第36話:再面談
翌日早朝。
冒険者ギルドの前。
俺たちは待ち合わせをして、四人揃ってから冒険者ギルドに入り、受付へと進んだ。
「おはようございます」
「おはよう……」
俺が挨拶をすると、背を向けて作業をしていた受付女性は振り返りながら挨拶を返してくれた。
しかし、俺たちを見ると驚きの表情を浮かべ「あ、あなたたちは昨日の……」と言葉にした。
「ギルドマスターから出された条件をクリアしたので来ました」
俺がそう言うと、受付女性は「確認してきますので、少々お待ちください」と言い残し、奥の通路へと歩いて行った。
「す、凄く驚いてましたね」
「ああ。まさかこんなに早く戻ってくると思わなかったんじゃないか?」
セレナの言葉に俺がそう答えると、リズは頷き、フリードは「無理もないよ」と続いた。
俺たちがそう話している間に、受付女性は戻ってきて言う。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
案内されたのは通路奥にある扉。
ノックをして中に入ると、ゴウゼンが仁王立ちしていた。
そしてゴウゼンは俺たちを見て言う。
「すぐに戻ってくると思ってはいたが、まさかこんなに早いとは思わなかったぞ」
「たまたまだ。飯を食いに入ったら偶然フリードに出会ったんだ。《《境遇が似てた》》んで打ち解けるのに時間はかからなかったさ」
俺がそう答えるとゴウゼンは「なるほどな」とだけ答えた。
「俺たちは遠距離攻撃の仲間を、フリードは接近戦で対処の出来る仲間を連れて来た。問題なく冒険者登録を進めてもらえるんだよな?」
「ああ。約束は守る。ただし、条件は継続だ」
俺の言葉に、ゴウゼンはそう答えた。
俺が「継続?」と尋ねると、ゴウゼンは言う。
「ああ。今だけパーティを組んで、登録後に解散なんて姑息な真似はさせねぇ。パーティを解散する場合は、すぐに穴埋めをしねぇと冒険者としての資格を剥奪させてもらう」
「つまり、フリードが抜けるなら、すぐに遠距離攻撃が可能な誰かを補充しろってことか」
俺が確認のためにそう言うと、ゴウゼンは「ああ。そうだ」と言う。
そしてリズを見て「他の場合も同じだ。もしそこのウォーリアーの女が抜けるなら、接近戦としての戦力を補充しろよ」と補足した。
なるほど。
俺たちに出した条件も、フリードに出した条件も守り続けなければならない。
つまり、誰かが抜けるなら、代役を入れろってことか。
フリードには、昨日に「俺たちと合わないと思ったら抜けても構わない」と言ったばかりだってのに……
俺は振り返り、フリードを見た。
するとフリードを、何も言わずに明るい表情で頷いた。
俺は嬉しくなり、頬が緩みそうになるのを抑えながら、視線をセレナとリズに移す。
二人の表情も明るく、聞かなくても答えが分かった。
そのまま言葉を交わすことなく、俺はゴウゼンを見て言う。
「わかった。その条件を守るよ」
するとゴウゼンは受付女性を見て「フレイ。聞いての通りだ。今の内容を追記した登録用紙を作ってくれ」と言った。
「かしこまりました」
フレイと呼ばれた受付女性は、ゴウゼンにそう返事をすると、部屋の扉を開けた。
「どうぞこちらへ」
案内されるがまま、俺たちが部屋を出ようとすると、ゴウゼンが言う。
「おい、ちょっと待て」
「まだ何かあるのか?」
呼ばれて振り、俺がそう言うと、ゴウゼンが口を開く。
「お前ら……最初にどんな討伐クエストに行く気だ?」
「討伐クエスト?最初に行くのはここから一番近い採取クエストだ」
俺がそう答えると、ゴウゼンは少し馬鹿にしたような口調で言う。
「なんだ?せっかく仲間が揃ったってのに、えらく弱気じゃねぇか。《《危険に挑んでこその冒険者》》だぜ?」
その言葉を聞き、俺は小さく溜め息をついてから言う。
「違う。《《危険を冒してでも必ず人を助ける》》のが冒険者だ。それに俺たちは出会って間がなさすぎる。討伐クエストに行くのは連携の基礎を作ってからだ」
俺がそういうとゴウゼンは「じゃあ一番簡単な討伐クエストに行けばいいじゃねぇか」と言い返してきた。
「連携を取るには、まず互いの人間性を知ることが重要だ。とはいえ、金が底をつく前にクエストに行って稼がなければならない。そこで採取クエストだ。一緒に作業することコミュニケーションを取り仲間意識を強めながら稼げて一石二鳥ってやつだ」
俺はそう言ってから「まぁ採取クエストに行っても魔物に遭遇する可能性は充分にあるから、全く油断はできないけどな」と答えた。
するとゴウゼンの口元が微かに緩む。
やっぱりな。
このおっさん……俺を試してやがったな。
俺は少し仕返しの意味を込めて言う。
「さっき案内される前にクエストボードを見た。討伐クエストの張り紙は減ってるのに、採取クエストの張り紙は増えてた。グランダルムの冒険者が討伐思考が強くて、採取クエストを蔑ろにしてる証拠だ」
俺は言い終えると同時に仲間に「さっさと行こうぜ」と声をかけ、部屋を出た。
通路に出て、扉が閉まると同時に、部屋の中から豪快な笑い声が聞こえてくる。
その笑い声を背に、受付へと戻る途中。
「ギルドマスターは、あなた方の事をとても気に入っているようです」
フレイはそう教えてくれた。




