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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
4章

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第80話 兄妹


 雅が次郎さんと勝負した所までは良かったのだが、何やらチートを使いまくって勝利したらしい。

 ここまではまだ許容範囲だったのだが、明らかに舐めた口をきいている事が分かり思わずイラッと来てしまった。

 おっ前チートに頼ってんのに、余裕ぶっこいて年上の人を見下してんじゃねぇよ。


「雅! お前は礼儀作法ってモンを未だに理解してないのか! 試合ってのは礼に始まり礼に終わるって言うだろうが馬鹿! そこになおれ! チョップしちゃる!」


 シャームに拘束されている為、相も変わらずバッグから荷物を取り出して投げつけてやれば。

 相手も此方が怒っているのが分かったらしく、大人しく木刀を引っ込め俺に向かって何か叫んでいる。

 こっち来いバカタレ! 説教してやる!

 などと叫びつつウゥ~と威嚇する声を上げていると。


「――――」


 なんか、耳の長い少女が声をかけて来た。

 その手に俺が投げた金リンゴを持って。

 あ、もしかして拾って来てくれたのかな。

 どうもどうもとお礼を言ってから金リンゴを受け取り、ヒョイッとバッグの中に戻してみれば。


「――、――?」


 何やら言葉を紡ぎながら、不思議そうに首を傾げられてしまった。

 多分エルフ、で良いんだと思う。

 リリシアみたいな長い耳してるし、物凄く色白。

 エルフは若い頃から美人なんだなぁとしか感想が出てこない。

 それくらいに綺麗な女の子。

 妹より少し年下くらいだろうか? 雅も少しこの子から礼節というモノを学んだ方が良い。

 明らかにこっちの子の方が年下なのに、身なりも態度もお淑やかだ。

 とはいえ。


「あ、すみません。俺こっちの言葉まだ良く分からないんで」


 すんませんと両手を合わせ、ペコッと頭を下げてみれば。

 彼女は何やら小声で呟いてから、喉に手を当て「あー、あー」と調整している様子を見せる。

 何をしているのだろう?

 もしかしてこの子は、歌手とか声優みたいな仕事をしているのだろうか?

 他の職業で急に発声練習始める人とか、俺には想像出来ないのだが。

 そんな事を思いながら、しばらく声を上げる彼女の事を眺めていれば。


『これで、通じますか? 私の言葉、ちゃんと伝わっていますか?』


「ふぉぉぉ!? 急に日本語喋り始めた!? 次郎さん! これ日本語だよね!?」


「う、うん。そうみたいだね……何かのスキルかな?」


 試合も終わり、いつの間にか此方に戻って来ていた次郎さんもそんな感想を溢した。

 スキルってやっぱりすげぇ、こんな事も出来るのかと感心しながら彼女の事を眺めていると。


『そちらの方も、同じ言語なのですね。初めまして、私はエルフの里で“預言者”、または“巫女”と呼ばれている存在です。名を“フィリアリス”と申します』


 おぉぉ……これはまた凄い名乗り文句な人が登場した。

 やっぱりエルフで、更には預言者?

 まだ幼そうなのに、物凄く礼儀正しく挨拶されてしまったではないか。

 と言う事で、此方もペコッと頭を下げてから。


「どうも、初めまして。俺は須賀 旭って言います。須賀が苗字で、旭が名前です」


「あ、えっと。俺は鹿島 次郎って言います。よろしくお願いします」


 次郎さんと二人で自己紹介してみれば、彼女は少しだけ驚いた様子で此方の顔を見つめて来た。

 何か変な事を言ってしまっただろうか?

