28:惨敗
互いに武器と身体にマナを纏わせる様子を見て言う。
「やっぱりスキルの熟練度はリズが上だな」
「い、今ならわかります。リズさんの方がマナ量が多いのに、凄く高密度に圧縮されているように思います」
俺の言葉にセレナは目を凝らしながら答えた。
「はじめっ!」
号令がかかると同時。
刹那の時の中で、リズが動く。
ゴルドーはまだ動き始める前。
これが互いに斬り合う対決なら、おそらくリズに軍配が上がるだろう。
しかし、これは武器をぶつけ合う勝負。
リズの木製大剣が最も威力を増すところで、出遅れたゴルドーの大剣が威力を増す前のところで大剣同士が衝突。
今までの金属音とは全く異質な、鈍い音が会場に響く。
どちらの武器も折れていない。
二撃目が行われる。
俺がそう思い観察していると、リズは歯を食いしばっているのに対して、ゴルドーには焦りがない。
それどころか笑みを浮かべ、余裕の表情だ。
その瞬間。
俺はあることに気が付き叫ぶ。
「まずい!リズ!逃げろ!」
隣でセレナは「え?」と小さく驚きの声をあげた。
「ウォーリアーは逃げない!」
リズはそう叫びながら二撃目を繰り出した。
そして再び会場内に、鈍い音が響き渡る。
「三撃目……ま、まさか……」
「ああ!あの野郎!加減してやがる!」
セレナの言葉に、俺は怒りを込めて答えた。
体格差と武器性能の差、そしてスキルの熟練度の差を加味して、ちょうどリズの一撃を弾き返せる程度に力を加減しているのだろう。
俺たちの推察を裏付けるようにゴルドーが叫ぶ。
「どこまで持つかなぁ!?」
「おぉぉぉぉっ!」
ゴルドーの挑発に、リズは雄叫びを上げて三撃目に入る。
そしてまた引き分け。
どちらの武器も壊れない。
どちらも倒れない。
その後はゴルドーの高らかな笑い声が響き、四撃、五撃と続く。
そして十撃目。
「はぁ……はぁ……やぁぁぁっ!」
「これで終わりだぁ!クソ木剣がぁ!」
セレナの決死の叫びは虚しく、ゴルドーの罵声と大剣で、リズの木剣は打ち砕かれた。
そして、体力だけでなく、精神を削られたリズは膝から崩れ落ちる。
「なんて酷い……」
「胸糞悪いなんてもんじゃないな」
これは大会でもウォーリアー同士の戦いでも何でもない。
ただの見せしめ。
リズの心を折るためだけに行われた拷問だ。
「リズの所へ行こう」
「はい!」
俺とセレナがそう話し、移動しようとして席を立つと、勝敗が決したはずなのにゴルドーがリズに近づき始めた。
「ん?あの野郎……まさか!」
俺はゴルドーがリズに止めを刺す気だと察知して、闘技場へと駆け込み、すぐさまロックボムに着火。
リズが巻き込まれないように、ゴルドーの後方へと投げた。
「あん?」
ロックボムの威力を知らないゴルドーは、油断しながら振り返る。
直後、ロックボムが炸裂。
ゴルドーは大剣の腹で防御。
爆炎が落ち着く前に、俺はリズとゴルドーの間に立ち、睨みつけて言う。
「てめぇ!勝負はついてんだろうが!」
「おいおい。ウォーリアーの戦いだぜ?乱入すんなよ。ったく……」
ゴルドーは、呆れたように肩をすくめて答えた。
そして、不敵な笑みを浮かべながら大剣を振りかぶり言う。
「止めを刺し損ねちまったじゃねぇか!」
俺は迎え撃つために、拳に炎を纏わせて構えた。
すると受付の男性が叫ぶ。
「ストップ!ストーーーップ!リズ選手のお仲間が乱入したということで、この試合は無効!ゴルドー選手の勝ち上がりとなりまーす!」
その言葉を聞き、ゴルドーが「おい!止めんじゃねぇよホップ!」と受付男性の名を呼んだ。
「ホップ?受付の名前を知ってるんだな。リズと三年連続初戦に当たってることも含めて考えると、お前ら繋がってるんじゃないのか?」
そして俺は「大会二連覇ってのも何か裏がありそうだな!」と声を張り上げる。
すると周囲でざわめきが怒る。
「そう言われれば、そうだな。普通、三回も連続で同じ相手にならねぇよな?」
「ああ。それに受付男の名前何て知る機会なかったぜ」
会場がざわめきに包まれ始めたのを見て、ホップと呼ばれた受付男性が言う。
「つ、次の試合に入ります!ゴルドー選手とリズ選手は退場してください!」
その言葉に、野次が飛ぶ。
「おい運営!ちゃんと説明しろ!」
「大会二連覇が不正だったら許さねぇぞ!」
よし。今のうちだ。
「リズ。立てるか」
俺の言葉に、リズは力なく「ああ」と答えるも立てそうにない。
遅れて駆けつけたセレナに協力してもらい、なんとかリズを背に担ぐことができた。
「リズさん。私がお預かりします」
セレナはそう言ってリズから木剣の持ち手を受け取る。
「よし。急ごう」
俺たちは騒ぎに便乗して、会場を後にした。
昨晩、野営をした場所へと戻り、リズを下ろす。
するとリズは力なく涙ながらに言う。
「ちくしょう……あんなに鍛錬したのに……なんにもできなかった……ちくしょう」
そのあまりにも悲痛な言葉を聞き、セレナは涙を浮かべた。
さらにリズは言う。
「すまない……こんな情けない姿を見せてしまって……すまない……」
「そ、そんなことありません!リズさんは頑張りました!」
セレナの言葉を聞き、リズは「すまない……応援してくれたのに本当にすまない……」と涙を流し地を叩く。
俺は、リズとセレナの涙を吹き飛ばすために、思い切り息を吸い込み、そして声を張り上げる。
「情けなくない!俺はリズの努力を!リズの想いを笑わない!」
さらに俺は「ダメだったんじゃない!その道がリズに合わなかったと分かっただけだ!」と叫んだ。




