24:ゴルドー
開会式後。
いまだに興奮冷めやらぬという表情で、誰も居ない壇上を見つめているリズに、俺は声をかける。
「かっこいい大剣だったな」
「あ、ああ……」
俺の言葉に、リズは壇上を見つめたままでつぶやくように答えた。
リズは本当に大剣への憧れが強いんだな。
まぁウィザードである俺でもわかるほどに、あの大剣は迫力があったから無理もないか。
「心ここにあらずといった感じですね」
リズの様子を見て、セレナは微笑みながらそう言った。
どうやらセレナも、リズの純粋な一面に好感を抱いているようだ。
「リズ。開会式は終わったよ」
俺がリズの方に手を置きながら、そう声をかけると、リズは「ひゃっ!」と可愛らしい驚きの声を上げた。
そしてリズはこちらを見て言う。
「な、なんだ。ルークか。驚かせないでくれ」
リズはそう言うと、またすぐに壇上を見つめ始めた。
その様子を見て俺は言う。
「すごい剣だったな」
「あー。あのヴェルグが作った大剣だからな」
俺とリズがそう言うと、セレナが「ヴェルグさんと言う方は有名なスミスなのですか?」と尋ねてきた。
するとリズは興奮気味に言う。
「有名どころじゃない!スミスの最高峰!全ウォーリアーがヴェルグの打つ武器を使いたがっているさ!」
「リズ。落ち着いて。俺たちみたいに大剣や戦斧に無縁のエンブレムだと知らない人の方が多いよ」
リズを制止するように俺が言うと、リズは「そ、それもそうだな」と答えた。
「ルークさんはご存知なんですか?」
「ああ。ガンダイが話してたからね。いつかは俺も奴みたいな武器を仕上げてみてぇもんだぜってね」
セレナの言葉に、俺がガンダイの真似をしながら言うと、セレナは「ふふ。よく似てますね」と答えた。
「他のスミスから憧れられるほどに凄い方だと言うことは分かりました」
セレナはそう言ってから「リズさん。明日は応援しますね」と続けた。
「ああ!任せてくれ!」
リズがそう答えると、ひときわ大きな男性ウォーリアーが声をかけてくる。
「お前なんかに何を任せるってんだ?木剣」
そう言われたリズは、そいつを睨みつけながら「ゴルドー」と呟いた。
するとゴルドーは続ける。
「あんな惨敗したのに今年も出るとはな。恥を晒してよく生きられるな」
その言葉を聞いただけでわかる。
俺は敵だ。
俺がイラつき始めるとすぐにリズが言う。
「前回と同じことが起きると思うなよ」
するとゴルドーは冷笑して答える。
「前回だけじゃなくて、その前もだからな。二度あることは三度あるだろうぜ」
ムカつく奴だな。
ここでやるか……いや、この手の輩を黙らせるには実力でねじ伏せるしかない。
リズに任せるべきだな。
俺は自分にそう言い聞かせて無理矢理気持ちを落ち着かせた。
しかし、落ち着きはしたが、なるべく早く消えて欲しい。
「ん?なんだあいつら?」
俺がゴルドーにイライラしていると、こちらを見て笑ってる三人組がいた。
エンブレムは見えないけど、体型や装備からして、男性のウィザードとアーチャー。
もう1人は女性のプリーストといったところだろう。
ひょっとしてこいつの仲間か?
「おい。待ってるみたいだぞ」
俺は「さっさと消えろ」という意味を込めて言う。
しかし、ゴルドーには伝わらない。
「俺はそこの孤独な才能に恵まれぬ者とは違って、才能にも仲間にも恵まれててな」
ゴルドーはそう言うと、自慢げに銀板のついたネックレスを見せつけてきた。
回りくどい筋肉バカだな。
普通に冒険者のパーティメンバーだって言えよ。
「まぁ、職業訓練所を卒業したかどうかも怪しい木剣には辿り着けない領域だわな」
「貴様っ!」
ゴルドーの言葉を聞き、リズが睨みつける。
しかし、ゴルドーは臆するどころかマナを漲らせながら嘲笑って言う。
「なんだ?やんのか?ろくに武器を振るえないウォーリアーの出来損ないが!この俺に勝てると思ってるのか!?」
ゴルドーは背中の大剣を手に取り、全身と大剣にマナを漲らせながら構えた。
しかし、リズは誘いに乗らず睨みつけるだけ。
こいつ……口だけじゃなくて強いな。
マナ量が多いうえに、全身と武器にマナを高密度で圧縮してる。
大剣と巨躯が相まって、かなり強力な一撃を放つはずだ。
おそらくナイトリッチと同じかそれ以上の技量の持ち主だ。
対するリズは……このままじゃリズには勝ち目がなさそうだ。
でも、俺にはリズの気持ちがわかる。
勝ち負けじゃない。
引く訳にはいかないんだ。
俺が戦いの行く末を見守ることを決めた時、セレナが言う。
「大会外の揉め事は禁止では?」
その言葉を聞き、ゴルドーはマナを抑えて舌打ちをした。
「ふん。大会でぶちのめしてやるよ。いや、俺にやられる前にどっかの誰かにやられるか」
ゴルドーはさらに「一回戦で当たることを願ってろよ」と言い残し、仲間の元へと歩いて行った。
あのデカ物もデカ物なら、仲間も仲間だな。
へらへら笑いやがって。
「俺たちは明日の大会を見届けてから次の街に向かう。ってことでいいかな?」
俺がそう言いながらセレナを見ると、セレナは明るい表情で「はい!リズさん!応援してますね!」と答えた。
しかし、リズの表情は暗く「ああ。ありがとう」と答えるだけ。
俺は様子が気になり提案する。
「野営なら一緒にどうだ?話したいこともあるし」
「ん?あたしは構わないが……その……」
リズはそう答えながらセレナを見た。
この反応……
「俺たちは旅の仲間だ。恋人じゃないぞ」
「でで、で、です!」
俺とセレナの返事を聞き、リズは「そ、そうか。気を遣って済まない」と答えた。