 ちょっとだけ不安になりながら、彼女の言葉を待っていれば。


『スガ アサヒ様に、カシマ ジロウ様ですね。随分と名前の発音が独特ですので、おかしくなってしまったらすみません。私の名前も、呼び辛ければ好きに呼んでくださいませ』


「えぇと、今の所発音は大丈夫ですよ? 敬語とか様とか要らないんで、適当に呼んでください。俺、皆からはスーって呼ばれてます。こっちは……どうしよ。せっかくの提案だし、“フィー”とか呼んでも良いですか? 間違いなく覚えやすいし。それにスーとフィーだったら友達っぽくて良いかなって」


 流石に馴れ馴れしかったかな? とは思うが。

 でも結構覚え辛い名前の人が多い世界なのだ。

 多少はこういう名前の人が居た方がありがたいって事で、提案してみたのだが。

 相手は笑顔のまま数秒間停止した後。


『……スー、と呼んでも構わないと言う事でよろしいですか? 此方も“フィー”と呼んでいただいて問題ありませんよ。お互い覚えやすい名前の方が記憶に残るでしょうから、よろしくお願いいたします。そちらの男性は、ジロウ様でよろしいですか?』


「あ、俺も適当に呼んでください。皆にはジローって言われてますし、様もいらないです」


『ではスーと、年齢的にジローさんと呼ばせて頂きますね。エルフは長生きですが、私の場合は見たままの年齢ですから』


 ニコッと微笑む彼女は、柔らかい雰囲気のまま再びスッと頭を下げて来た。

 本当に礼儀正しい子だな、マジで妹にも見習ってほしい程に。

 という訳で此方もペコペコ頭を下げていると。


『今使っているこのスキルは、未知の言語でも言葉のやり取りを可能としてくれるモノ。しかし時間制限がありまして、今日は御挨拶だけで終わってしまいそうです。お二人さえよろしければ、明日もまたお話したいと思います。私はもっと、貴女達と――』


 喋っている途中で、彼女の言葉が分からなくなってしまった。

 どうやら、先程言っていた時間制限が来てしまったのだろう。

 本人も少し困った顔をしてから、ペコッと頭を下げてきた。

 まぁ、こればかりは仕方ない。

 と言う事で、次郎さんと一緒にお辞儀で返すのであった。

 すげぇ、“こっち側”でやっと言葉が通じる人が出来たよ。

 今までちゃんと言葉が通じるの、次郎さんとビルだけだったからね。

 コレは嬉しい進展だ、何てことを思いながら思わずニコニコしてしまうのであった。


 ――――


「ちょっと、アンタ何な訳?」


 先程から急に言語が変わり、スーと呼ばれている私と同じ顔の女とペラペラ喋っていたエルフ女。

 何となく聞き覚えがある発音なのに、何故か言語の意味が理解出来ない。

 この雑な通訳機能にイライラしながら、相手方の会話が終わった頃声をかけてみれば。


「あら、此方の少女と同じ顔でしたから貴女は同じ出身かと思いましたが。私の勘違いでしたか」


「いちいち同じ顔とか言わなくて良いわよ、私だって気持ち悪いって思ってるくらいなんだから。一応言っておくけど、私とソイツは何の関係も無いからね? 双子でも無ければ、姉妹でもない。全くの赤の他人よ」


「まぁ……そうでしょうね。あちらの方が理性的に喋っておられます、貴女からは正直理性の欠片も感じない。戦い方もそうですが、周りを全て敵に回しそうな言動も……正直理解出来ません」


「は? 何、喧嘩売ってる訳?」


 思わず一歩踏み出そうとした所で、タンクのフォールにガシッと肩を掴まれてしまった。

 いちいち問題を起こすなと言う事なのだろうが、何かコイツさっきから喧嘩売ってない?

