第53話:魔造屋メイク②
見終えた後、カーニャさんが言う。
「よっしゃ!そんじゃこっちに来い!」
俺たちは顔を見合わせてから後をついていく。
案内されたのは広い部屋。
整地された地面。
部屋の端には丸太が並べられている。
まるで職業訓練所の訓練場だ。
「ここは?」
「まずは動きを見せてもらう。それに合わせた装備を作るのが一番いいからな」
カーニャさんはそう言ってから丸太を指さした。
「あれに自由に攻撃してみてくれ」
「もちろん、思いっきりね」
ヘカーテさんも、眉毛を動かしながら続く。
「わかりました。まずは俺から」
俺は氷の礫と石の礫を順に生み出し投擲。
その後に丸太へと距離を詰めて、雷を纏わせた拳を打ち込んだ。
「俺は魔力は人並みにあるんですが、制御能力が著しく低いので、魔術を手から離せないんです」
呆れられる。
がっかりされる。
馬鹿にされる。
いくつかの反応を想像しながら説明した。
しかし、二人の反応はどれとも異なる。
「面白い!面白いぞ!手袋とナックルの間の物を用意しよう!」
「イイわ!イイわよぉ!動きやすくて丈夫な衣装を用意してあげちゃうわ!」
凄く楽しそうなのはいいんだけど、喜んでいいのか困る反応だな。
俺がそう思っていると、二人は興奮気味に言う。
「よっしゃ!次だ!次!」
「さぁ!ドーンドンいっちゃってっ!」
「じゃ、じゃあ、あたしがいこうか」
戸惑いながらリズはそう言って、全身と石の双剣にマナを圧縮。
高速で丸太に近づき、一瞬にして連撃を打ち込んでみせた。
するとカーニャさんとヘカーテンさんは対照的な反応を見せる。
「こいつはすげぇ!丈夫な双剣をこさえねぇとな!軽量装備も任せとけ!」
「あら残念。ワタクシの出る幕はなさそうねぇ」
その様子を見て、リズも俺と同じように、喜んでいいのか困った表情だ。
「つ、次は僕がやってみるね」
フリードはそう言って、弓を構え、弓と矢にマナを込める。
そして部屋の壁の方向に矢を放ち、大きく曲げて丸太へと命中させた。
「おいおいおい!とんでもねぇな!よっしゃまかせとけ!」
「この子のも役立てないわねぇ。せめてお洋服だけでも作ってあげるわ」
また反応が分かれる。
まぁ仕方がない。
スミスとアーティフィサーは対照的な職業だからな。
反応が重なる方が珍しい。
「わ、私はどうすれば?」
順番が回ってきたセレナが尋ねると、二人は顔を見合わせた。
「プリーストだからな。オレは役に立てん」
「プリーストちゃんは見なくても大丈夫よ。うんと可愛く仕立ててあげちゃうわ」
そう言われ、セレナは「え、あ、はい……よろしくお願いします」と答えた。
見せ場がなかったのが残念だったのだろう。
「さて、あらかた想像はできてるんだが、装備への要望はあるか?」
「なぁんでも言ってごらんなさい」
そう言われ、代表して俺が言う。
「リズの双剣は、サイズは今と同じか少し小さめでお願いします。あとは、とにかく頑丈で切れ味の良い物をお願いします」
「材質が石から鉄になると重くなることを見越してるとは、いい判断だ。任せときな」
その言葉を聞き、安心して話を次に進める。
「フリードはかなり筋力が高いです。強力で正確無比な一撃が持ち味なので、背丈ほどの大弓と矢にしようと思います。可能ですか?」
「あらあらあら!じゃあワタクシの出番じゃないの!強靭で絶対切れない弦を用意してあげちゃうわ!」
「ふむ。どの程度の大きさの弓と矢にするかは、こちらで話し合って最適な物にしておくよ」
カーニャさんの言葉を聞き、フリードが言う。
「矢は特注サイズになりますか?グランダルム以外の町でも手に入れられるものがいいんですが」
「なるほどな。ならば矢は既製品の中で一番デカい規格に合わせておくとしよう」
カーニャさんの言葉を聞き、フリードは安堵のため息をついてからお礼を言った。
「ヘカーテンさん。セレナの杖なんですが、マナの消費を抑える杖って作れますか?」
「え、ええ。そりゃまぁ。作れるっちゃ作れるけど……あなた物好きね」
驚いた表情でヘカーテンさんがそう答えると、カーニャさんは「たしか、支援魔術の効果が下がるんじゃなかったか?」と続く。
「ええ。そうよ。効果は下がるのに、たいしてマナの節約にならないから誰も望まないわよ」
その言葉を聞き、俺は自慢げに言う。
「セレナの支援魔術はレッドスコーピオンの猛毒すら治すほどに強力なんです。でもその分、マナの消費が激しくて、スキルを多用できないんですよ」
「レ、レッドスコーピオンの猛毒を治せるのか!?」
「そ、そんな凄腕プリーストちゃん見たことないわよ!」
二人の反応を見て、さっき見せ場がなくて落ち込んでいたセレナに笑顔が戻った。
「す、少しでも使用回数が増えると助かります。あと、私は筋力も体力もないので、軽くて丈夫な物にしていただけると嬉しいです」
「うふっ……うふふふふっ!おほほほほっ!あなた最高ね!やる気が漲ってきたわよぉぉ!」
セレナの言葉に、へカーテンさんは高らかに答えた。
なんとも個性的な人だが、ゴウゼンが紹介するくらいだから腕は確かなんだろうな。
そ、そういう事か!
この個性の塊を説明できなくて、ゴウゼンは説明を省いたんだ!
点と点が繋がったような感覚に見舞われた。
「あ、えっと……以上です。よろしくお願いします」
俺がそう言うと、二人は呆れながら大きなため息をついた。
え?何?どうしたの?




