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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
4章

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第76話 平穏な毎日


 ウチに連れて来たちゃんと飛ぶ鶏、コイツ……すげぇぜ。

 すっごい卵を急に産みやがりましたよ、しかもポコポコと。


「でっかい目玉焼き……すっご、ロマンしか無いじゃんこんなの」


 ダチョウの卵でも使ったのかという程、巨大。

 焼き上がったソイツを皿に移し、塩胡椒を少々。

 もはや丼ご飯にデンッて乗っけて食べたい。

 そんな事を思いながらも、本日の朝食はパン。

 なのでラ〇ュタ食いをする感じになるとは思うのだが、それでもデカイ。

 リリシアと一緒にそれらを食卓に並べて、皆揃って食前の挨拶を済ませてから齧り付いてみれば。


「うっま! なにこれ! 白身ですらめっちゃ旨い!」


 目玉焼きの白身と言えば、こうなんというか……あんまり味がしないというか。

 醤油の味を引き立てる感じで、目玉焼き食ってるぜって感覚を味わうモノだと思っていたのだが。

 コイツは、何かもう凄い。

 どう表現したら良いんだ? ガツンとこういう味がするぜ! って訳では無いのだが。

 しっかりと栄養を取っている様な気がする。

 普通の卵の栄養価など良く分からないが、それがぎゅうぎゅうに詰まっている感じだ。

 兎に角塩胡椒だけでもめっちゃ旨い。

 なんて、良くわらかない食レポを浮かべていても仕方がないので。


「目玉焼きと言えば、やっぱり黄身だよね」


 考えられるだろうか?

