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相談相手

短め。遅刻すみません

「殿下は悩みをご相談されるならどなたになさいます? 信頼できる方、特に女性の方で心当たりはいらっしゃいますでしょうか?」

 私の話を聞いたリオン殿下は首を傾げる。

「え? それはどういう意味?」

「もし殿下が、孤独を感じられて、相談するなら誰だろうと思いまして」

「相談?」

「現在なら、おそらく陛下、もしくはルシアーナさまになさるのではないかと思いますが、それが無理となった場合の話です。もちろん学院の先生ということもあり得ますが、それ以外となるとどなたでしょう?」

「俺じゃないか?」

「お兄さまは、とりあえず除外です」

 実際に殿下が真っ先に相談するのは兄で間違いなさそうだけれど、さすがに兄は龍使いではない。

「ちなみに、エローナ侯爵家と交流はあるのでしょうか?」

「ないわけではない」

 リオン殿下は曖昧に応える。

「母上の実家であるから、それなりに交流はある。だが、なにかあった時にわざわざ相談に行くか……と考えると、あまり考えられないな」

「そうですか」

 もちろん今の段階ではそうでも、のちに変わらないとも言えないのだけれど。

「むしろ、今回の件がなければ間違いなくポルダ子爵に相談していたと思う。彼は私が小さい時から、椿宮で働いてくれている古参の家臣であるから」

 現在はまだ逮捕に至っていないものの、ニック・ドロワ男爵の自白を待って、ポルダ子爵も横領の罪で逮捕されるらしい。ポルダ子爵の場合、横領した財産のほとんどを寄付などに使っているようだ。単純な慈善活動なのか、慈善活動に見せかけた『何か』なのかは、まだわからない。

「子爵ですか……」

 もちろん子爵は怪しい。だけれど、あの時聞いた声は女性だった。そしてポルダ家政婦長の声ではなかったように思う。

「あの……普通に考えて。相談する相手がいない場合は、神殿の神官に相談するのではないでしょうか?」

 クラーク先輩がおずおずと手を挙げた。

「うーん。そうだな。俺なら、おっちゃんだけど……殿下の場合は誰だろう。大祭司とかになっちゃうのかな?」

「私はそれほど信心深いわけではないからなあ」

 リオン殿下は首を傾げる。

「ちなみに女性の神官にお知り合いは?」

「いない……わけでもないか?」

 リオン殿下はふむと、考え込む。

「母上の従姉妹で神殿に入った人がいた……はずだ。ただ、会ったのは十歳のころ一度だけれど」

 子供の頃に一度会っただけだから、顔もあまり覚えていないと殿下は答える。

「ルシアーナさまの従姉妹というと、エローナ侯爵家とゆかりの方ですか?」

「たぶん。神力に目覚めたから神官になったらしいのだけれど、先代の侯爵は激怒なさったと聞いている」

「ちなみに、今その人はどうしているかとかお分かりになりますか?」

「調べてみればすぐにわかるとは思うけれど」

 現実問題として、いくら親族で、神官だとしても、ろくに会ったこともない人のところに人生相談に行くかと言われたら、私なら行かないなあとは思う。

「女性限定で相談相手というなら、今なら、アルマク嬢……かメルダナ嬢にすると思う」

「それは……光栄ですけれど」

 私の聞いた声は私では当然ないし、エミリアさまでもない。

「殿下の性格から考えると、結構ぎりぎりまで一人で悩むと思う。今回の件は、どっちかというと、俺が根掘り葉掘り聞いたのがきっかけだったし」

「……まあ、そうだな」

 リオン殿下は頷く。

「ダビーはおせっかいだからなあ。それで周りが助かっている面があるのは事実だけれど」

 フィリップ兄さまが苦笑する。

「とりあえず、ダビーに話せば何とかしてくれるという妙な安心感はある」

「お兄さまは意外と信頼されているのですね」

「そうだな。アルキオーネももっと兄を尊敬した方がいいぞ」

 えへんと、兄は胸を張る。

 実際、兄はすごいとは思う。なぜ兄妹なのにこんなにコミュ力に差があるのだろう。

「そういえば、ポルダ夫妻は光輪派の勉強会によく顔を出していたとお聞きしましたが?」

「ああ、そうだね。マーケー地区にある神殿に通っているそうだよ。そうそう、二人が奉仕活動をしていた青砂という孤児院はその神殿の敷地内にある」

「青砂……」

 孤児院が関係しているかどうかはわからないけれど。

「その神殿と孤児院に、一度行ってみようかと思います」

「アルマク嬢?」

 そこに殿下の将来の相談相手が絶対にいるという保証はないのだけれども。

「もし殿下がポルダ子爵に相談されて……ポルダ子爵がどなたかを紹介なさるとしたら、自分の通っている神殿の神官だと思うので」

 私のみた未来視を阻止するならば、あの『声の主』を捜す必要がある。

「つまり……アルキオーネはポルダ子爵が通っている神殿の神官が『龍使い』ではないかと疑っているということか?」

「その可能性もあると思っています」

「しかしなあ、仮にも神官だぞ?」

 兄が呆れた声を出す。

「お兄さま」

 私は小さく息をついた。

「神官すべてが、ガデリ司祭のようにできたかたばかりではありません。何より、古今東西、神の名を隠れ蓑に悪事を働く悪党なんて、星の数くらいあるのですから」

 神をほとんど信じることのなかった前世の日本だって、神の名のもとに高価な壺をかわせるとかざらにあったのだ。神の奇跡が実際にあるこの世界なら、なおのこと人は簡単に神の名を信じるだろう。

「わかった。一度調べてみることにしよう。アルマク嬢間違っても一人で出かけたりしないように」

 殿下は私に念を押し、そして大きくため息をついた。

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