第37話:冒険者登録
受付に戻ると、フレイは「書類作成をしますので少しだけお待ちください」と言い、受付の奥にあるデスクへと座った。
その間に俺たちはクエストを見る。
№0001/薬草10個8000ダルム。
対象薬草:ハコベ、スベリヒユ、オオバコ。
№0002/魔草2個5000ダルム。
対象魔草:マナリーフ(レッドマナリーフは+2000ダルム)
№0003/解毒茸10個11000ダルム。
№0004/マヒマワリの根5個5000ダルム。
№0005/ローズマリー2個1000ダルム。
№0006/薬草5個5000ダルム。
対象薬草:スベリヒユのみ。
他にもさまざまな依頼がある。
見ながら俺が「稼ぎがいいのは一番から三番か」と言葉を漏らすと、フリードが自信なさげに言う。
「薬草って言っても色々あるんだね。僕スベリヒユは見たことがるけど、他のものは見たことがないよ」
「私も、ハコベとマナリーフは見たことがありますが、それ以外は……」
セレナもそう続く。
そしてリズは「二人とも博識だな。あたしなんか何一つわからないぞ」と自信たっぷりに答えた。
「俺も似たようなもんだ。セレナはクエストに行ったことがあるって言ってたけど、討伐クエストだけか?」
「はい。見事に足手まといで、二度だけ行動を共にして……」
俺の言葉にセレナが暗くなるため、リズとフリードが慌てて「い、一緒に頑張ろう!」と同時に声をかけ、なんとかセレナを暗闇から引き戻してくれた。
ふぅ。助かった。
この話は、セレナが自信を取り戻すまではタブーだな。
「お待たせしました」
そうこうしていると、受付カウンターからフレイに呼ばれた。
「以前にご記入いただいた登録用紙と項目は同じですが、注意事項が変更されています。お目通しいただき、問題なければご記入ください」
フレイはそう言って四枚に登録用紙を受付カウンターに並べた。
「四枚?」
俺がそう尋ねると、フレイは頷いてから言う。
「はい。セレナさんも、以前までの登録用紙とは条件が変わりますので、ご記入いただきます」
そう言われ、俺たち四人はゴウゼンが出した条件の記載されている登録用紙の各項目を埋めた。
書き終わり、登録用紙をフレイに渡すと、今度は小さな紙切れを渡された。
「パーティメンバー登録用紙?」
「はい。四名の名前とパーティ名をご記入ください。名前が先頭の方がリーダーとなります」
俺が尋ねると、フレイはさも当然のように答えた。
完全に失念してたぞ。
誰がリーダーをやるんだ。
あと、パーティ名ってどんなのにするんだ?
俺がそう考えていると、セレナが言う。
「リーダーはルークさんで決まりとして、パーティ名はどうしましょう?」
するとリズとフリードが言う。
「ああ。そうだな。こう……なんというか強そうな名前がいいな」
「他の人はどんな名前にしてるんだろうね」
おいおいおい。
まてまて。
「セレナとリズはいいとして、フリードも俺がリーダーでいいのか?」
「え?あ、うん。問題ないと思うよ。ルークは頭がよさそうだし」
俺が尋ねると、フリードはそう答えた。
「頭はよくないが、期待を裏切らないように最善を尽くすよ」
俺はそう答え、仲間になった順に名前を記入した。
そしてフレイに尋ねる。
「リーダーは俺です。パーティ名の参考になるものはありますか?」
「悩んで進まない方は、ご出身地にちなんだ名前にしたり、共通点なんかを参考にされて決められることが多い気がします」
そう言われて俺たちは顔を見合わせる。
「出身地……私はイースティンですし……」
「あたしはウエストーレだ」
「僕はサウスウッド。ルークは確かノースリーフって言ってからバラバラだね」
少しの間を開けて、俺が「共通点って言ってもなぁ」呟くと、全員が同時に気づき言う。
「「「「才能に恵まれぬ者!」」」」
そして、そのままパーティ名の欄に「アンギフテッド」と記入した。
「ほ、本当によろしいのですか?」
「ああ。覚えやすいし、俺たちにとっては大切な共通点だ」
フレイに聞かれ、俺がそう答えると、フレイは他の三人にも視線を向けてから、にこやかに「承知しました」と答えた。
そして用紙を持って再びデスクに行くと、そう時間がかからずに四つの鉄板の付いたプレートを持って帰ってきた。
「では皆さまこれを。セレナさんは元の物と交換となります」
そう言ってそれぞれにプレートを渡してくれた。
やっとここまできた。
やっと手に入れた。
念願の冒険者。
念願のプレート。
俺はそう思いプレートを見つめる。
そこにはパーティ名と名前、エンブレムと出身地が刻印されていた。
「名前よりも先にパーティ名があるのか」
俺は嬉しく思い、思わず言葉にした。
すると俺の言葉を聞き、セレナが「以前はなかったので嬉しいです」と答えた。
「前にパーティに所属したって言ってなかったか?」
「はい。その時は才能に恵まれぬ者と思われずに普通に個人で冒険者登録したので、パーティ名の刻印はありませんでした」
俺が尋ねるとセレナはそう答えた。
その話を聞きフレイが言う。
「誰かが臨時でパーティに所属する場合は刻印されません。どなたかを正式にパーティへ迎え入れる場合は、この受付窓口まで来て申請手続きをしてください」
そしてフレイは「手続きが完了すれば、その方のプレートにパーティ名を刻印します」と教えてくれた。
するとプレートを見つめていたリズが不意に言う。
「アイアンランクからブロンズランクに上がるにはどうすればいい?」
おそらく宿敵ゴルドーがシルバーランクだったことを意識しての質問だろう。
その問いにフレイは「討伐クエストを十回連続で完遂すれば昇格となります」と答えた。
「なるほど。だから採取クエストが溢れてるんだな。実績として数えてもらえないから」
「はい。先ほどルークさんがギルドマスターへご指摘された通りなのですが……今のグランダルムの状況ですと……」
俺の言葉に、フレイは最後まで言う前に言葉を詰まらせた。
理由は簡単。
ダンテ王が呪いを解くために戦力を求めているからだ。
ただそれを言葉にしてしまうと、ダンテ王のお考えを批判してしまうことと同意。
それでフレイは言い切らなかったのだ。
「俺の夢も大英雄だから、他の冒険者の気持ちは分かります」
俺がそう言うと、フレイは驚いた表情をした。
「才能に恵まれぬ者のくせに大英雄を目指すなんて馬鹿みたいだと思うでしょ?でも本気で目指してるんですよ」
俺はそう言ってから「という訳でその第一歩として早速クエストに行っていいですか?」と続けると、フレイは笑顔で「はい。どのクエストにいたしましょう?」と言ってくれた。




