第34話【終わらぬ冒険】
前回、 エル達はエルンソアにある逆さ星のアジトを潰し、 ルーミの救出に成功した。
そして今、 ルーミとフェミルは姉妹で話をすることになった。
「待てコラァー! ! 」
「あ~やだやだぁ! お説教は勘弁~! 」
妹であるフェミルに追いかけられるルーミ……一体どちらが姉なのやら……
そしてやがて両者共々疲れ果てた時。
「ぜぇ……ぜぇ……」
「は……速くなったねぇ……見ない内に……」
「シュラスの旦那に……散々鍛えられてたからな……はぁ……」
息を切らす二人。
二人はたまらず休むために酒場へ入った。
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『……ぶはぁ! 』
二人はコップ一杯の水を一気に飲み干す。
「……さぁて、 話の続きだ……! 」
「……うん」
まだ根に持っている様子のフェミルにルーミはさっきと違って落ち着いている様子だった。
そんなルーミにフェミルは調子を崩される。
「な、 何だよ……調子狂うじゃねぇかよ……」
「ふふ……ごめん、 何て言うか……久々に妹の顔を見て……ちょっと嬉しくなっちゃって……」
「さっきまでくたばってたからって……亡霊みてぇな事言うんじゃねぇよ……」
「アハハハハ! 」
すると二人の間にしばらく沈黙が続く……
そこから何も話せないまま時が過ぎていく……
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数十分後……
「……フェミル……」
ルーミがようやく口を開いた。
「なんだよ……」
「……本当に良かったよ……無事で……こうしてまた会えたことも……あの時から……ずっと私はあなたの事を心配していた……」
そう言うとルーミはフェミルの頭を撫でる。
フェミルは不機嫌そうな表情を浮かべていたが嫌がる様子は見せない。
「……よく言うぜ……探しもせず一つの街に引きこもってたくせに……」
そう言うフェミルの目には涙が滲んでいた。
「……ごめんね……本当は探したかった……でも……怖かったの……外に出るのが……ずっと……」
「ケッ……根性がねぇな……私なんか色んな街を探し回ってたんだぜ? 」
誇らしげに言うフェミルに笑みを浮かべる。
「あなた本当に変わらない……恐れ知らずなところがね……」
「ふん……まっ、 シュラスの旦那から話を聞いたが……それなりに根性が付いたみてぇだな……」
「ははは……いやぁ、 こんな根性なしで……姉として不甲斐ない」
二人の話は本当に何気ない事ばかりだった……ただ再会を喜ぶ、 姉妹として……
そこから二人は盛り上がり、 お互いの今までの冒険話などもし、 笑いあった。
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「ハハハッ! ほんっとにアホなのも変わんねぇなぁ! しょっちゅう旦那に怒られてるのも納得だわ」
「むぅ……やっぱりシュラスさん、 私に厳しいよ! フェミルには甘いのにズルいよ! 」
しばらくそんな話をしていると……
「ある程度話は済んだか? 阿保姉妹……」
「ここにいたんだ! 」
「おっ旦那! エル姉さん! 」
「随分話し込んじゃったみたいですね……」
ウェヴィーラとの話を終えたエルとシュラスがやって来た。
するとシュラスはルーミの顔を見るなりある質問をしてきた。
「……ルーミ、 簡潔に聞こう……お前は奴の何を見た……」
「……」
……やっぱりルーミちゃん……ティルディールに乗っ取られている間にあの人の心を見たんだね……
エルは事情を把握していた。
ルーミはこの数週間の間、 ティルディールに乗っ取られていた。
その間、 彼女はティルディールの心と一体化していた事により必然的に彼の心の中を見ることが出来たのだ。
そしてルーミは静かに答えた……魔王、 ティルディールの真意を……
