が抜けぐったりした。


 オークはもう一度サワの体を握りつぶした。


 ぐちゃ

 リョウたちが聞いた音は、明らかに内臓がつぶされた音だった。


 きゃーーーーー

 サワーーーーー


 女子たちの叫び声が森の中に木霊した。


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