22:木剣
「ウォ、ウォーリアー!?」
セレナと顔を見合わせたあと、俺は思わず驚きを言葉にした。
「そ、そうだ!悪いか!その反応はもう百万回は見てきたさ!」
俺の驚きの言葉に、リズはへそを曲げるようにそっぽを向いて言った。
「俺を見て驚く人の気持ちが初めて分かったよ」
俺はそう言ってから「俺はウィザードだ」と続けた。
「ウィ、ウィザード!?その体格でか!?」
「ああ、そうだ。その反応はもう百万回は見て来たさ」
俺と同じように驚きを言葉にしたリズに、俺は笑顔でそう答えた。
「す、すまない。あ、あたしも……あたしがウォーリアーだと驚く人の気持ちが今初めて分かったよ」
「ああ。お互い様ってことで」
リズの言葉に俺がそう答えると、リズはセレナを見て「ひょっとしてファイターかアーチャーとか?」と尋ねた。
するとセレナが慌てて言う。
「い、いえ。私はエンブレムと体格の差はなく、見た目通りのプリーストです」
そしてセレナは「見た目は普通なんですが、体力とマナ量が少ない才能に恵まれぬ者です」と続けた。
その言葉に続く。
「申し遅れた。俺はルーク。魔術での遠距離攻撃が出来なくて、ファイターみたいに鍛えるしか道がなかったウィザード。もちろん才能に恵まれぬ者だ」
「セレナです」
俺に続き、セレナが挨拶しながら会釈をするとリズは、目を見開き「初めて見た」と呟いた。
「面白い組み合わせだろ。俺たちは……っていうか俺は冒険者登録をするためにグランダルムへ向かう途中だ」
俺がそう言うとセレナは横で鉄板のプレートを見せながら「私は登録済みなので付き添いです」と続く。
「そうか。私もこの大会が終わったら行こうと思っていたところだ」
リズがそう答えると、周囲からクスクスと笑い声が聞こえ始める。
「木剣が冒険者だってよ」
「だれが仲間にするんだよ」
そんな馬鹿にした言葉が聞こえてきたため、俺はそいつらを睨みつけてから「串焼きでも食べながら話さないか?」と移動を促した。
屋台で唐揚げと豚肉の串焼きを買い、人通りのない端っこにやってきた。
「まぁ食えよ。それでリズはなんで木剣なんだ?」
「ル、ルークさん。そんな直球で……」
俺の言葉をセレナが制止しようとした時、リズが「いいんだ。才能に恵まれぬ者同士だしな」と受け入れた。
そしてリズは、言いにくそうに、恥ずかしそうに小さな声で言う。
「……りないんだ」
「「え??」」
リズの言葉が聞き取れず、俺とセレナが聞き返すと、リズが思い切って言う。
「筋力が足りないんだよ!非力で悪かったな!」
「なるほど。筋力不足で、鉄製の大剣が振れないから木製にしてるのか」
リズの言葉に俺がそう答えると、セレナは「私はてっきり相手を死に至らしめない不殺のウォーリアーなのかなと思ってました」と続く。
するとリズが驚きながら言う。
「わ、笑わないのか?」
「自分なりに努力して道を切り開こうとしてる奴を笑う訳がないだろ?」
俺がそう答えると、セレナは「私たち、才能に恵まれぬ者仲間じゃないですか」と笑顔で答えた。
「そ、そうか。そうだったな」
リズは嬉しそうに笑みを浮かべて言葉にした。
そして今までの過程を教えてくれた。
幼少期からウォーリアーとは思えないほどに身体が小さく細い。
筋力が弱く、いまだに大剣どころか、長剣もろくに振るえないそうだ。
山盛り食べて、鍛えに鍛えたけど、なぜか少し長めの短剣を振る程度の筋力しか身に付かなかった。
「短剣なんてかっこ悪いし、やっぱりウォーリアーといえば大剣だろう」
「なるほど。軽い大剣なんてないから木製の大剣にしたのか」
俺がそう言うと、リズは「そういうことだ」と笑って答えた。
「まったく……食っても鍛えても胸ばかりデカくなって邪魔で仕方がない」
リズはそう言って自身の胸に手を当てた。
その様子を見てセレナが小さく「え……羨ましい……」と呟いた。
「「セレナ?」」
「な、なな、なんでもありません!」
俺とリズが声を揃えて尋ねると、セレナは慌ててそう否定した。
「そ、そうか。お、落ち着いてくれ」
リズがそう言うと、セレナは顔を真っ赤にして下を向いた。
まぁ色々あるよな。
ん?
ウォーリアーの職業訓練所卒業試験は、丸太や大岩を破壊すること。
木剣じゃ合格は厳しいんじゃないか?
ひょっとして俺と同じ退所組か!?
俺はリズの話を聞き、完全なる同族ではないかという淡い期待を込めて尋ねる。
「ア、職業訓練所は卒業できたのか?」
「ああ。一去年。十三のときになんとかな。」
そっかぁ……よかったな……
リズの返事を聞き、遠くを見つめた。
「マナで全身と木剣を強化して、無理やり大岩をたたき割って納得させた……って聞いてるのか?」
「す、すみません。私が代わりにお答えしますね」
リズの言葉に、セレナはそう言ってから、自身の今までの事、俺が遠距離攻撃ができないこと、そして弟との模擬戦に敗れ、職業訓練所を卒業できなかったことを話してくれた。
「お、お前たちも色々と大変だったんだな。そ、その……」
「気にしないでくれ。一瞬だけリズも退所組かと思って期待してしまったんだ」
気まずそうなリズに俺はそう答えてから「卒業できたことはいいことだ」と続けた。
……
…………
「こ、こ、このお肉おいしいですね!」
「そ、そ、そうだな!」
気まずさに耐え兼ねたセレナとリズは、そう言って串焼きを食べ始めた。
「気を遣わせてごめん。まぁそこまで気にしてないんだけどな。おかげでセレナと旅が出来てるし」
「そう言っていただけると嬉しいです」
俺が笑顔を作って言うと、セレナは嬉しそうに答えた。
「それに聞いている限りじゃ、かなり卑劣な罠があったみたいだしな。負けとして数える必要はないだろう」
リズは自分の事のように、怒りながらそう言った。
リズはいい奴だな。
「それで、リズ。聞きたいんだけど、さっきは何の列に並んでたんだ?何かに出身地とか書いてた見ただけど」
「そんなことも知らずにここに来たのか?」
俺の言葉に、リズは少し驚きながらそう言うと「戦神祭が開かれるんだ」と続けた。




