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今後の事について。

ゼウスが彼らに言った約束。

それはとても単純だ。


『もし異世界に行くのなら、影と、奴らと戦える、いや、倒せる力をあげよう』


という約束。彼らが最も欲するもの。生きるために絶対に必要なものである。

力が無ければ、異世界では生き抜く事は難しくなる。異世界は当然の様に影の様な化け物が歩き回る。

地球の様に犯罪者を完全に隔離することが出来ているとも限らない。国の闇に触れれば、そこには犯罪者が跳梁跋扈するだろう。

異世界は優しくはない。それに、待ってくれない。そんな世界に最も効果的なものは矢張り力だ。


ただし、異世界に行くのならだが。


だが、それもしょうがない事だろう。


影は自分の正体を晒す覚悟などとっくに出来ている。それはつまり、正体がばれてもその全てを殺して証拠隠滅させる事が出来る実力があるという自信があるからだ。

間違いなく人が大勢いても襲ってくるだろう。

たとえ高校にいたとしても、影なら襲う。

もし教室の出入り口二つから同時に入れば、生徒の逃げ場は無くなる。そして、一瞬で生徒全員の首を跳ね飛ばす事が影には可能だ。悲鳴一つ上がらない。

それに影は音を立てずに移動する事も可能だ。これで教室まで誰にも気付かれない。もし誰かに出会っても一瞬で殺せば問題ない。

そしてもし、ゼウスから力、つまり魔法を与えられていても…自分の事を人間だと思っているクラスの生徒全員の前で、一瞬の躊躇も無く魔法を発動できるだろうか。

もし一瞬でも躊躇えば……死ぬ。

そして最も辛い事、それは、彼らを殺すまで永遠に襲ってくるのだ。たとえ、学校で一回、影の襲撃を防げても次の日には前回の倍の数の影の分身が来るかも知れない。いつかは、絶対に殺されるのだ。


地球に住むことにデメリットはあるが、メリットは何も無いのだ。


もし地球に残れば、自分以外の人を影は必ず傷付けるだろう。自分が地球に存在することで数百から数千の被害や死者を出すことになる。


もう、断れない。そう、嫌でも理解してしまう。

だから、


「異世界に……連れて行ってくれ……」


必然的にこの様になる。

蓮司はそう言った。あとの二人も同意見だと言うように頷いている。


これで、彼ら三人の異世界行きが決まった。無理矢理ではあるが。


◇◆◇


彼ら三人の悩みや疑問と、その答えを一通り表わす事にしよう。


・自分達が異世界にいったら、この世界ではどのような影響があるのか。行方不明扱いになるのか。

○異世界に行く際は、彼ら三人が存在していたという痕跡(記憶も)を一切無くす。そして地球という一つの時間軸の中に矛盾が起きないようにするため、代わりの存在にんぎょうも出現させる。ただ、今までの生活を真似するだけの、模倣しているだけの、存在を出現させる。


・異世界に行けば死ぬ事は無いのか?

○自分の努力次第なのでどうなるかは彼ら次第。だが、彼らには魔法の才能がある様なので魔法を正しく使いこなせるのなら死ぬ事はほとんどないだろう。実際、先程影が殺そうとした相手は全員魔法の才能がある者ばかりだからだ。

しかし、魔法の才能があるからといって格上の相手と戦おうとすれば、殺されるだろう。


・地球に戻る事は可能か?

○可能である。


・異世界で私達が絶対にしなければいけない事はあるのか?例えば地球で言う学校の様な。

○無い。異世界にいけば完全な自由だ。自分達で旅をする事も可能だ。だが、自由だとは言ったが、情報を集めなくては暮らす事もままならないだろう。自由だから遊びまくろうなどという考えは、馬鹿の考えだ。そんな人間が生きていけるほど甘くはない。そのことを頭に入れておけ。


・異世界での「死」は、地球の「死」と同じか?