 妙に突っかかって来るというか、物凄く私の事を見下しているみたいな。


「コレだから“人族”も嫌いなんです……何も理解していないのに、自らの主張ばかりが強い。全ての者がそうだと思っている訳ではありませんが、貴女の様な人族は嫌いです。自らが頂点に立って居るかの様な物言いをする。どこかの長寿な連中を思い出します」


 思い切り舌打ちを溢されてしまった。

 これはもう、決まりだろう。


「フォール、放して。コイツ間違いなく喧嘩売ってる」


「ミー、止めろ! ここが何処か忘れたのか!? そこらで喧嘩するのとは訳が違うんだぞ!」


 ウチのタンクに押さえつけられ、バタバタと暴れていれば。

 彼女はフンッと呆れた様な視線を此方に向けてから。


「そうやって、すぐに牙を剥く。本当に獣と変わりません。だから嫌だったんです……何故“世界樹”はこんな地に生えて来たのか。スガ アサヒさんが金のリンゴを持っていた事から、この地に居る“人族”は関係ないと考えた方が良いのかもしれませんね。まぁ、それなら願ったり叶ったりですが」


 疲れたような表情と共に、彼女はそんな言葉を吐いた。

 待て、待ってくれ。

 今お前は、何と言った?


「アンタ今、須賀旭って言った?」


「はい?」


 疲れた表情を浮かべるエルフの女の子は、今度は何だとばかりに視線を向けて来るが。

 それどころじゃないんだ。

 今、お前が紡いだ名前。

 何処で聞いた? 何故知っている?


「須賀旭という名前を、何処で聞いた? お兄ちゃんは今、どこに居る?」


「貴女は、何を? お兄ちゃん? だってスーならそこに……」


「はぐらかすな!」


 噛みつく勢いで飛び出そうとした瞬間、フォールから地面に叩きつけられる勢いで取り押さえられてしまった。

 邪魔だ、私はコイツに話があるのだから。

 ジタバタと暴れながらも、エルフの小娘を睨みつけていれば。


「ミー! 何をしているんだ! 本当に不味い、相手が何者かも分からない状態で牙を剥くな!」


「うるさい! コイツはお兄ちゃんの情報を何か知っているんだ! 教えろ! お前はどこでその名前を聞いた!? お兄ちゃんはどこに居る!?」


 本当に獣にでもなってしまったかの気持ちで、牙を剥きながら全身を無理にでも動かした。

 私を取り押えているのは、タンクの役割を持つフォール。

 だからこそ、無理に動けば関節の一つでも外れてしまいそうだったが。

 それでも、止まらなかった。

 邪魔だ、退け。

 私は、私の目的は。

 こんな世界に来てまで取り戻したかったその人の情報が、目の前に転がっているのだ。

 手を伸ばさない奴が居る訳がない、だったら。


「スキル……“身体強化”、“限界突破”」


「ミー! 止めろ!」


 叫ぶ仲間を尻目に、スキルまで使用して無理矢理拘束を振り解いた。

 その際、ゴキッと嫌な音が左肩から響いた気がするが。

 関係ない、相手はどう見ても戦う事など出来そうに無いエルフの女。

 だったら、右手の一本でもあれば組み伏せて情報を引き出す事くらい――


「雅! ――!」


 目の前に、私と同じ顔をしたケモ耳の少女が飛び出して来た。

 両手を広げ、まるで彼女を守るかの様にして。


「退け! 退けよ! 私はソイツからお兄ちゃんの話を――」


「雅! ――――、――!」


「何言ってるか、分かんないのよ! 何なんだよお前は!」


 こんな奴、避けて相手に掴みかかってしまえば良い。

 だと言うのに、何故だろう。

 この子が正面に迫り、何かを叫びながら真っすぐ此方を見つめて来た瞬間。

 身体が動かなくなってしまったのだ。

 まるでお兄ちゃんに怒られている時みたいに、申し訳なさと悔しさが込み上げてくる。

 いつだってそうだった。

 兄は滅多な事では私を怒ったりしない、怒るのは他人に迷惑を掛けた時だけ。

 我儘を言ったって疲れたような表情を浮かべながら、私の話を聞いてくれた。

 それでも他の誰かに迷惑を掛けた時だけは、こうして正面から本気で怒られるのだ。


「何なのよアンタは! 結局お前が一番意味不明なのよ! なんで私と同じ顔してる上に、言葉が分かんないの!? どうして私の目的を邪魔しようとするの!? 答えなさいよ! スー!」


