第52話:魔造屋メイク①
冒険者ギルドに到着。
ゴウゼンの職務室で、料理が並べられたテーブルを囲む。
「すげぇ豪華だな」
「それに凄い量ですね」
俺とセレナがそう言うと、リズは唾を飲み、フリードは腹を鳴らす。
いつも食べる酒場の最安値の食事とは、質も量も桁違いだ。
「ここで悪いな。食堂だと人目に付く。あれこれ言う奴が出てくると面倒だからな」
ゴウゼンはそう言ってから「さ、喰え」と続けた。
「「「「い、いっただきまーす!」」」」
俺たちは、数日ぶりに食事にありついたかのように、料理に手を伸ばす。
お上品なのはセレナだけだ。
「食いながらでいい、聞いてくれ」
ゴウゼンはそう言いながら、グランダルムの簡易地図を見せて来た。
地図には星マークの目印が二つ。
「ここがギルド。んで、こっちが俺の行きつけの鍛冶屋だ……聞けって言ってんだ!」
「んがっ!」
食べることを優先しすぎて怒られてしまった。
俺たちが食事の手を止めると、ゴウゼンは「全く……食うか聞くかしかできねぇのか」とボヤいてから続ける。
「ここに行って俺の名前を出せ。話は通してある。俺の知る限り、グランダルムで一番腕がいいスミスだ」
「わかった。ありがとう。素材は?」
「もう届いてる頃だ」
俺が尋ねると、ゴウゼンはそう答えてからセレナを見た。
「それとそっちのプリーストの嬢ちゃんだが……」
「わ、私ですか?」
「ああ。まぁいい。行けば分かるか」
「ウィザードやプリーストの装備も扱えるってことか?」
ゴウゼンが説明を省こうとしたため、俺が尋ねると、ゴウゼンは「まぁそんなところだ」と答えた。
普通、ファイターやウォーリアーの装備を作る鍛冶屋と、ウィザードやプリーストの装備を作る魔術道具屋は別々なんだけどな。
まぁゴウゼンがそう言うなら、きっと行けば分かるんだろう。
「わかった。とにかく行ってみるよ」
「ああ。装備に見合う実力を付けろ。俺から言えるのはそれだけだ」
ゴウゼンが真剣な表情で言うため、何か意図があるのかと思いながら「わ、わかった」と返事をした。
食事を終え、俺たちは歩いて星の記された場所へとやってきた。
「こ、ここだよな?」
「あ、ああ。そのはずだ」
俺が確認すると、リズがそう答え、セレナは「思ってたよりも凄く大きなお店ですね」と続く。
セレナが驚くのも無理はない。
ガンダイの鍛冶屋は一般的な民家よりも少し広いくらいの一戸建て。
それに対して、紹介された場所は職業訓練所に匹敵するくらいの大きさだ。
中から微かに金属音がする。
ここで間違いないだろう。
扉はかなり大きく、その上には『魔造屋メイク』と書かれており、傍には様々なエンブレムと同じ紋様の看板が出されている。
おそらく製造可能な装備を表しているのだろう。
「き、緊張するね」
「ああ。とにかくは入ってみよう」
フリードの言葉に、俺はそう答えてから扉を開けた。
「こ、こんにちはぁ」
俺がそう言いながら中に入ると、目の前には背が低く太い腕の男性がいた。
間違いなくスミスだ。
「あん?用件は?」
「俺たちはアンギフテッドという冒険者パーティです。ギルドマスター、ゴウゼンに紹介されて来ました」
俺がそう答えると、目を見開いてから奥へと走って行った。
中は左右に分かれており、右側には剣や盾、鎧や籠手などが並んでいる。
反対側には杖やローブがあることから、鍛冶屋と魔術道具屋が併設されていることが分かった。
行けば分かるってこういう事か。
待つこと数分。
「おう!お前らがアンギフテッドか!?」
声を掛けられ、振り向くとそこには、黒い髪と瞳の、半裸の女性がいた。
上半身をさらけ出し、胸にはさらしを巻いている。
背が低く、腕が太いことからスミスであることはわかるが、目のやり場に困るな。
すると静かに、しかし強さを感じる口調でセレナが言う。
「ルークさん?どうかされました?」
「え?あ、いや、なんでもない!なんでもないさ!ゴ、ゴゴ、ゴウゼンさんの紹介で来ました!」
俺は精一杯、取り繕いながら言葉を絞り出した。
「ああ。聞いている。オレがカーニャ。見ての通りスミスだ。そんでもって、そっちが」
カーニャさんはそう言って、通路の反対側を見た。
視線の先にいたのは、紫色の髪と瞳の男性。
ド派手に化粧をしており、まつ毛が飛び出し、唇もプルンプルンになっている。
服装も、体型がくっきりと分かる小さなサイズで、へそが見えている。
個性に意識を奪われていると、男性は魔方陣のエンブレムを見せながら言う。
「ワタクシがアーティフィサーのへカーテンよ。どうぞよろしく」
アーティフィサーは魔術道具を作る人のこと。
つまり、この人ならセレナの杖やローブを作ることができる。
「な、なんというか……」
「す、凄い個性的な方ですね」
リズとセレナがそう言うと、フリードも若干引き気味で「う、うん」と続く。
「おめぇさん方がケルベロスを打ち取ったのか?」
「いえ。俺たちが倒したのは、その下位種に当たるオルトロスです。ダンテ王のお気遣いでケルベロスの素材を与えて頂いたって感じです」
カーニャさんの言葉に俺がそう答えると、カーニャさんとへカーテンさんは俺たちをまじまじと見つめ始めた。
上から下まで舐め回すように、ゆっくりとじっくりと見つめて回る。
二人はそれぞれ全員を見渡すと口々に言う。
「ふむふむ。面白い」
「おほほほ。これは意欲をそそるわぇ」
一体どういうことなのだろうか。




