第45話:準備八割
「四つの班に分かれて作業する!時間との勝負だ!作業は雑で構わない!」
俺はそう言ってから、作業内容を説明する。
一つ目は鳴子班。
畑にある鳴子を取り外し、森の入り口や中に張り巡らせる。
接近を知ることができる重要な役割だ。
「セレナ。鳴子班の指揮を頼む。奴らが通りそうな場所や高さを考えて、鳴子を張り巡らせてくれ!」
「はい!」
そして俺は村人を見て言う。
「鳴子を作った人と取り付けたことのある人は?」
すると数名の男性が名乗り出た。
その人たちをセレナの傍に移動させ、残った人たちに言う。
二つ目は落とし穴作り班。
森と畑を直線で結んだ両脇。
奴らが通らない場所に、落とし穴を作る。
あくまで通らない場所。
追い込んで落とすための物だ。
「落とし穴の担当はリズ!と落とし穴の位置が俺たちにだけ分かるように、目印として花を添えておいてくれ!」
「任せておけ!」
リズは意気込みながら返事をした。
これは一番時間のかかる作業だから、かなり人員がいるな。
俺はそう思い、男性一人と女性全員を残し、他は全員リズの傍へと移動させた。
四つ目は杭と長槍作り班。
「フリード。落とし穴の中に突き立てておく杭と、落とした魔物に止めを刺すための長い槍を用意してくれ」
「わかった」
フリードはそう答えると、残った一人の男性に「ナイフと鉈はありますか?」と尋ねた。
その男性が頷くと、フリードは俺を見て「ルーク。たぶんこっちは二人で大丈夫。間に合わなさそうだと思ったら言うよ」と言った。
「流石フリード。頼りにしてるよ」
俺は答えてから切り出す。
「四つ目は溝堀りと藁集め。溝堀りは俺がやるので、残った女性陣で藁を集めて、このくらいの太さにまとめてください!」
俺がそう言うと、数名が「溝堀り?」や「何のためだ?」と呟いた。
「掘った溝に藁をはめ込んで、軽く土をかぶせます。そこに火を灯せば、森に逃げ込まれるのを防げるかもしれない。まぁ水魔術を使う魔物相手だから、うまくいくかは分からないけど」
俺はそう言ってから「出来るだけの事は全部やっておかないと、後悔が残ってしまうから」と続けた。
「他に質問は?」
そう尋ねても誰も何も言わない。
全員が覚悟を決めた表情をしていることを確認してから俺は声を上げる。
「よし!早速、準備開始だ!」
「「おー!」」
それぞれが持ち場に移動。
俺は村人からシャベルを借りて、一人で黙々と溝堀り作業。
「儂にできることはあるか?」
「そうだなぁ……」
溝堀りの人員を増やしたいけど、力仕事は無理だろうし……」
「子供たちが不安になる。昔話でも聞かせてやってください」
俺がそう言うと、老人は目を丸くした。
そして「おぬしは変わっておるのう」と言う。
さらに老人は続ける。
「戦闘職のやつらは、スキルで暴れまわるだけの奴らじゃと思って負った」
「村長さんは戦闘職が嫌いですか?見た所、ファーマーしかいないみたいですけど」
俺が老人のエンブレムを見てそう言うと、老人は噛みしめるように言う。
「ああ。好かん。気の合うファーマーだけを寄り集めて、作ったのがこの村、ルーラルじゃ。昔にも魔物退治を依頼したが、畑を踏み荒らすは、お構いなしにスキルを使って畑を壊すはで大変じゃった」
そう語る老人の口ぶりからは、戦闘職への恨みがヒシヒシと伝わってきた。
そして老人は「その時のことを知る者は、もう儂だけとなってしもうたがな」と続けた。
丹精込めた野菜だって言ってたもんな。
きっと村起こしに携わった仲間たちとの思い出も含めての言葉だったんだろう。
「同業が迷惑をかけたことは代わって謝罪します。同じことが起きないように尽力しますね」
俺はそう言ってから「まぁ俺たちアンギフテッドに、そんな大規模なスキルを使える奴はいないんですけどね」と続けた。
「あ、あの!こんな感じでどうでしょうか?」
俺と老人が話していると、女性陣が束ねた藁を持ってきてくれた。
試しに、はめ込んでみると、ちょうどいい太さだ。
「完璧です!これをグルっと向こうまで埋め込むので、もっとたくさん用意してください!俺も急いで溝を掘りますね」
俺がそう言うと、女性陣が言う。
「一人で溝を掘ると時間がかかりそうね」
「そうね。じゃあ私は溝堀りを手伝うわ」
「オッケー。じゃあ私も。藁はそっち人数でいけそう?」
「ええ。任せておいて」
なんとも軽快な会話だ。
しかし、浅いとはいえ溝堀りはかなり体力と筋力を要する。
「結構きついですけど大丈夫ですか?」
「あらま。お嬢さん扱いしてくれるの?嬉しいけど農家の女を甘く見ないで」
一人の女性が力こぶを作るそぶりをしながらそう答えると、他の人も「力仕事には慣れっこよ」や「村を守るためだったらなんだってするわよ」と続く。
「はは。頼もしいですね」
そして女性陣の力を借りて、なんとか日が暮れる前に溝堀りを終えることができた。
束ねた藁をはめ込んで、そこに薄めて増やした燃える水を少しずつ垂らしていく。
匂いで気付かれるのを防ぐため、少量をところどころに垂らして、微かに土をかけて準備完了。
「よし!できた!」
俺がそう言うと、仲間たちも作業の完了を伝えに来てくれた。




