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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
4章

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第77話 馬


「まーち」


「あぁ、そうだ。今回もアーラムに行くぞ?」


 いつも通りリリシアと一緒に馬に乗っているスーが、随分慣れた様子でニコニコしながら揺れていた。

 それはもう機嫌良さそうに、ゆらゆらと。


「スー、卵は置いて来て良かったのか?」


 シャームがそんな声を掛けてみれば、彼女は機嫌良さそうにブンブンと首を縦に振っている。

 ガルバリンデから貰って来た、あの不思議な卵。

 恐らくただの置物か、死んでしまった卵だろうとは言われたが。

 それでもしばらくの間スーが抱っこしていたり、暖炉の前に放置したりと。

 今では結構適当な扱いをしているが。

 当の本人も飽きてしまったのか、最近は捕まえて来た鶏に預けっぱなしの御様子。

 アレは結局何の卵だったのだろう?


「まぁ鶏も放し飼い状態にした上、餌も大量に用意して来たからな。多分大丈夫だろう」


「鳥の方は魔獣だからどうとでもなるだろうが……帰った時に卵が無くなっていたら、スーが悲しむかと思ってしまって。大丈夫だろうか?」


 確かにそういう心配も分からないでも無い、あの鳥もスーに随分と懐いているのだ。

 恐らくは大丈夫だろうとは思うけども、もしも居なくなってしまったらまた探しに行けば良いだろう。

 卵の方は、流石にどうにもならないが。


「なるようになるさ、それにスーが置いて来る決断を下した訳だしな」


 そんな事を言いながら馬を近づけ、ガシガシとスーの頭を撫でてみれば。

 彼女はくすぐったそうに顔をほころばせ、ニコッと微笑みを返してくれる。

 聞いた話では、これくらいの年頃になると普通はもっと手が掛かるのだとか。

 もしくは反抗期に入って邪険にされる事も多いとか言われるが。

 今の所この子にその様子は無い。

 いつまで経ってもニコニコと天使の様な微笑みを返してくれる上に、夜には背中を揉んでくれる程。

 本当に出来た子も居たものだと、思わず此方の表情も緩くなってしまう。


「スー、今回もアグニの所に行くからな。分かるか? 何度も会っている王様の所だ」


「……? ――、ジロー」


「ん? あぁ、そうか。ジローも居るな、スーと同じ出身地の彼も居る」


 彼女にとっては、言葉の通じる彼の方が存在感も大きい様だ。

 ジローの名を聞いてから更に機嫌良さそうにしている。

 この光景をアグニとアレクシアに見せたら嫉妬しそうだな。

 何てことを考えながら、皆揃って馬を並べていれば。


「きゅー、けー」


「休憩には早くないか? どうした、スー」


 急に真剣な表情になったスーが、自らが跨っている馬を撫でながらそんな事を言い始めたではないか。

 お腹でも空いたのだろうか?

 などと最初は考えたが、どうやら気にしているのは馬の様だ。


「スー、馬がどうかしたのか?」


「みーじ、――」


 ペシペシと馬の背中を叩きながら、そんな事を言って来る。

 確かにもう随分歳だとは思っていたが、まさか馬の体調が悪いのだろうか?

 見ている分には、良く分からないが。


「分かった、すぐに川辺に移動しよう。二人共、良いな?」


「スーが異常を感じ取ったのだから、従うべきだろうな。この子は私達以上に動物には敏感だ」


「師匠、私は先行して魔獣の類が居ないか見て来る」


 という事で、今日は早々に休む事になってしまった。

 とはいえ先を急ぐ訳では無いので、コレと言って問題は無いが。

 しかし。


「やはり、そろそろ替え時かもな……」


 老いた愛馬を見つめながら、少しだけ切ない気持ちで首を撫でてやるのであった。


 ――――


「いやぁ、めっちゃ飲むじゃん。ビルよく気が付いたね」


『ま、これでも魔獣だから。生き物が弱ってるかどうかくらいは見分けられる』


 川辺に寄って、いつもより早めの休憩を取った俺達。

 乗っていた馬を連れて水辺に近寄ってみれば、随分とガブガブ水を飲み始めた。

 喉乾いてたってのもあるんだろうけど、普段ならこんな調子にはならない筈。

 何かいつもとは違う様子の馬を撫でながら、水を飲み終わるのを待っていれば。


「すんごい飲んでるけど、本当に平気?」


『歳だからな、そろそろキツイんだろ。コイツも喰っちまうか?』


 ハハッと冗談みたいに言い放つビルだが……馬って食えるの?

