第40話:提案
セレナとフリードで簡易テントを張り、リズが水を汲む。
俺は手ごろな石と枝を拾い集めてスキル発動。
手に炎を纏わせて、着火した。
そこへ水を汲んできたリズが、鍋を乗せる。
「手分けすると、あっという間ですね」
「ああ。とくに火起こしは面倒だからな。ルークの魔術は本当に助かる」
セレナとリズがそう言うと、俺の魔術を初めて見たフリードは「手から離れないって不思議だね」と続く。
「川がなくても水には困らないし、頭を洗って乾かすこともできるぞ」
俺がそう言いながら水を出したり風を起こしたりすると、フリードは「す、すごい便利だ」と驚きながら言った。
「戦闘っていう一点だけを除けばな。ついでお互いの実力を見せ合おう。まずは俺から」
俺はそう言って、炎を纏わせたり、雷を纏わせたりして拳を突き出して見せた。
「足には纏えないし、左右で別属性を纏う事はできない。で、地魔術と氷魔術はこんな感じで生み出して、投擲するのが限界だ」
さらに、俺は石と氷の礫を順番に生み出し、離れた所にある木にできている樹洞へと投げ込んで見せた。
「おーすごいね!アーチャーでもないのに……かなり練習したんじゃない?」
俺の技量を見て、フリードは驚きの声を上げた。
ウィザードとしては褒められたものではないのだが、それでも努力を汲む言葉は嬉しい。
俺は「まぁな。俺の数少ない遠距離攻撃の手段だからな」と答えた。
「礫の形状をナイフみたいに尖らせれば、少しは傷を与えることができる。あとは……」
俺がそう言いながら外套から腰のポーチを見せた。
「こいつだけど……火炎を巻き散らかす炸裂弾。ロックボムって名付けたけど、これは危険だから魔物が出た時にでも見せるよ」
フリードは「わかった」と答えてから、周囲を見渡した。
「じゃあ僕も。そうだな……あそこにしよう」
フリードが指さしたのは、俺が投げ込んだ樹洞よりも遥か後方にある太くて大きな木。
「あ、あそこって……かなり遠いのでは……」
「ああ。職業訓練所で少しだけアーチャーの訓練を見たことがあるが、その時の数倍の距離がある。」
セレナとリズが目を凝らしながら言うほどに遠い。
アーチャーのスキルは弓術。
俺も職業訓練所の訓練場で少し見たことがある程度だけど、たしか放った矢の進行方向を変えることができるスキルだ。
自由自在に操るのではなく、あくまで矢を曲げて、進行方向を変える範囲のもの。
矢の速度が上がれば上がるほど、矢が大きくなればなるほどに進行方向を変えることが困難になると聞いたことがある。
上は枝や葉があるため、普通に放物線を描くように矢を放つことはできないし、少しでもスキルの発動が遅れれば、同様に枝や葉にぶつかってしまう。
それにこの距離……流石に無理じゃないか?
俺がそう思い様子を見ていると、フリードは弓を構え、全身と弓と矢にマナを漲らせた。
フリードは、持ち前の体格と筋力を生かして、小さな弓が軋むほどに強く引く。
そして、集中後。
上ではなく右斜上へと矢を放った。
速いっ!
でもどこ狙って……
俺が驚きながら矢を目で追っていると、矢は大きく曲がり、木々の間をすり抜けるようにして、宣言通りの木へと命中。
突き刺さった音が、静かな森に木霊した。
「こ、こんな感じ」
フリードが振り返りながらそう言うと同時。
俺とリズは驚きの声を上げる。
「す、すっげぇ!今のが弓術か!?あんなに曲がるの初めて見た!」
「フリード!君は体格だけじゃなくてスキルも凄いんだな!」
するとフリードが謙遜して言う。
「ま、曲がりくねらせることはできないから、一回か多くて二回まで、大きく曲げられる程度だけどね」
「それでもあんなに遠くまで飛ばせるなんて凄いですよ。それに、矢の飛ぶ音が聞こえなかったように思いますが……」
セレナがそう言って、俺とリズは初めて気づき「そ、そういえば」と言葉を重ねた。
三人でフリードを見ると、フリードは言いにくそうに言う。
「じ、実はこの矢は自分で作ったんだ。フクロウの羽根を使ってるからほとんど風切り音がしないんだ」
「それは狩りの成功率を上げるために自分で考えたのか?」
俺が尋ねると、フリードは自信なさげに「う、うん。お金がないからスミスに依頼できなかっただけだけどね」と答えた。
「なんで誰もフリードに声をかけなかったんだ。これだけの技量があるのに」
「飛距離と命中率には自信があるけど、見ての通りで、僕はデカくて《《のろま》》。昨日も話したけどアーチャーとして欠落してるところが多いからね」
リズの言葉に、フリードは言いにくそうにそう答えた。
「互いに補い合うのが仲間だ。俺たちの至らない所はフリードが補ってくれ」
「他の人たちに見る目がなかったことに感謝しないといけませんね」
俺の言葉にセレナはそう続き、リズは笑顔で「だな!」とセレナの言葉に同意した。
「昨日から……心の中でずっと待ち望んでいた言葉をもらえて幸せだよ。せめて食費と矢代を帳消しにできるように頑張るよ」
フリードは嬉しそうに、そう答えた。
「そうか。矢にもお金がかかるんだな……」
俺がそう言うと、フリードは「あ、え……」と戸惑いを漏らす。
フリードは、俺同様にかなり強い迫害を受けて来たみたいだから、勘違いをさせたのかもしれない。
「大丈夫だ。安心してくれ。それを理由に責めるとかなじゃい」
「よ、よかった」
俺の言葉を聞き、フリードは胸をなでおろした。
こういう一面も、いずれ薄れていくと嬉しいな。
「フリード。提案なんだが、その弓に想い入れはあるか?」
「え?あ、まぁ……職業訓練所の時から使ってるから、あるといえばあるけど?」
俺はフリードの答えを聞き、それならと思い提案する。
「金銭的な事情で今すぐには無理だが、弓と矢を大きくしてみないか?獲物を素早く追って放つことや、連射は諦める事になるが、正確無比な強力な一矢を放つことができる」
「ア、アーチャーだけど……そんな戦い方でいいのかな?」
俺の提案に、フリードは戸惑いながら尋ねてきた。
「ふむ。あたしは大賛成だぞ。っていうか、あたしもウォーリアーのくせに双剣だからな」
「俺、ウィザードだけど殴るぜ」
リズと俺がそう言うと、セレナは「わ、私は……プリーストなのに休憩多いです」と言い、笑いを誘った。
「まぁ、金がたまったらだけどな。リズの双剣も新調したいし」
「う、うん。考えておくよ。ありがとう」
俺の言葉にフリードがそう答えると、リズは「次はあたしの番だな」と言ってマナを漲らせた。




