↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UNGIFTED-アンギフテッド-無能と《追放》された《欠陥魔術師》は努力と工夫で異世界の《大英雄》へと成り上がる  作者: モーリー
第一巻 第一章:ルーク

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/54

第11話:欠陥魔術士は戦いを挑む

ローウェンに呼応するように、俺が拳を構えると、観客席から失笑が起きる。


「おいおい。マジかよ」


「まるでファイターじゃねぇか」


馬鹿にした大人たちの声。


そこに純粋な子供の質問が混じる。


「パパ。あのお兄ちゃんはウィザードじゃないの?」


「コラ。領主様に聞こえるだろ。あいつは才能に恵まれぬ者(アンギフテッド)。まともに魔術が使えないから、杖を持たせてもらえなくなった」


違ぇよ。


持たせてもらえないんじゃねぇ。


持つことをやめたんだ。


どれだけ優れた杖を持っても、魔術による遠距離攻撃ができなかった。


色々試した結果、杖を持たない方が、自分の能力を引き出せる。


そう思って今のスタイルにしたんだ。


俺が心の中で観衆に指摘をし終え、ローウェンへと意識を集中させた瞬間。


訓練員が「はじめ!」と言って開戦の合図をした。


俺とローウェンがマナを練り始めたのは同時。


それなのに、俺がいくつかの小石を右手の中に生み出している間に、ローウェンは俺の頭上に無数の氷槍(ひょうそう)を生み出し落下させてきた。


「くそ!何て奴だ!」


俺は氷の槍を左右に避け、少しずつ前に進む。


そして躱す勢いを利用して、そのまま小石を投げつける。


「ふん。くだらない」


ローウェンはそう言うと、風魔術を発動。


旋風を巻き起こし、小石を弾き飛ばした。


「地魔術ってのはこうやって使うんだよ」


ローウェンは蔑みと憎しみを込めながら言い、地魔術を発動。


空中に無数の礫を生み出した。


そして目にも止まらぬ速さで連続射出。


「まずい!」


俺はすかさず右側へ飛び込むようにして回避。


反撃の隙など与えてくれない。


転がり、走り、跳躍し防戦一方。


ダークベアーの装備のおかげで、何とか持ちこたえているが、いくつか被弾したところの骨が軋んでいるのが分かる。


さらに連射速度を増して、礫が放たれる。


躱しても躱しきれない。


多く……被弾しすぎてる……


俺は痛みに耐えかねて、倒れ込む。


そしてそこに降り注ぐ礫から、ロングコートに包まるようにして身を守る。


「もう終わりか」


ローウェンがそう言い、礫の嵐を止めると、観客席から罵声が飛ぶ。


「勝負になってねぇじゃねぇか!」


「ちゃんと戦えぇ!」


その言葉に周囲からも続けて罵声が飛ぶ。


少しは俺の事も応援しろよ。


俺も領主の家系のはしくれだぞ。


俺はそう思い、怒りを力に変えて無理やり立ち上がり、観客に向けて叫ぶ。


「だったら!お前らがローウェンに立ち向かってみろよ!」


俺の言葉に、観客席が静まり返る。


立ち向かう覚悟もないくせに、罵声だけは一人前な奴らだ。


俺が怒りを込めて観客席を睨みつけると、ローウェンは呆れ笑いを浮かべて言う。


「おいおい。領民を脅すなよ。それでも領主の端くれか?」


そして言い終えると同時に、氷魔術を発動。


巨大な氷塊が降ってきた。


でかすぎるだろ!


俺は小石をローウェンに投げつけながら後方へと回避。


俺がいた所に巨大な氷塊が落下して、隠れ蓑ができた。


今だ!


視線が遮られた瞬間。


俺はローウェンの頭上にロックボムを投げた。


そしてロックボムに気づかせないために、俺は自らを囮にする。


「喰らえ!」


氷塊の陰から飛び出し、あえて声に出す。


地魔術で作り出した石のナイフをローウェンの膝目掛けて投げる。


ダメージを与えられなくていい。


届かなくてもいい。


目的はローウェンの視線を下げることだ。


「おいおい。ちゃんと狙えよ」


ローウェンはそう言うと、力の差を誇示するかのように、風魔術を発動。


俺の投げた石のナイフを風で操り、軌道を変えて、俺に向けて放った。


ダークベアーの装備を突き抜け、深く石のナイフが刺さる。


しかし、作戦は成功。


「ボンッ」


俺がそう言葉にした次の瞬間。


会場に炸裂音が響き渡り、爆炎がローウェンを襲う。


まずい。


炸裂の瞬間に、一瞬だけ見えたローウェンの表情。


何かする気だった。


今は待つよりも畳みかけて、反撃の機会を減らすべきだ!


