第34話:酒場
俺たちはゴウゼンとの面談を終え、俺たちは冒険者ギルドを出た。
そして第一声。
「資金も残り少ないってのに……俺のせいだ。すまない」
俺はセレナとリズに謝罪した。
「ル、ルークさんのせいじゃないですよ!」
「そうだ。これはあたしたち全員の課題だ。一人で抱え込むな」
セレナとリズの言葉に救われる。
俺はただただ「ありがとう」とだけ返した。
ゴウゼンが見抜いた俺たち三人の最大の弱点は広範囲攻撃と遠距離攻撃。
これはそもそも、俺が当たり前の範囲で魔術攻撃ができていれば発生していない弱点だ。
「それにルークさんには投擲もロックボムもあります。それをゴウゼンさんに見せれば、きっと冒険者として認めてくれますよ」
「いや。残念ながら、ロックボムは広範囲攻撃と呼べる代物じゃないし、投げて届く範囲だから遠距離攻撃とも言えないよ」
セレナがフォローの言葉をかけてくれるが、俺は感謝しつつも冷静に説明した。
「広範囲と遠距離を兼ね揃えていると言えば……やはりウィザードか」
「ああ。もしくは遠距離だけに絞ってアーチャーだな。ウィッパーでは広範囲にしても遠距離にしても、渋られるだろうな」
リズの言葉に、俺はそう答えた。
ウィッパーとは鞭のエンブレムを持つ者だ。
ウィッパーのスキルは鞭術。
マナを鞭に流し込み、変則的な動きで中距離攻撃を仕掛けることができる。
薙ぎ払うように無理を振るえば、無理の届く範囲での範囲攻撃は可能だが、威力は下がる。
それではゴウゼンは納得しないだろうし、俺たちの弱点を埋めるには至らない。
「暗くなってきましたし、宿を探した方がよさそうですね」
セレナの提案に、俺とリズは頷き、安価な宿を抑えてから仲間を探すために酒場へと向かった。
宿から少しそう遠くない場所にある飲食街。
旨そうな匂いを嗅ぎながら歩き、杖や弓を持つ者を探す。
しかし、なかなか見当たらない。
「お!あいつはどうだ?」
リズの視線の先には、杖を持つ女性が一人でテーブル席に座っていた。
「いや、あれは……」
俺がそう言いかけると、パーティメンバーがすぐにやってきた。
混雑しているため、バラけて席の確保をしていただけの様だ。
「やっぱりか」
「だめかぁ」
俺とリズがそう言うと、セレナが「こ、ここはどうでしょうか?」と声をかけてきた。
見ると、地下に降りる怪しげな階段がある。
階段の手前には酒の模様が描かれた木の看板が立てかけられていた。
「酒場か。試しに降りてみるか。俺、酒飲めないけどな」
「あたしもだ」
俺の言葉にリズが続き、さらにセレナも「わ、私もです」と続いた。
階段を下りて、地下一階にある大きな扉を押して中に入る。
中は広く、左側にカウンターに十席程度あり、右側にテーブル席は六ケ所設けられていた。
共に、席は半分ほど埋まっているが、ざっと見渡してもウィザードやアーチャーのような細身の者はいない。
ファイターとウォーリアーばかりだ。
一人だけカウンター席に、大柄な男性がいるが、ふくよかなウォーリアー。
もしくは体格のいいマーチャントだろう。
どちらにしても、目当ての職業じゃないな。
「いらっしゃい。空いてる席に座んな」
俺が見渡していると、カウンターの向こう側で調理をしている男性が声をかけてきた。
俺たちは会釈をしてから目の前のテーブル席に腰掛ける。
すると若い女性が「何になさいますか?」と言いながらメニュー表を差し出してきた。
「そんなに高くないな」
「ええ。ですが節約しておかないと後が怖いですね」
メニューを見てリズとセレナがそう言うため、俺は「豪華な食事は初クエスト成功の後に取っておくとするか」と声をかけた。
その言葉にリズとセレナは頷く。
そして三人で言う。
「「「一番安いセットを三つで!」」」
「一番安いセットを三つください」
ん?
誰か同じこと言ったか?
俺はそう思い、声が聞こえた方向を見ると、そこにはカウンター席のふくよかな男性がいた。
しかも、その男性もこっちを見ている。
「あ、えっと……ども」
「あ、う、うん。こんばんは」
目が合い気まずくなってしまったため、とりあえず挨拶をしたら、向こうも気まずそうに挨拶を返してくれた。
どうしたものか。
俺が困って視線を泳がせると、男性の足元に弓と矢筒が見えた。
もしかしてアーチャーなのか?この体格で?
そんなことありえるのか?
少し話を聞いてみたいな。
「あの。お一人ですか?」
「え、あ、その……うん。やっぱり一人で三つは食べすぎかな……?」
俺が尋ねると、ふくよかな男性は自信なさげにそう答え、逆に尋ねて来た。
どうやら「一人で三つも食べるのか?」と質問しているように思われてしまったようだ。
「い、いや。いいんじゃないかな?誰かに迷惑かけるわけじゃないし」
「その通りだ!その恵まれた体格があるのだ!しっかり食って、鍛えて、よりデカくしなければ宝の持ち腐れと言うものだぞ!」
俺の言葉に、リズは羨ましさからか前のめりになって続く。
「め、恵まれてる?ぼ、僕が?そんなの初めて言われたよ」
「そうなのか?自信を持て!君は素晴らしい!確かに腹回りが少し出てはいるが、その大きな肩回りに太い腕、丈夫そうな脚なんかは、あたしのと交換してほしいくらいだ!」
自信がなさ気だった男性は、リズの言葉を聞き、ドンドン表情が明るくなっていく。
その様子を見て、セレナが言う。
「よかったら一緒に食べませんか?」
「そうだな。嫌じゃなければ是非。これも何かのご縁ということで」
俺がそう続くと、ふくよかな男性は「嬉しいよ。せっかくだからお邪魔させてもらうよ」と言い、俺たちの席へと移動してきた。