 もはや良く分からなくなって来て、関係ない筈の彼女に怒鳴り散らしてみれば。

 スーは、大きな溜息を溢してから。


「――、――――。雅」


「……あっ」


 呆れた様な笑みを溢しながら、ヘッと鼻で笑って口元をちょっと吊り上げる。

 この癖を、私は良く知っていた。


『まったく……どうしようもねぇなお前は、相変わらず。俺も相手方の家に謝りに行ってやるから、一緒に来なさい。頭だけは下げろよ? 間違ってもまた喧嘩なんぞするな、いいな? 雅』


 そんな事を言いながら、お兄ちゃんはいつだって私の尻拭いをしてくれたのだ。

 こういう時、決まって私は反抗的で。


『あ、兄貴には関係ないし……だから、その』


『煩い、ちゃんと謝りなさい』


「――、――」


 何を言っているのか分からないが、なんとなく彼女の声が兄のソレと重なって聞えた。

 言葉は違おうとも、雰囲気はとにかくそっくりだった。

 コレは、どう言う事だ?

 この子、スーがお兄ちゃん?

 確かに先程エルフの子がよく分からない言葉で喋り始めてから、兄の名前を口にした訳だし。

 それにこの雰囲気、私にこんな笑みを向ける人は知っている限り一人しかいない。

 ならやはりこの子が? などと思ってしまうが……でも、だって。

 えっと、女の子だし。

 しかもケモ耳生えている上に、私と同じ顔なのだ。

 更に言うなら、“向こう側”に居た時より全身で感情を表しているというか……いや、言葉が通じないからそうする他無いのか?

 というか、女の人にも普通に抱き着いたりしているし。

 兄ならそんな度胸ある訳ないと思うのだが。

 頭の中でグルグルと思考が巡り、何も言葉に出来ずに困惑していれば。


「……はぁ、もう良いですか? 全く、獣に合わせようとしても疲れるばかりです」


「なっ! お前!」


 呆れたため息を溢すエルフ女が、踵を返して歩いていく。

 まだ話も聞けていないし、あの態度が気に入らない。

 だからこそ、噛みついてでも止めようとしてみた訳だが。


「雅!」


「っ!」


 目の前の彼女、スーの言葉を聞いた瞬間に。

 自分でも驚く程ビクッと身体が止まった。

 これ以上は不味い、お兄ちゃんを本気で怒らせてしまう。

 本能的にそう感じてしまい、思考とは裏腹に次の行動を制止してしまった。

 そんな事を思っている間に相手は会場から出て行ってしまい、周囲の皆から視線向けられる気まずい状況だけが残されていた。


「あぁ、もう……どうすんのよ、コレ。結局アンタは何なの?」


「――、――――」


「だから分かんないんだってば」


 此方も思い切り溜息を吐いて腰を下ろしてみれば、スーは私の肩にチョンっと指先で触れて来た。


「痛ったぁ!? 何してんの! 肩外れてんのよ!? 何してくれてんの!?」


「お前こそ何をしているんだ、ミー……ホラ、骨を嵌めるぞ?」


 疲れた表情のフォールが近寄って来たかと思えば、ズドンッと強い衝撃と共に外れた骨が戻った感覚が。

 ありがたいけどさ、動くようになったけどさ。

 ものっすごく痛いんだコレ……。

 プルプルと震えながらも、傷みに耐えて蹲ってみれば。

 何故か、私の頭の上にはモモンガが乗せられるのであった。


「ふざけてんの?」


「――」


「あぁもう……訳わかんない」


 目の前の少女は、ニカッと豪快に笑って見せる。

 ちっくしょう……全然分かんないのに、コイツの笑顔を見ると安心している自分がムカつく。

 そんな事を思いながら、私は医務室に連れていかれるのであった。


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