俺がそう思い、距離を詰めると同時。


風が吹き、爆炎が晴れる。


見えてきたのは、氷を身に纏うローウェン。


おそらく咄嗟に氷魔術で体を覆い、一部が爆炎で溶けた。


そして、溶け切る前に風魔術で旋風を巻き起こし、払いのけたのだろう。


しかし、左耳からは血が出ている。


おそらく爆炎は防げても、炸裂音までは防ぎきれなかったのだろう。


一秒にも満たない時の中で、俺は瞬時に状況を判断。


すぐさまローウェンの頭上に着火したロックボムを投げた。


「貴様ぁぁぁぁ!」


ローウェンは怒りのままに叫び、マナを滾らせ風魔術を発動。


自分を中心とした竜巻を生み出した。


巻き上げられたロックボムは空高くで爆発。


その爆風を受けても竜巻は収まらない。


俺は小瓶を取り出し、蓋を取り竜巻に向かって投げた。


燃える水が竜巻に飲み込まれていく。


さらにそこへ、燃える水をしみ込ませたロープを投げると、勢いよくロープが竜巻に飲み込まれていく。


そこへ着火。


一瞬にして炎が巻きあがり、会場は熱波に包まれた。


火炎の竜巻。


おそらく酸欠状態になってすぐに出てくる。

そこを全力で叩く。


もしくは、作戦がうまくいけば……


一秒にも満たない時間。


俺が次に備え思考を巡らせていると、ローウェンが叫び声を上げる。


「うわぁぁぁっ!」


火炎の竜巻で見えないが、おそらく中で焼かれているのだろう。


バタバタともがく音も聞こえてくると、風が止み、火の粉を散らしながら火炎の竜巻は消えた。


すると、見えてきたのは、燃えるロープが絡まり身動きが取れなくなったローウェン。


作戦が成功したか。

これで終わりだな。


「風魔術を使ったのは失敗だったな。降参するか?」


俺が尋ねると、プライドが傷ついたローウェンは、立ち上がることもできない状態なのに威勢を崩さずに言う。


「ク……ソ……ッ!ふざけるな!この僕が負けるわけがない!」


「やせ我慢をするな。お前は痛みに慣れてないんだ」


ウィザードは遠距離攻撃ばかり。


前衛はウォーリアーやファイターに任せるため、攻撃を受けることがあまりない。


とくに俺たち職業訓練所(アカデミー)に通う者は、一様に実戦経験が不足している。


さらに領主の血筋に生まれたローウェンは、生まれてこのかた、怪我という怪我をしたことがない。


「無様だな。才能に恵まれし者(ギフテッド)。早く降参しないと跡が残るぞ」


「うるさい!卑怯者め!」


俺が燃え続けているロープを見て言うと、ローウェンは俺を睨みつけながら答えた。


その答えを聞き、俺は呆れて言う。


「卑怯?条件通りじゃねぇか。俺はどんな手段を使ってもいいんだろ?俺なりに考えた結果。努力の賜物だ」


そして俺は「卑怯って言うのはお前やクソ親父みたいな奴の事を言うんだよ。試験前に毒針なんか持ち出しやがって」と続けた。


「ふん!なんのことかさっぱりだ!」


ローウェンは俺を睨みつけたまま、怒りに任せてマナを練り始めた。


「させるか!」


俺は慌てて拳に雷を纏って殴りかかるが、数瞬早く、ローウェンの氷魔術が発動。


ローウェンに巻き付いていた燃えるロープは凍てつく。


さらにローウェンを中心に、地中から氷の大棘がいくつも突き出した。


「くそ!まだこんな力を!」


俺は慌てて緊急回避。

飛び込み転がるようにして、大棘を躱す。


隠れ蓑にさせてもらうぜ。


大棘の影を走り抜け。もう一本のロープを投げる。


ロープの先には点火したロックボム。

ただ投げつけるだけでは当たらない。


俺はそう思い、遠心力と大棘を使用して、ロープの先を方向転換させて背後で爆発させた。


勝機!


「おぉぉぉ!」


雄叫びを上げながら一気に距離を詰める。

拳には雷魔術。


いくつかの氷の大棘がかすり、脚や腹、頬に傷を負ったが、その程度の事では怯まない。


俺は思い切り振りかぶり、殴りかかった。


俺の勝ちだ!


俺が直撃と勝利を確信した時、今朝よりも強烈なめまいに襲われ、そのまま倒れてしまった。


何が起きたんだ……

まさかレッドスコーピオンの毒……


薄れゆく意識の中で、観覧席に視線を向けると、クソ親父が何かしているのが見えた。


おそらく風魔術で毒針を飛ばしたのだろう。


「クソ……親父め……」


俺の言葉と意識をかき消すように訓練員が叫ぶ。


「それまで!勝者ローウェン様ぁぁぁ!」


大歓声が徐々に聞こえなくなり、俺はそのまま意識を失った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。