第33話:ギルドマスター
広めの通路を進むと、手前と奥に扉が一つずつ。
その奥側の扉を受付女性がノックして言う。
「お連れしました」
受付女性がそう言うと、扉の向こう側からは「おう。入れ」と言う男性の声が聞こえて来た。
低く太く唸るような声質から体格のよさが伺える。
「失礼します」
受付女性がそう言って中に入り、俺たちは後に続く。
部屋に入ると、真正面にはソファーとローテーブル。
その向こう側にはデスクがあり、そこには筋肉質の男が座っていた。
髪も髭も真っ白の五十歳くらいの男性。
体格と、壁に立てかけられた大剣からウォーリアーであることは間違いないだろう。
その座っていたウォーリアーは俺たちを見るや否や、威嚇するようにマナを漲らせながら立ち上がった。
そして、威圧感を強めながら近づいてきて言う。
「俺は冒険者ギルドの長。ゴウゼンってもんだ。いくつか質問するために呼ばせてもらった」
ゴウゼンと名乗った男性ウォーリアーは、今まで見たウォーリアーの中で最も巨大で筋肉質。
そしてマナ量が多いだけでなく、マナの扱いにも長けているのが見て分かった。
間違いなく、今まで出会った中で最強の人間だ。
俺がそう思っていると、ゴウゼンは「観察は済んだか?」と前置きしてから、威圧的に話し始める。
「ファイターみてぇな体格のウィザード。遠距離攻撃が出来ねぇと記載あるが間違いねぇか?」
「ああ。間違いない」
俺が端的に答えると、ゴウゼンは眉間にしわを寄せ、さらに威圧感を増して言う。
「実家はアルベルト家。領主の家系。その大層なダークベアーの装備は、お父様にでももらったのか?それとも……盗んだんじゃねぇだろうな?」
「いや。俺が倒した。殺されかけたけどな」
俺がそう答えると、ゴウゼンは声を荒げて言う。
「あん?明らかなアンギフ野郎が倒せるほど弱い魔物じゃねぇ!いったいどうやって倒したってんだ!」
ゴウゼンのあまりの態度に、俺は拳に炎を纏わせ、構えながら答える。
「才能に恵まれぬ者で弱いからこそ、努力と工夫を凝らして、なんとか倒したんだ。信じられねぇってんなら今見せてやろうか?」
俺は睨みつけながら「ただし、命を懸けろよ」と続けた。
するとゴウゼンは「ふん。なるほどな」と言ってから、リズに視線を移した。
なんだ?やらないのか?
俺はそう思い、様子を見ることにした。
「大きな武器が振るえない非力なウォーリアー。間違いねぇか?」
「ああ。間違いない」
ゴウゼンの言葉に、リズは静かに答えた。
するとゴウゼンは挑発するように言う。
「風の噂で、木造りの大剣を振るう小娘がいると聞いたことがある。数年前に始まった戦神祭とかいうウォーリアー同士の戦いで惨敗したらしい。それもお前か?」
「くっ……ああ。あたしのことだ」
ゴウゼンの態度に怒りを覚えながらも、リズは堪えながらそう答えた。
「職業訓練所はどうやって卒業したんだ?いや、聞き方を変えよう。どんな不正をして卒業を手に入れたんだ?」
その言葉でリズがキレる。
「その時持っていた木剣で叩き割ったんだ!貴様も同じ目に遭わせてやろうか!」
リズは声を荒げながら、マナを解き放ち、一気に超圧縮。
全身と石の双剣に纏わせ、臨戦態勢に入った。
俺はリズを止めるのではなく、ゆっくりと重心を落とした。
そして、いつでも取り出せるようにロックボムの入ったポーチに手をかけ、臨戦態勢を整えた。
セレナもマナを練り、参戦準備は万端だ。
するとゴウゼンは応じずに、肩透かしをするように「最後はお前だな」とセレナに視線を向けた。
「なんでこんな明らかなアンギフを二人も抱える気になったんだ?何か裏があるんじゃねぇのか?」
「ルークさんやリズさんと違って、私も才能に恵まれぬ者です。スキルの使用回数が少なく体力も少ない。そんな役立たずの私を、お二人が受け入れてくれてるんです」
セレナはそう答えると、口調を強めて続ける。
「私はお二人を尊敬して行動を共にしています。そんな言い方しないでください」
すると受付女性が言う。
「職業訓練所卒業時の備考にはそう言った内容は記載されていません。しかし、そのプリーストと行動を共にした冒険者からの報告履歴が残っています。おそらく事実かと」
「なるほどな……」
受付女性の言葉に、ゴウゼンは短くそう答えると、俺たちを見定めるように順に見た。
そして言う。
「お前ら覚悟はできてんのか?」
「ああ。だからここに来た」
真意が多岐にわたるであろうゴウゼンの言葉に、俺が間髪入れずに答えると、リズとセレナが頷き同意を示す。
すると少し間を空けてからゴウゼンは言う。
「……認められん。出直せ」
その言葉を聞き、リズが声を荒げる。
「き、貴様!さっきから聞いてれば一方的に!」
「リズ!よせ!」
今にも斬りかかりそうになるリズを俺は止め、ゴウゼンに聞く。
「出直せってことは、また来ていいんだろ?せめて今登録できない理由を教えてくれ」
俺の言葉を聞き、ゴウゼンは微かに笑みを浮かべて答える。
「ふん。冷静じゃねぇか。いいぜ。答えてやる。俺に臆さず食って掛かってくる奴は少ねぇからな」
ゴウゼンはそう言うと、先ほどまでの威圧的な態度を消し、落ち着いた様子で続ける。
「お前らパーティ組むんだろ?ならお前ら三人のパーティの致命的な弱点を答えてみろ」
「……広範囲攻撃と遠距離攻撃だ」と答えた。
ゴウゼンの言葉に、俺が少し間を変えてから答えると、ゴウゼンは「わかってんじゃねぇか。ならせめて片方だけでもなんとかしろ。話はそれからだ」と答えた。




