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UNGIFTED-アンギフテッド-無能と《追放》された《欠陥魔術師》は努力と工夫で異世界の《大英雄》へと成り上がる  作者: モーリー
第一巻 第一章:ルーク

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第9話:欠陥魔術士、命を救われる

なんだ……


体が動かない……


だれだ……


暗闇の中。


微かに声が聞こえてきた。


「……ぬな!死ぬんじゃねえ!」


「絶対に死なせません!」


ガンダイと慌てた女の声。


何を慌ててるんだ?


死ぬ?誰が?


「ゲホゲホッ……お、落ち着いてください!マ、マナポーションがあればください!」


女の子が咳込みながらそう言うと、ガンダイは「わ、わかった!」と言い、ドタバタと奥へと走って行った。


マナポーションは生命エネルギーを回復するための物……


そうだ。


俺は急に倒れたんだ。


おそらく、今俺は女の子に回復魔術をかけてもらっている最中なのだろう。


だめだ。

まだ身体を動かすことはできない。


でもなんとか瞼(まぶた)を動かすことくらいはできそうだ。


力を込めて重い瞼をこじ開ける。


微かに見えたのは、透き通るような金色の髪と深い海のような青眼の女の子。


徐々に視界が広がり、身には白を基調としたローブを纏い、手には装飾が施された魔杖(スタッフ)を持っているのが見えてきた。


「あ……がと」


なんとかお礼の声を出せた。


すると女の子は慌てた様子で「い、意識を取り戻しました!」と声をあげた。


「無事か!?無事なのか!?」


女の子の言葉を聞き、慌てて戻ってきたガンダイ。


視線だけを向けると、ガンダイの手には半透明のピンク色の液体の入った瓶が握られていた。


マナポーションだ。


これを飲むということは、大量のマナを消費しているという事。


おそらく女の子は何度も回復魔術を唱えてくれたのだろう。


「なに……が……おき……た?」


まだ上体を起こしたり、顔をガンダイに向けることはできない。


でもなんとか言葉を絞り出せた。


すると女の子が慌てた様子で言う。


「しゃべらないで!まだ浄化しきれていません!」


浄化?


俺は毒か麻痺でもくらってるのか?


朝からまだ何も食べていない。


毒なんて……


俺がそう思っていると、女の子はガンダイからマナポーションの入った小瓶を受け取り、一気に飲み干すとマナを練り始めた。


そして全身に迸るほどのマナを纏い、俺の右肩に手を添える。


すると、女の子の手が優しく暖かな光を放ち始めた。


凄い集中力と洗練された魔術だ。


俺なんかと比べ物にならない。


きっとローウェンに匹敵するくらいの、才能に恵まれし者(ギフテッド)なんだろうな。


そんなことを考えている間に、徐々に身体の感覚が戻ってきた。


「ありがと……だいぶ楽に……なってきたよ」


「よかった……でももう少しそのままでいてください」


女の子はそう言い、魔術を発動し続けた。


右肩……


なんでそんなところに……


そう思った瞬間。


俺の脳裏には朝にクソ親父とのやりとりがよぎった。


見慣れない指輪を付けてた!


きっと毒か何かを注入するためのアイテムだったんだ!



「クソ親父め……」

「マナを落ち着かせてください!この毒はマナに反応して毒気を増します!」


俺のマナが苛立ちに呼応して乱れるのを見ると、女の子はすぐに止めた。


そして、俺の身体に入ってるのがレッドスコーピオンというモンスターの猛毒であることを教えてくれた。


「この毒の怖いところは、普通に生活している分には気づかない所です」


女の子によれば、この毒は生命エネルギーの高ぶりに反応して、一気に体に広がり、強烈なめまいを引き起こして、そのまま昏睡状態にしてしまうそうだ。


どおりで……


ここに来るまでなんともなかったのに、マナを練って雷を拳に纏わせた直後にぶっ倒れるわけだ。


「まさか……お前何かされたのか?」


「あ、後にしてください!もう少しで浄化できますから!」


ガンダイを制止し、女の子は魔術をかけ続けてくれた。



二時間後。


「ありがとう。だいぶ良くなったよ。俺はルーク。ウィザードだ」


「私はセレナと言います。お気づきかと思いますがプリーストです」


俺が杖のエンブレムを見せながら言うと、セレナは太陽のエンブレムを見せながら答えてくれた。


プリーストはウィザードと同じく、細身で小柄。


この子は特に小柄な方かもしれないな。


プリーストのスキルは支援魔術。


支援魔術とは、傷や状態異常を治療する回復魔術や結界を生み出して攻撃を防ぐ防御魔術の総称だ。


各魔術を使用するときに、暖かな光を放つため光魔術とも呼ばれている。


人口比率はかなり少ないため、冒険者にしても魔術団や騎士団にしても、プリーストの存在は最重要視されている。


それにしても……


さっきまでは必死の表情をしていたから気づかなかったけど……


凄く可愛い。


幼さと清純さを併せ持つ可愛らしい顔に、俺は思わず見惚れてしまった。


「私の顔に何かついてますか?」


「い、いいいいや!なんでもない!そ、そそ、それにしてもプリーストがなんで鍛冶屋(こんなところ)に?」


視線に気づかれ、俺は慌てて話をそらした。


普通のウィザードやプリーストは鍛冶屋ではなく、魔術道具屋(マジックショップ)に行くからだ。


俺の言葉に、ガンダイが言う。


「儂が呼んできたんだ。感謝しろよ」


「ガンダイが?」


俺が尋ねると、セレナが「宿屋で私を見つけて、ここに連れてきてくれたんです」と教えてくれた。


聞けば、俺が倒れたため、ガンダイは教会に助けを求めに行った。


教会には必ず一人プリーストがいるが、そいつはクソ親父の息がかかっている人物。


他の患者の治療中だと言って、対応を拒否。


ガンダイは、宿屋なら行商人や冒険者など様々な職業が集まると思い、宿屋へと走ったそうだ。


「夜なら酒場に行ったが、こんな朝から酒場は開いてねぇからな」


「そうだったのか。ありがとう。それでセレナはどうしてこんな町に?」


ガンダイの言葉を聞き、俺はお礼を言ってからセレナに尋ねた。


「この町の職業訓練所(アカデミー)で、凄いウィザードさんが卒業試験で模擬戦をすると聞いて、イースティンから来ました」


凄いウィザードってローウェンのことか。


って、イースティン?

馬車で二日はかかるぞ。


俺はそんなことを考えてから気が付いた。


「そうだ!その卒業試験は俺も受けるんだ!」


卒業試験は午前中に生産職。


戦闘職は午後から。


まだ何とか間に合いそうだな。


「ガンダイ!セレナ!ありがとう!後でお礼をするよ!」


俺はそう言い残し、急いで職業訓練所(アカデミー)へと走った。


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