 あ、馬刺しとかあるから食えるのか。

 とはいえ、コイツ等は食べる為に育てていた訳ではない。

 更に言うなら、俺が捕まえて来た馬じゃないし。

 グラベル達がどういう判断をするのかは分からないが、結構愛着が湧いているのは確か。

 いつも乗せてくれていた訳だし、懐くと馬って結構可愛いのだ。

 俺よりも体でっかいし、知らない馬だったら未だに怖いと感じるのだろうが。


「食べない」


『ほぉ? 珍しいな』


「人を乗せられなくなったら、畑の見張りとかして貰えば良いし」


『ま、気に入ってるなら好きにすりゃ良いさ』


 そんな事を言い放つビルを他所に、バッグを漁って金ぴかリンゴを取り出した。

 馬の前に差し出してみれば、最初こそ警戒した様子でスンスンと匂いを嗅いでいたが。


「旨いよー? 食べられる? ごめんなぁ、疲れちゃったか」


 一声掛けながらリンゴにナイフを入れ、真っ二つに割ってみた結果。

 ガブッと噛みつき、もっしゃもっしゃと咀嚼していく馬。

 たんとお食べ、シュワシュワするかもしれんけど。

 あと、口の中が輝く可能性もあるけど。

 などと思いながら、ジッと食べ終わるのを待ってみれば。


「おぉ……当たりを引いたか」


『相変わらず、光るなぁ』


 クワッと、普段見ない様な表情で口を開けた馬。

 その口内は、ビカァー! っと輝いておられた。

 いや、うん。

 やっぱりこの光景はギャグなんよ。

 人間だったら「光った光った」みたいに笑えるが、馬が口から光を放っているのは絵図が凄い。

 馬も驚いたのか、カパッと口を開いて固まっているし。

 まるで剥製の様になってしまったウチの馬、現在口から七色の光を放っておられます。

 結局“当たり”を引いたからどうなるって答えは分からないので、本当に輝いている光景を楽しむだけなのだが。


「馬、平気? もっと食べる?」


 もう一個金ぴかリンゴを取り出してみれば、戸惑いながらもカプッと齧りついて来た。

 最近食欲も控えめだったし、先程までは非常に疲れた様子を浮かべていたのに。

 今では食欲も戻って来てくれたみたいだ。

 良きかな良きかな、いっぱいお食べ。

 金ぴかリンゴにはやはり、何かしらの回復効果があるのかもしれない。

 若すぎる身体を手に入れてしまった俺には、翌日に残る疲れとかよくわかんないけど。

 むしろ“向こう側”でも中学生だったので、その頃も元気いっぱいだった記憶しかないが。


「なぁビル、馬元気になった?」


『ん、まぁ回復したんじゃねぇか? やっぱこのリンゴすげぇな』


 なんて緩い会話を繰り広げながら、バクバクと果物を齧る馬をベシベシと叩いた。

 ま、何にせよ回復したなら良かった。

 後はコイツの事をグラベル達が売りに出さない事を祈るばかりだ。

 所有権は向こうにあるからね、俺は口出しできない立場にあるからね。

 出来れば動けなくなるまでウチの庭をパカパカ歩いていて欲しいものですが、どうなる事やら。


「馬ってさぁ、買い換えたら年老いた方はどうなっちゃうの?」


『俺が知る訳ねぇだろ。喰うんじゃねぇの? 普通に』


「でっすよねぇ」


 よし、コイツには畑を守ってもらう使命を与えよう。

 動物と見れば喰う喰うと言って来た俺だが、流石にここまで一緒に居た上に乗り物として活用させてくれた子には情が湧くというものだ。

 やはり食用として捕まえて来た奴らとは一緒に見られない。

 加えて言えば、俺馬肉とか食った事無いし。

 一般的に食われていたモノだとは知っているが、旨いかどうか知らん。

 という事で、急いで食う必要も無いだろう。


「長生きしてくれよぉ、馬ぁ」


『こういう奴等にはマジで名前付けねぇよなお前』


 ビルからは相変らず呆れた視線を頂いてしまうが、とりあえずリンゴを喰った馬をヨシヨシと撫でていくのであった。

 こうなったらムムを頭に乗せておくか。

 常に回復効果を持続させるなら、それが一番な気がする。

 という訳で馬の頭にモモンガを引っ付けて見た結果。


「何だろうな、超間抜け」


『お前は普段からこんな感じだけどな』


 こう、なんというか。

 何とも言葉にしづらい、突っ込み所の多い馬が出来上がってしまった。

 ウチのモモンガも大人しく頭にへばり付いているので、帽子みたいに見えない事も無い。

 まぁ、良いか。

 道中は回復してやってくれ、ムム。

 そんな訳で、その後はゆっくりと休憩時間を過ごすのであった。



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