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第2章 第14話 リリアナ

「勇者殿一行のおかげで我がオルレアンは救われましたわ。勇者殿には、我が国から褒章を差し上げるつもりです。さあ何でも遠慮なくどうぞ」


 リリアナは玉座から立ち上がり、両手を広げて満面の笑みを浮かべた。


(勇者様、ここは遠慮なさらず、金塊でも宝石でも言っておくべきですよ)

(そおっすよ。元の世界に戻るにはお金がいるんすから)


「いや、特にありませんけど……」


 俺はマリンやハム太の言葉に耳を貸さず、静かにかぶりを振った。


「あ~ん。困りましたわ。ということは、褒美としてわたくしをお望みということですのね!」


「何でそうなるんですか!」


 余りのことに俺は、心の声を口走ってしまった。


「うふふ。戯れに申したまでのこと。残念ですが、わたくしには幼き頃より許嫁がおりまして」

「それってまさか……」

「今後、国主の座は弟にゆずり、後見となるつもりです。女にとって王座なんかより妻の座の方がいいにきまっておりますもの」


 リリアはそう言うとイリアスの腕を取った。


「国主様、人前でこのような」

「もう、イリアス様ったら何を固いこと言ってるの。国主じゃなくて、リリアナと呼んでって言ってますのに。もう心臓も取り戻せたのだし、安心して結婚できますわね」

「国主、いやリリアナ様。今は、勇者殿の話を……」


「あら、わたくしとしたことが……勇者殿の褒美の話でしたわね。それで、つまりこの身を差し上げる以外でしたら、望みをかなえて差し上げたいのですわ」

「そこまで言われるのでしたら、珠莉……いやジュリアと一緒に元の世界に戻ることをお許しください」


 いつの間にか、珠莉がやってきて、俺の横で平伏している。


「う~ん。ジュリアはもうしばらく近衛騎士団を率いて欲しいんだけど……わかりましたわ。何でも好きなものを与えるって言ったのは私ですから。ジュリアはオルレアンの復興が片付き次第、勇者殿の元に行くことを許可します。もう少しだけ働いてね」

「「ありがとうございます!」」


(ねえ、ねえ、ハムちゃん。やっぱりあの二人仲良さすぎない?)

(そんなことないっすよ。よく口げんかしてたっす)

(そこがアヤシイのよね~)

(マリン様、お二人にまる聞こえっすよ)


「うふふ。私にも聞こえてますわよ」


 リリアナは笑いをかみ殺すと、ジュリアに歩み寄った。


「実は王国で勇者召喚に成功したという一報を聞いて、全力で王国との国境辺りを探させたの。ねえクレア」

「はい。オルレアンの国力を総動員しての捜索でした。おかげで商業活動は滞り、契約を一方的に破られた商人たちは怒って出て行ってしまいました。おまけに新聞でもあのよう報道されて……」


 クレアは当時の苦労を思い出したのかハンカチで目頭を押さえている。


「だって、勇者の召喚には巻き込まれた異世界人がつきものですもの。全員が強力な固有スキルを持っているんですから、何をおいても一番に手に入れないと。ジュリアが記憶を失くした状態で保護されて、ホントよかったですわ~」

「と、言われますと?」


 俺の問いにリリアナはキョトンとした顔を見せた。


「だって、記憶が無いんだからこっちの都合のいいことを吹き込み放題でしょ。普通の女の子ならよほどの変わり者か勘違い女でもなければウチの騎士団長なんて引き受けてくれないもの。クレアが上手に吹き込んでくれたおかげでもあるけど、ジュリアが元々オルレアンの近衛騎士団長だったなんてほら話を信じてくれて助かったわ」

「リリアナ様!」

「なあに?」

「心の中で思われていることを、安易に口にしないでください! 大体今回のことでもリリアナ様がもう少し自重なさればここまでにはなってませんでしたよ」

「あら。あのヴィクターとかいう商人のことですの? だって、あの方ったら誰が見てもまるわかりの被り物をしておられましたもの」


 リリアナはそう言うと、おかしそうに扇子で口元を隠した。


「私、自分より背の低い殿方が威張っておられるのが許せませんの。あの商人ったら身長を盛られているようでしたわ。シークレットシューズはさすがに脱げないでしょうから、パーティーで被り物を取って差し上げたのですけど……。それが身長より頭髪の方が問題だったみたいですわ。新聞にはこのお話、一行も載ってませんでしたわね。不思議ですわ~。プーッ。クスクス」

「リリアナ様、そういうところですよ!」


「勇者様、国主、いやリリアナは見ての通り裏表のない素直な性格で……」

「そこ、甘やかさない‼」


 この後、あきれる俺たちの前で、クレアのお小言が延々と続いたのだった。

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― 新着の感想 ―
う~む。 リリアナ様の発言は女性全体を見ての発言なんだろうか。 個人的に身分性別年齢問わず欲望の形なんて人それぞれだと思いますが。 女王になりたい女性もいるんじゃ。
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