○同じである。だが、死者蘇生は可能である。

(死者蘇生をするためには、誰か一人の命を生贄にする事で蘇生出来る。ただし例外はある。代償の無い死者蘇生をする者もいる)


などである。


異世界がどの様になっているかは、実際に異世界に行ってから説明するとのこと。


◇◆◇


彼らの異世界についての疑問を解決した所で、つい先程行われた戦闘についての話を、ゼウスは始めた。


気絶した順番というと、早い方から、蓮司、揚羽、白百合の順である。つまり、蓮司が気絶した所から話が始まった。


『蓮司。貴様が気絶した後の標的は白百合になった。

白百合が殺される寸前に大和が…

……となり… ……ということがあり…』


説明終了マデ 残り 五六分。

ゼウスの説明はまだまだ続く。


が、彼ら三人は五六分間、一度も気を抜く事はなかった。


◇◆◇


ゼウスの説明が始まってから、五三分後。

そろそろブラフマーとシヴァが限界だった。らしい。


「ゼウスさんの説明早く終わらないかなー」


ブラフマーが独り言を言う。そしてその独り言が聞こえたシヴァが言葉を返す。


「同意見ー。ゼウスさんの説明が終わらないと大和と異世界に行けないよー」


ブラフマーとシヴァは先程まで走り回ったり、時々大和の背中を登ったりしていたがそろそろ飽きが来たらしい。何というか、見た目と言動にあまり違和感がない事に驚いた。


……ん?


「ん?シヴァ、今俺が異世界に行く事になってなかったか?」

「え?あ、うん。確かにそう言ったけど…どしたの?」

「いや、俺は一度も異世界に行くって言ってないからさ。なんで俺が異世界に行くって言う結論を出した事を知っているのか不思議に思って」


そう。大和は異世界に行くと言う結論を口にしていないのだ。なのにシヴァはその事を知っている。


ちなみに大和はもう異世界に行く、と、決めている。

ブラフマーが説明を始めた。


「あ、そっか、知らないのか。実はね、私達『神』は契約した人が心の中で発した言葉を聞く事ができる、っていうのは知ってるみたいだけどね、実はもう一つ聞こえるものがあるんだ!

それはね、『契約者が強く思った事』だよ!さっき大和は『異世界に行きたいか』って聞かれた時、心の中で『行きたい』って心の底から思ったの。その行きたいっていう〈気持ち〉が〈言葉〉となって私達に聞こえたの!おーけー?」

「おーけー。分かりやすい説明ありがとう。けど何が違うんだ?」

「思いが強ければはっきりと聞こえて、ただ心の中で話しただけならノイズみたいなののせいで上手く聞き取れないの」

「ふぅん」


と言いながらブラフマーの頭を撫でてやった。目を瞑っている所を見ると、猫みたいだなと思った。顎の下をさすってみたいと思ったのはブラフマーに聞こえただろうか。

そうだ、と思い付いたことをブラフマーに聞いてみる


「んー、その、俺の心の声を聞こえないようにすることは可能?」

「うん。可能だよ?あ…気分…悪くしちゃったの?

…それは…ごめんね…」


ズキズキ。


(痛い。心が痛い)


ブラフマーとシヴァが目をうるうるさせて見てくる。あかん。これはあかん。ロリコンになってしまう?!


流石にそれはないが、破壊力が強過ぎた。


「あぁ、いや、気分悪くした訳じゃないんだけどさ、もし俺が心の中で放った軽口で二人、いや三人を傷付けたら嫌だなって思ってさ! 心の中でって事は思っても口に出さない様にとか思ってる事が聞こえちゃうかもだろ? だからさ、なんつーか…」

「「うぅぅ…ありがとうっ!大和っ!」」


ぽふっ


抱きついてきた。それも泣きながら。

俺が嫌な思いをしたって思っただけで泣いてくれた。

初めてだった。自分にこんなに優しくしてくれる人に出会ったのはこれで……二回目だ。嬉しかった。

と、その時、


『…ぁり…がと…』


と一言だけ聞こえた。声を聞いて直感ですぐ分かった。この声は、ヴィシュヌのものだと。

いつか実際にヴィシュヌを見てみたいな、と、思った。そして頭を撫でてやりたいとも思った。


(いつかもっと気軽に話をしたいな。ヴィシュヌ)


と。ヴィシュヌに向けて言ってみた。無論、心の中でだが。だが、今ならまだ聞こえているはずだ。


『…ぇ…』


プツッ……


「はい、今私達の心の声のリンクを切ったよ」

「…ぁ、 あ、あぁ、ありがとな…」


今最後に聞こえたヴィシュヌの驚きの様なものの混じった声を聞いて不思議に思った。何を思ったのかなって。

これは実際にヴィシュヌに会った時に聞こうと大和は心に決めた。


「何か、俺の我が儘みたいなの真剣に聞いてくれてありがとな」

「「どういたしまして!」」


この時、大和は数ヶ月ぶりに一切の曇りのない笑顔になることが出来た。



五六分後。


『…という感じだな。』


ゼウスの説明が終わった。三人とも驚愕している顔だったが、白百合は他の二人よりも驚愕の色が濃かった様に見えた。

白百合を除く二人はただ純粋に凄いと思っていた。

が、白百合は対抗心に燃えていた。


(あいつが…凄い?いや、そんな事認めない…絶対、私の方が凄いんだから…)


