第31話:グランダルム②
「次!」
門番にそう言われ、俺たちは前に進む。
見ると男性の門番が三人並んでいる。
服装と体格からして一人はウィザードで、二人がウォーリアー。
その背中側には戦闘職と生産職と書かれた棚があり、地名の描かれた分厚い本が並んである。
「エンブレムを見せて、名前と年齢、出身地。それから入門の目的を答えろ!」
そう言われ、先にセレナがプレートを見せる。
「プリーストのセレナです。15歳になる年です。イースティンの出身です。私は冒険者ギルドに所属しています。こちらの二人の冒険者登録の付き添いで来ました」
すると門番の一人は「よし。お前はそっちで待ってろ」と言い、セレナを少し前に進ませた。
そして門番は俺とリズを見て「次!」と言う。
「ウィザード、ルーク・アルベルト。もうすぐ15歳。ノースリーフの出身だ。冒険者登録のために来た」
「ウ、ウォーリヤーだ。リズ。15。ウエストーレから来た。同じく冒険者登録のためだ」
すると門番たちが驚きながら言う。
「その体格でウィザードどウォーリアー?」
「杖を持たないウィザードに、石の双剣のウォーリアー。わけわかんねぇ連中だな」
門番二人がそう言うのを背に、ウィザードの門番は戦闘職の棚からノースリーフとウエストーレと書かれた分厚い本を取り出した。
そしてそれを台に置く。
そこには名前と職業と何歳で職業訓練所を卒業したかが書き並べられていた。
「ウエストーレのリズ……リズ……あった。ウォーリアー。13歳で卒業。備考には……非力で大きな武器が振るえない?まぁ犯罪歴はないからいいか……よし。確認が取れた」
そしてリズに対して「お前もそこにいろ」とセレナの傍に行くように指示を出す。
この流れはまずいな。
「次はノースリーフのルーク……ルーク……ん?見当たらないぞ」
「あん?そんなわけねぇだろ」
ウィザードの門番に対してウォーリアーの門番が、怪訝そうな表情を浮かべて言い、一緒に分厚い本を見始めた。
「まさか……ひょっとして……」
ウォーリアーの門番はそう言うと、分厚い本の一番後ろのページを開いた。
そして声を上げる。
「あった!こいつ退所組だぜ!」
「まじかよ!こいつは凄げぇ!俺初めて見たぜ!」
ウォーリアーの門番同士での盛り上がりに、ウィザードの門番が「相当な才能に恵まれぬ者でも退所組なるのは苦労するのにどうやって……」と言って再び分厚い本を見た。
そして備考欄を見て言う。
「こ、こいつ!ウィザードのくせに魔術を飛ばせないらしいぜ!遠距離攻撃ができないウィザードなんて何の役に立つってんだ!」
あえて周りに聞こえるように言いやがって……
俺がイライラしていると、周囲からも憐みの言葉が出始めた。
「ちっ。おい!確認が取れたなら通っていいか!」
俺が苛立ちながら言うと、門番は「ああ。いいぜ。お前たちは一人1000ダルム。退所組は10000ダルムだ」と答えた。
「「10000!?」」
「そ、そんな!どうして!?」
俺とリズの驚きの声が重なり、セレナが説明を求める。
それを無視して門番は「これにサインしろ」と言って用紙とペンを置いた。
そこに書かれていたのはグランダルムでの禁止事項。
物乞い禁止や野営および野宿の禁止。
破れば厳罰で窃盗など他の犯罪行為に及べば、死罪や奴隷落ちになる場合もあると書かれている。
そして最下段には、職業訓練所を卒業できなかった者には10000ダルムの支払いを命ずると書かれている。
ちゃんと丁寧に理由も書かれているが、ざっと要約すると、退所組は役立たずの象徴であり、仕事にありつけないため、金銭トラブルが多いからのようだ。
冒険者に慣れても、仲間は見つからず、仕事にありつけない。
街を出るタイミングを見誤り無一文になれば、グランダルム内を徘徊するだけの浮浪者になる。
そう言ったことを事前に防ぐために、あえて高額な通行料を徴収しているようだ。
「くそ……もっともらしい理由を並べやがって」
退所組への差別や迫害をするためだけのルールではないことは分かったけど、それにしても10倍は多すぎるだろ。
俺が睨むとウィザードの門番二人が言う。
「嫌なら帰んな」
「そうだぜ。これは俺たちが言ってるじゃねぇ。グランダルムで定められてるルールだからな」
そしてニヤニヤしながらウィザードの門番が「ギルドに所属すれば出る時は1000ダルムでいけるからね。所属できればね」と続く。
「ちっ……12000ダルム!全員分だ」
俺はサインをしてから、叩きつけるようにして台に金を置いた。
そして「問題ないなら通るぞっ!」と言って門番や冷笑していた周囲の者を睨みつけ、通路を進む。
「絶対に見返してやりましょう!」
「ああ!通行料もだが、奴らのあの態度!斬りかかる所だったぞ!」
セレナとリズが俺以上に怒り、感情を露わにした。
「思わぬ出費だったな。足りてよかった。あの様子だと冒険者登録でも揉めるかもしれないな」
俺はそう言ってから謝罪する。
「嫌な思いをさせてしまった。この後も何かあるかもしれない。すまな……」
「ストップです。ルークさんは何も悪くありません」
セレナが人差し指を俺の唇に添えて、言葉を遮って言う。
その言葉にリズは「セレナの言う通りだぞ」と続く。
気を取り直して、三人で通路を進む。
そして光の先に見えてきたのは、大勢の人通りと、見たことがない石造りの建物。
まさに大都会だ。
木製の建物もあるが、レンガを積み上げて作られた建物。
三階建て、四階建て。
それ以上の高さの建物も見受けられる。
道には石畳が敷かれており、いくつもの荷馬車が通っているが、土埃が舞い上がることがない。
道行く人たちも、様々な恰好、様々な体格の者が見受けられるが、一様に品があるように見える。
「す、すごいな……」
「ああ。建物にも人の多さにも圧倒されるな。もしはぐれたら、この門前に集合しよう」
リズの言葉に続くようにして、俺は後ろにある巨大な鉄扉を指さして言った。
「ああ。わかった」
「はい。ではさっそく冒険者ギルドへ。こっちです」
リズは緊張した様子で答え、セレナは笑顔で先導し始めた。




