第3話 第2話 国王即位
「大体、召喚するなら俺じゃないだろう。国王に責任取らせろよな」
「いいえ。国王様は元の世界に奥様がおられます」
「どういう意味だ」
「スイ様は、その点独身。何をしようが不倫の心配がありません。たとえば……」
マリンはそっと目を閉じると、唇を寄せて来た。
「おい! どさくさに紛れて何しようとしてんだ! いいか。俺は早く元の世界に戻せって言っているんだぞ」
「それが、魔法陣は一度使えば、もう一度新たに作り直さなければなりません。現在我が国は、とんでもない税収不足と黄金米の歴史的不作に見舞われているのです。しかも!」
「なんだよ」
「勇者様が決められた税率1割と黄金米の大安売りにより国庫は底を尽きました。おまけに勇者様たちを呼び戻すための出費で我が国の財政はすっからかんです」
「何で俺たちのせいみたいになってんだよ。税率にしろ、黄金米の値段にしろ、上げればよかったんじゃないか」
「そうっすよ!」
「何か、訳でもあったの」
「さすがは珠莉様。我が国の税率と黄金米の販売価格は王命によるもの。変更するには王の勅命が必要です……コホン」
マリンは小さく咳払いをして言葉を区切ると、目をくわっと見開いた。
「にもかかわらず、我が国は王が不在のため、どうすることも出来なかったのですっ!」
「……不在なら王の子どもなり孫なり即位させればいいだけの話だろ」
「それが、先王にはお世継ぎはおろか血縁者がおられず、私たちは頭を抱えていたんです」
「そんな事情、俺の知ったことじゃないだろうが!」
「すいません勇者様。一旦こちらにおかけになって気をお沈め下さい」
あまりの俺の剣幕にマリンはくびをすくめると、俺に椅子をすすめてきた。
どうみても、日本のゲームチェアーである。
試しに座ってみると、なかなか座り心地がいい。
すると、椅子自体が光を帯び、鑑定している訳でもないのに、俺の目にこんな文字が浮かび上がってきた。
≪新たな王を、認識しました。これより、スイ=アルベルトが第24代国王に就任したことを認めます≫
「おい、何だこれは!」
「玉座が勇者様を、新たな王として認めたということですね」
「お前が勝手に座らせたんだろうが! しかも苗字まで変わってるし!」
「そんな人聞きの悪いことを言わないでください。勇者様におかれましては、今後は国王様を兼務していただくことになります」
「嫌だ!」
「先王、レイ=アルベルド様は、玉座の勇者と呼ばれ、座った者を王にするという強力な固有スキル『ゲームチェア』をお持ちでした。国王不在という我が国の問題も、これで万事解決ですね」
「何勝手に解決してんだ! 王族なんて、どこかにいるだろうが! 何で俺みたいな奴が王を継がなきゃいけないんだ!」
「ふぅ……」
俺の真っ当な主張に対し、マリンは小さくため息をついて肩をすぼめた。
「かつての王族の方々からは、全員、国王即位を断られています。そして先ほども申し上げた通り、先王に至っては高齢の上、元の世界の奥様にばれたら一大事ということで、お世継ぎをおつくりになろうとはなさいませんでした」
「だからと言って、何で俺が、皆が嫌がる役を引き受けなきゃならんのだ」
「それは、勇者様は国難にあたっては、全権を担うという我が国の不文律があるからでして……」
「こ、こっ、これがお前らのやり方かぁーっ‼」
こうして、俺は第24代国王として正式に即位することになってしまったのだった。