白百合は大和に負けない。負けたくない。そう心に誓った。そしていつか私が……

すぐ大和を睨んでやろうと、大和のいる方へ顔を向けると、そこには…


幼女に抱きつかれた大和がいた。


………………。


(大丈夫、まだ私の方が上だわ!)


それが一体何を比べたのか、はよく分からない。が、何かでは勝っていた……のだろう。


ふと、大和をもう一度見ると、笑顔を見せていた。


白百合の心のどこかでは変な感じがした。それが何なのかは、分からなかった。

だから、考えても無駄かなと思い、考えるのを止めた。答えが出ない気がしたから。


そして、いま二つ目の説明が始まった。

殺された三人についてだ。


だが、蓮司はゼウスに向かってこう言った。


「あのさ、殺された三人をどうするかの話はしなくていいよ。死んでしまった人を蘇らせられるかなんて事は考えちゃいけないように感じるんだ。だから、この話は無しでいいんじゃないか?」


女子二人はその言葉を聞いて、確かにそうだと思った。


揚羽が蓮司の言葉の続きを口にする。


「確かに、もうその話はいいかな。三人にまた会いたいとは思ってるけど、もし私達の都合なんかで蘇らせて、それで三人が傷付いたりしたら…って思うの。

辛い事だけど、死んでしまったのなら、死んだんだなって割り切らなくちゃ駄目だと思う。

もしこの事をずっと考えてたら、異世界で私達が死んでしまうかもしれないから」


白百合も自分の意見を言う。


「正直、この考えって、結構酷いことのように思うけどね、私はこう思うの。

『殺されたのなら、殺された本人が悪い』って。

だから、三人が殺されたのは全部自分のせい。

だから、蘇らせる必要なんて無い。

私はそう、考えてる。だって、自分の未来を決めていいのは、自分だけだもん」



この答えを聞いて、ゼウスは確信した。やはり彼らには魔法の才能があると。



確信した。異世界でも、戦えるだろう、と。



彼らは丁度、秀才あたりだろうか。『死』に対する心構えは、まぁまぁだができている。が、まだ『恐怖』には慣れていない。


だが、それはつまり、『恐怖』に慣れてしまえば、彼らは【英雄】の域まで行けるだろう。


だが、一人だけずば抜けて強い心を持っている。それは簡単。大和である。ゼウスはその名をただ、反復する。


大和……か。


彼は、もう今の時点で、【英雄】の域にいるだろう。ただ、戦闘経験が少ない事を除けば、だが。

今の大和にすぐ実戦をしろというのは、流石の大和でも無理だろう。だが、自分に死が絶対に来ないと確信できる戦いでなら最高のパフォーマンスを発揮することだろう。


もし、彼が修行を怠らないのなら……


いつか彼は……化ける。


【神】の域に到達するだろう。

史上二人目の【神域到達者】となるだろう。


私が以前出会った、あの男の様な……最強 や 無敵 という言葉の似合う、あの男のような……


…………いや、期待しすぎだろうか。

我は彼に、期待しすぎだろうか?


答えは、ない。それは自分で見極めるものだから。


(楽しみだ。早く異世界へ連れて行きたい! 今すぐ!)


◇◆◇


ゼウスは彼ら三人に向けて、言った。


『ははは!合格だ! ん?なんだ、もっと喜べ!ははは!』

「「「……はい?」」」


この反応は、間違ってなどいない。


『我はもし貴様らが死んだ者を生き返らせてなどと言ったのであれば、異世界には連れて行かなかった。だが、誰にもそうはしない。つまり合格という事だ!』


三人は合格の意味を理解し、大いに喜……びはしなかった。ただ、自分の所為で人を殺してしまうことはないのだと安心はした。


大和の武勇伝(?)を聞いてから、三人は変わった。恐らくは。


次の話で、やっと異世界行きます。

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