「……とても……悲しい感情でした……あの人は世界に絶望し切っていました……あの人はしてもいない人殺しの罪を着せられたのに……誰も味方してくれなかった……あの人はずっと嘆いていました……『この世界から消えるべきは『罪』ではない……それを偽り弱者に突き付ける『人間(悪魔)』だ……』……って……」
それを聞いたシュラスはやっぱりかと言わんばかりにため息をついた。
「やはり変わらんな……奴は……」
「シュラスさん……魔王ティルディールってどんな魔王なんですか……? 」
エルが聞くとシュラスは席に座り、 話し始めた。
「……奴は魔神戦争の時代、 勇者と敵対していた三人の魔王の一人だ……魔王はそれぞれ『復讐の魔王』『強奪の魔王』『大罪の魔王』と呼ばれていて、 ティルディールはその内の『大罪の魔王』……正しき罪を許し……偽りの罪を許さない魔王だ……偽りの罪によって処刑されかけた奴は、 己に濡れ衣を着せた『人間』に絶望した……それで奴は魔王となった……」
……魔王になるきっかけは……世界への『絶望』……その思いが強ければ強い程力が増す……それが魔王の力と言われているけど……ティルディールは人間が創り出す偽りの罪に絶望して魔王になったのか……
「奴の狙いはこの世界を作り直す事だ……偽りの罪で大切なモノを奪われることの無い世界に……それはすなわち人間を一人残らず消し去る事……だが、 今の奴にはその力は無い……」
「だから魔神を再び開放して……その力を得ようと……」
「そういう事だ……」
これでティルディールの目的は分かった……となれば次の目的地を決めないと……
するとシュラスはテーブルにラメリスから貰った地図を広げた。
「……目的地はもう決まっている……アルドーラの東に広がる砂漠、 『デイダール砂漠』だ」
「えぇ~、 旦那ぁ……またあの大陸に戻るのかよぉ……また相当掛かるぜ? 」
話を聞いていたフェミルは文句を言う。
「文句ならティルディールに言え……」
「ちぇっ、 しゃーねーなぁ! それじゃあその魔王に文句を言いにまた冒険を始めるか! 」
そう言いながらフェミルは意気込んだ様子で席を立つ。
こうして一同は再びアルドーラ大陸へ戻る事になった。
……そう言えば天星騎士団の皆さん、 見かけなかったなぁ……ジーラさんもあの夜以来姿を現さないし、 何をしているんだろう……
…………
その頃、 天星騎士団の部隊が宿泊する宿にて……
ジーラ、 ミュリア、 キューサスの三人は一室に集まり話をしていた。
「どうやら俺らの出番は無かったみてぇだな……」
「紅月の夜がいるならば当然の事でしょう……それより……」
「彼らの向かう先はアルドーラ砂漠……であったか? 我らも向かうべきであろうな」
トルムティアの一件以来、 キューサス達は一層エル達の行動を監視するようになり、 警戒を強めていた。
そしてジーラはテーブルに乗っている果実を手に取り、 貪りながら話し始めた。
「いい加減あいつ等の好きにさせたらどうなんだ? シュラスがいればあの子娘も安全だろうしよ」
そう言うジーラにミュリアはため息をつく。
「そうも行きませんよ……陛下からあの方達を監視せよと命令が出されているのですから……」
「儂とて王の命を背く訳には行かぬからなぁ……」
するとジーラは呆れるように嘲笑う。
「何故テメェらは自分よりも弱き者に従う? 従わせるのは強者であるのは当然のはずだろうが」
「私達が生活出来ているのは貴方が弱者と呼んでいる陛下が国を指導してくれているからなのです……陛下がいなければ国は成り立たない、 故に我々天星騎士団が守り、 国そのものと呼べる陛下に全てを捧げているのです……」
「かぁ~人間ってのは本当によく分からない生き物だな! そんなんだから弱い種族と呼ばれっちまうんだよ」
そう言いながらジーラは芯だけが残った果実を口の中に放り込み、 ボリボリと咀嚼音を立てながら席を立った。
「今後どうするかはテメェらに任せるぜ、 ただあいつ等の監視はもうやらねぇからな……」
