第30話:グランダルム①
新たな仲間と共に歩き、ノースリーフよりも少し栄えた程度の街にやってきた。
リズの双剣を探そうかとも思ったが、グランダルムへ行ってから探した方が優れた武器が見つかると思い、先にグランダルムへと向かうことにした。
幸いなことに、乗客は俺たちだけ。
決して大きな幌馬車ではないが、御者以外に人がいないため気を遣わなくて済むのは助かる。
「いい天気だなぁ。ケツが痛くなるらしいけど、歩かなくていいし、貸し切りってのがまたいいな」
俺が幌から空を覗き見ながら声をかけると、リズとセレナが申し訳なさそうに言う。
「ルークの所持金が多くて助かった」
「すみません。全額出させてしまって」
二人の言葉に俺は明るく答える。
「気にしないでくれ。この金も、これから稼ぐ金も、全員が納得のできる使い方をしよう。独り占めはなしだ」
そして俺は親指を立て、笑顔で「ちなみにこの金は、仕返しとして実家から持ち出した金だ」と続けた。
するとリズとセレナは、笑みを浮かべて言う。
「なるほど。じゃあ今回のお金は気にしないでおくよ」
「くすくす。そうですね。そしてこれからのお金は一緒に頑張って稼ぎます」
二人の言葉に俺は「ああ。皆で頑張ろう」と答えた。
グランダルムまでは、幌馬車に揺られて一週間程度。
その間に、いくつか村があるらしいが、基本的に野営となる。
俺たちは、出発前に調達した干し肉やパンを食べたり、その場で狩ったウサギやイノシシの肉を食べたりした。
冒険者登録をする前に、狩りで連携を確認することもできたし、リズが双剣に少しだけ慣れる機会を作ることができた。
魔物に遭遇することがなかったため、安全で快適な道中を、俺たちは終始明るい雰囲気で過ごすことができた。
晴天に恵まれた七日目の昼。
「見えてきましたぜ」
丘を越え、下りに差し掛かった時、御者の男性が教えてくれた。
俺たちが御者の背中越しに、進行方向を見ると、そこに見えたのは木々が苗木に見えるほど巨大な外壁。
地平線を塞ぐほどに広く、天に届くほどに高い石壁。
その奥に見えるのは、さらに背の高い山脈のような城。
まだ数km先だというのに何て大きさだ。
まさに世界最大の都市だな。
「おお!あれがグランダルムか!」
「とんでもない大きさだな。このどこかにダンテ王がいるんだな。世界最強のウィザードが」
グランダルムを初めて目にした俺とリズがそう言うと、セレナは「ええ。近づくともっと大きいですよ」と笑顔で答えた。
「そうか。セレナは来たことがあるんだったな」
「はい。なので道案内はお任せください」
リズの言葉に、セレナは少し自信ありげに答えた。
「それは頼もしいな。かなり広そうだけどどうやって覚えたんだ?」
俺がそう言うと、セレナは暗い過去を思い出したのか「た、たくさん迷子になったので覚えました」と言いにくそうに答えた。
「「な、なんかごめん……」」
「い、いえ……」
気まずさに耐えかねたリズが「お、おっちゃん!急ぎで頼む!」と声を上げ、幌馬車の速度が増す。
振り返ると、より一層に壮観。
よく見るとそそり立つ外壁は一枚岩。
ブロックを積み重ねてから、表面を塗り固めたのか、地魔術で大地を隆起させて作り上げたのかはわからないけど、とにかくつなぎ目がない。
遥か上の方には、ところどころ窓のような穴が見える。
おそらく遠くを見たり、近づく魔物などを狙い撃ったりするためのものだろう。
そして外壁には、縦横10mほどある巨大な鉄扉。
それを見て思わず言う。
「いったい何が通る用の門なんだろうな」
「開いているところを見たことはないのですが、おそらく偉い方や大型の魔物討伐したとき用の出入り口かと」
俺の言葉に、セレナも考えながらそう答えた。
「それでここからどうすればいいんだ?」
「はい!まずはこちらに並びます」
俺が尋ねると、セレナが自信あり気に答えた。
「「やっぱりか」」
思わずリズと言葉が重なってしまった。
巨大な鉄扉の両側に、それぞれ縦横3m程度の通路がある。
向かって右側には、長蛇の列。
向かって左側からは、人が時折出てきている。
そのため、入るためには並ぶ必要があると予測していたのだ。
「毎回こんなに並ぶのか?」
列に並びながらリズが聞くと、セレナは向かって左側にある出口を指さして言う。
「いえ。あそこを見てください」
そこでは何やら用紙を持つ門番に質問されている様子のマーチャントがいる。
そこへ冒険者らしき人物がやってきて、プレートを見せると、すぐに出口から出てくるのが見えた。
「なるほど。プレートを見せると先に通れるってことか」
「はい。戦闘職であれば冒険者ギルド。生産職であれば商売ギルドか製造ギルドに属せば同じようなプレートがもらえます。それを身分証代わりにすれば、すぐに通れます」
俺が認識の確認をすると、セレナがそう答えた。
ギルドに属す属さないで何か変わるのか?毎回この列に並ぶことを思えば、とりあえず所属した方がいい気がするが」
リズがそう質問をすると、セレナは嬉しそうに答える。
「はい。ギルドに所属していると、ギルドからお仕事をもらえますし、身分証としてプレートを受け取れます。しかし、報酬の一部をギルドに取られてしまいます」
「なるほど。冒険者でいえば、クエストを受けて完遂しても、報酬の一部が引かれる。または引かれた額でクエストを受けなければならない。と言ったところか」
俺がそう解釈を言葉にすると、セレナは「はい。その通りです。ちなみにほとんどが後者です」と答えた。
そしてセレナは続ける。
「通行税は1000ダルム。昼食一回分程度の額なので、ギルドに報酬の一部を取られながら働くよりも遥かに収益率が高くなります」
「ギルドからの仕事に頼らずに、自分で仕事を取って来られれば。ってことか」
セレナの言葉に俺がそう確認すると、セレナは「そういうことです」と答えた。
「通行税?そんなの初めて聞いたぞ」
「私もグランダルム以外には知りませんが、いくつかの場所にはあるみたいですよ」
リズの言葉に、セレナは笑顔で言う。
「セレナは博識だな。他にも知ってることがあれば教えてくれ」
俺がそう言うと、セレナは表情を一層明るくして色々な話を聞かせてくれた。
それから待つこと数時間。
日が暮れる前に俺たちの順番がやってきた。




