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UNGIFTED-アンギフテッド-無能と《追放》された《欠陥魔術師》は努力と工夫で異世界の《大英雄》へと成り上がる  作者: モーリー
第一巻 第二章:セレナ

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20:ナイトリッチ③

バンさんの一撃はかなりのダメージを与えたはず。


しかしナイトリッチは、意識の外側からの突然の攻撃にも関わらず、動じずに強化のスキルを発動。


全身と大剣にマナを纏い、振り返りながら大剣を薙ぎ払う。


まずい!

これは防ぎきれない!


バンさんは剣を振り下ろし切ってるため、防げない。


もしバンさんが剣を振り上げられたとしても、おそらくナイトリッチの大剣で、バンさんは剣ごと真っ二つにされてしまうだろう。


俺が氷ナイフを投げたところで、ナイトリッチのこの一撃は止められない。


刹那の時が、緩やかに流れる。


バンさんの死が不可避であると感じた瞬間。


ガキィィィッン!


バンさんを光の障壁が包み、ナイトリッチの大剣を防いだことで、金属音が響き渡った。

これは……セレナの防御魔術!


「グガァァァッ!」


ナイトリッチは雄たけびを上げ、標的をバンさんからセレナへと変更。


セレナの元へと駆け出そうとした。


しかし、セレナはナイトリッチに臆さずに言う。


「今です!」

「セレナ!君は最高の後衛だ!」


俺がそう叫ぶと、ロックボムを恐れたのか、ナイトリッチは振り返りながら大剣を盾にして守りに入った。


しかし、大剣にぶつかったのは氷のナイフ。


ナイトリッチが砕け散る氷のナイフに気を取られた次の瞬間。


すでに足元に放り込まれていたロックボムが爆発。


吹き飛ばされたナイトリッチは上半身だけとなり、地に這いつくばった。


しかし、大剣は右手に握られたままだ。


「う、嘘だろ……」


俺は驚愕を言葉にした。


なんとナイトリッチは、下半身を失ってなお、左腕一本で地を這い、大剣を引きずりながらこちらへ向かってこようとしているのだ。


「なんて闘志だ」


「きっとその闘志が彼をナイトリッチへと変えたのでしょう」


バンさんの言葉に、セレナは悲しげな表情で答えた。


たしかセレナは、グールは生前の最も強い欲求に支配されると言っていた。


つまりこのナイトリッチの欲求は、戦うことだったのかもしれないな。


こいつはきっと、生前は名のあるウォーリアーだったんだろうな。


俺は同じ戦闘職として、ナイトリッチの勝利への執念に敬意を込めて言う。


「お前のおかげでまた一つ強くなれた。ありがとう。もう休め」


そして、マナを練り、できるだけ大きな両手でやっと持てるほどの石を作り出し、ナイトリッチの頭の上に思い切り落とした。


頭を潰され、ナイトリッチは絶命。


最後まで大剣を手放すことはなかった。


終戦。


「か、勝った!」


「やったぞ!」


村人が声高らかに言う。


たった数体の小型のアニマルグールとはいえ、戦闘職ではない村人からすると、かなり恐怖を伴う戦いだっただろう。


その様子を見て、バンさんが嬉しそうに言う。


「ありがとう。恩に着るよ」


「俺じゃない。その言葉はセレナに」


俺がバンさんにそう言うと、セレナは自信なさげに答える。


「い、いえ……私はほとんど役に立ってませんから……」


「違うよ。セレナのおかげでバンさんは助かった。そのおかげで俺はナイトリッチを倒せた。セレナのおかげでこの村を救えたんだ」


俺が、セレナの行動が勝利につながったことを説明すると、セレナは目を見開きながら「わ、私のおかげ……」と言葉を漏らした。


そしてさらに俺は言う。


「情報共有も的確、回復魔術は凄腕、防御魔術の使い所は完璧。間違いなく今回の最高勲功者だよ。セレナが仲間にいてくれて本当に良かった」


「そ、そんなことを言われたの……は、初めてです」


セレナは噛み締めるようにそう言って涙を流した。


様子を見ていたバンさんが言う。


「そうだな。セレナが回復してくれなきゃ、俺は初撃で終わってたよ。本当にありがとう」


「い、いえ。無事でよかったです」


セレナがそう答えると、バンさんはさらに言う。


「それにあのナイトリッチの渾身の一撃。あれを防げる防御魔術は、そうそうお目に掛かれるものじゃない。セレナはもっと自信をもっていいと思うぞ」


「そうだ!セレナは凄いんだ!俺もレッドスコーピオンの毒に侵されたのを助けられたんだ!一日で二回も」


俺は場を明るくするために、笑い交じりに言葉にした。


しかし、周囲からは俺が思ったのとは異なる反応が返ってきた。


「レッドスコーピオンの毒って……」


「あ、ああ。猛毒どころじゃないぞ……」


話を聞いていた村人たちが口々に言うと、バンさんは「レッドスコーピオンの毒は生還不可能と言われる猛毒だ。それを治すだなんて、前代未聞だぞ」と続く。


「え?そうなの?」


「お、お前知らなかったのか?」


バンさんの言葉に驚いて言うと、バンさんは呆れながら聞き返してきた。


「何にしても、絶対に秘密にしておけ。そんな絶大な回復魔術が使えると知られれば、セレナは引く手数多で、日常が乱されることになるぞ」


「わ、わかった。口外しないでおくよ」


俺がそう答えると、セレナが言う。


「わ、私は体力もないですし、たしかに魔術は得意な方ですけど、使用回数が極端に少ない才能に恵まれぬ者(アンギフテッド)なので、どこでも働けなかったんです……」


その言葉を聞き、バンさんは大笑いをしながら言う。


「ははは!そいつぁいいな!君を仲間にしなかった奴が知ったら、死ぬほど悔しがるだろうよ!」


「セ、セレナ……お、俺たち仲間だよね?見捨てないよね?」


バンさんの言葉に俺がそう続くと、セレナは嬉しそうな顔を浮かべ「もちろんです。これからもよろしくお願いします」と言ってくれた。


「か、かわいい……」


「お、俺ファンになる……」


村人からそんな言葉が聞こえ始めたため、バンさんが咳払いをして言う。


「ご、ごほんっ!さぁ皆!グールどもの腐敗臭が広がる前に片づけだ!」


「「は、はい!」」


それから俺たちは、俺が粉塵爆発で作り出した燃え上がる廃屋に、グールたちの死体を投げ込み火葬。


明るくなる前に、決着。


朝になって村人から多くの感謝の言葉を受け取り、僕たちは次の街へと向かった。



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