そう言い残すとジーラは部屋から出て行ってしまった。
ジーラがいなくなった瞬間、 キューサスとミュリアは心なしか安心したような表情を浮かべた。
「はぁ……相変わらずの覇気ですね……」
「うむ……未だにジーラ殿の覇気には慣れぬな……」
二人はジーラと過ごしている内に彼の脅威的な力と覇気を恐れるようになっていた。
実は彼らがジーラと出会ったばかりの頃、 キューサスはジーラの戦闘能力を調べるために立ち合いを行ったのだが、 結果はキューサスの惨敗……彼の持つ大剣もあと一歩で折られるところだったという……
「彼の力は儂の力を遥かに上回る……力だけで言えば史上最強だろう……だがそんな力を持つ種族なんて魔神戦争で滅んだ鬼人族くらいだ……」
「鬼人族の混血種とかでしょうか……」
「いや……あの怪力は鬼人族どころのモノではない……もっと上の領域……『神』の類かもしれんな……」
「そんな事……あり得るのでしょうか? 」
「君も見ただろう、 訓練場で彼が何をしたのかを……」
数週間前……
カルスターラの王城にある訓練所にてジーラとキューサスはジーラの戦闘能力の調査の為、 立ち合いを行おうとしていた。
当時、 審判としてミュリアも同行していた。
「……なぁ、 本当にやる気か? 死んでも知らねぇぜ? 」
面倒くさそうな様子のジーラ。
それに対してキューサスは笑う。
「ハハハッ! 気にせず思い切り叩き込め! 儂はこう見えて頑丈なんでな! 」
「……それでは、 両者構え! 」
ミュリアの合図と共にキューサスは大剣を構える。
ジーラは構えず棒立ちだった。
「……始め! 」
次の瞬間、 ジーラはまるで瞬間移動でもしたかのようにキューサスの目の前に現れ、 無造作に拳を放った。
キューサスは咄嗟に大剣で防御し、 攻撃を防ぐも後方に突き飛ばされて壁に激突してしまった。
その威力は壁に大きなクレーターが出来る程。
それを見たミュリアは唖然とした。
「……だぁから言ったろうが、 本当にやるのかって」
「……これは驚いた、 まさかここまでとは……」
キューサスは体制を立て直し、 ジーラの前まで戻った。
「次は本気でやらねばな……君を侮っていた……」
そう言うとキューサスは構え、 ジーラの周囲を駆け回った。
ジーラは動かずただ棒立ちするのみ、 仕舞いにはあくびをする始末。
すると次の瞬間……
『ゴッ! ! ! ! 』
地面に拳を叩きつける一瞬の音と共に辺りに凄まじい衝撃波が発生し、 訓練所が全て崩壊してしまった。
その凄まじ過ぎる衝撃で近くにいたキューサスとミュリアだけでなく、 訓練所付近にいた兵士も吹き飛ばされ、 辺りの音が一瞬聞こえなくなったという。
衝撃波と耳鳴りが収まり、 ミュリアは辺りを確認すると……
「……な……なに……これ……? 」
「はぁぁぁぁぁぁ……」
地形をも破壊され、 原型を留めていない訓練所……その中心に佇むジーラの姿があった。
ジーラは地面に拳を当てた姿勢で口から蒸気を吐いていた。
キューサスはというと……
「……っ……てて……何が起こった……? 」
瓦礫の中から這い出てきた。
幸い怪我はしておらず、 鎧が半壊する程度だった。
「……小突く程度でこの有様か……やっぱ六でもねぇ力だ……」
そう言うとジーラは指を鳴らす。
すると完全に崩壊した地形は全て元通りになった。
「立ち合いは終わりだ、 そんじゃあな……」
そしてジーラは訓練所を立ち去った。
「……」
「……」
その場に残された二人はただ茫然と立ち尽くす事しか出来なかった……
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「……彼の力を直に受けて分かった……あれは……」
「この世界のモノではない……」
そう言いながらキューサスは葉巻を取り出し、 吸い始める。
ジーラの力は一体何なのか……その謎は後に語られる事となる……
続く……