 目玉焼きなのに、ナイフとフォークで食べているのだ。

 ハンバーグに乗っかっているとかなら分かるけど、現状は目玉焼きオンリー。

 ちょっとお上品になった気分でナイフを入れてみれば。


「おぉぉぉ……」


 あんまり半熟だと怖いのかな? とか思ったので結構火を通したつもりだったのだが。

 中心辺りは未だにトロッとされておられる。

 ソイツが零れ落ちる前にカットして口に運んでみれば……ヤバイ。

 語彙力が消えるくらいに、濃厚。

 これぞ卵。

 旨い卵食ってんぞ今! って感じに口の中には深い味わいが広がっていく。

 もうこの時点でガッとご飯を掻っ込みたい気分ではあるのだが、何度も言うが今日はパン。

 しかしながらこちらもリリシアベーカリーが焼いてくれた出来立て熱々。

 であれば、食べるしかないでしょ。

 という事で精一杯口を開いてバクッと焼き立てのパンを齧ってみれば。

 お口の中には、幸せが広がった。

 大した味付けなんぞしなくても美味しい卵に、もっちりとした食感と味わいを返してくれる焼き立てパン。

 どちらも味を主張しているのに、喧嘩しない。

 交じり合えば交じり合う程仲良くなって、何処までも幸せな味を堪能させてくれる。

 こいつぁもう、ご馳走ですわ。

 何てことを思いながらもっしゃもっしゃと味わっていれば。


『スー、俺等も』


「ういうい、ちゃんと用意してあるよ」


 今では少なくなってしまった室内ペット達にも、焼いた卵と千切ったパンを与えてやる。

 コイツ等普通の小動物じゃないし、色々と難しい事を考えなくて良いのは凄く楽だ。

 しょっぱいとかって言われる事はあっても、何を与えても体調を崩す事はまずない。

 とても楽ちんペットのビルとムム。

 その二匹が、差し出した卵焼きとパンを物凄い勢いで食べていく。

 今では二匹用のお皿が完備されている程。


『うめぇ、アイツは捕まえて来て正解だったな』


「ビルは協力してくれなかったけどねぇ」


『悪かったって、今度は手伝ってやるから』


「ま、良いけども」


 そんな会話をしている内にも二匹ともご飯を平らげ、もっともっととせがんで来る。

 どうしよ、卵はもうないんだけど。

 いくら何でも、鶏にもっと産めと急かす訳にも行かない訳で。


「野菜かリンゴならあるけど」


『肉は……』


「今は無いかなぁ、お昼には焼いてあげるから。リンゴ食べる? 金ぴかの」


『光らないなら、まぁ』


 という事で、畑に生えて来たリンゴの木から収穫出来る金ぴか果物のスライスを差し出してみれば。

 二匹はシャクシャクと良い音を立てて咀嚼していく。

 何だかんだ言って気に入ってるよね、金ぴかリンゴ。

 確かに旨いけど何故かたまに光る、口の中が。

 でも以前の様に爛々と口内が光るまでいくのは、本当にたまにだったらしい。

 しかも最初の一口だけ。

 という事で、“当たり”を引くと口の中が神々しく光る事になる。

 随分と不思議なリンゴの木が生えたもんだ。

 やっぱ異世界ってスゲェ。

 ちなみにグラベルの口内が輝いていた時が、ビジュアル的に一番面白かった。


『そういや卵の方はどうなったんだ? ホラ、あの貰って来たゴツゴツしてる奴』


 目玉焼きと金ぴかリンゴでご満悦になったのか、ペロペロとお手てを毛繕いしているビルがそんな事を聞いて来た。

 そう、あの松ぼっくりみたいにゴツゴツした良く分からない卵。

 今アレは……。


「なんか、鶏に与えたら普通に温め始めたから任せた」


『……そか、相変わらず適当だな』


 だってアイツ、せっかくグラベルとシャームが小屋を作ってくれたのに、落ち着かないって雰囲気でずっとウロウロしていたのだ。

 だからこそ放し飼いにでもするか、玩具の一つでもあった方が良いのかと思ってあの卵を与えてやった結果。

 なんか物凄く大事そうに温め始める始末。

 だから何というか、良いかなって。

 俺もずっと持ち運ぶのも面倒くさいし。


「何か生まれるかなぁ?」


『魔獣に温められるなら、あるかもな。流石に向こうの国でもそこまでは試してねぇだろうし』


 なんて会話をしながら、本日も美味しい森ご飯を頂くのであった。

 あぁでも、やっぱり目玉焼きは米で食いたい……。

 卵かけご飯とかは、やったらお腹壊しちゃうかな?


 ――――


 「今の所、コレと言った変化は無いな……世界樹から成る果物を口にすると不老になるなんて言われるが、こればかりは実際長い時を生きてみないと分からないからな」


 「随分と気の長い人体実験を始めてしまったかな?」


 リリシアの声にハハッと呆れた笑みを漏らしながら、あの木から出来たリンゴを齧ってみた。

 やはり、旨い。

 シャクッと良い音を立てる上に、とても蜜が濃いというか。

 しっかりとした甘さを口の中に広げ、不思議なシュワシュワと弾ける様な食感を返して来る。

 これは何と表現すれば良いのだろう?

 そんな事を思いながらも、今日もカットされた金色のリンゴをパクリ。

 とても不思議だ。

 旨いリンゴという印象は変わらないのに、何故か飽きが来ない。

 更に言えば、コレを食べ始めてから妙に体の疲れが取れるのだ。

 流石に若い頃の様にとまでは行かないが、朝起きた時の体のダルさみたいなものが無くなった気がする。

 だからこそ、身体に悪いモノではないとは思うのだが……その、なんだ。

 とても酒に合うのだ。

 コイツを一口齧ってから酒を呷ると、口内に広がったリンゴの旨味と先程も言ったシュワシュワ。

 こう、何とも言えない味わいが広がっていく。

 エールを飲んだ時の様な感覚に似てはいるが、アレよりももっと爽やかな味わいに強いシュワシュワ。

 これならいくらでも飲んでいられそうだと思ってしまう程、清々しい後味が広がる。

 もっと言うなら、不思議な事もあるもので。

 最初この飲み方をした時には随分と飲み過ぎたと言うのに、全く翌日に残らないのだ。

 もしかしたら、結構な回復効果があるのかもしれない。

 あまりにも酷い二日酔いの相手に、毒消しの術を無理やり掛けるなんて話も聞いた事がある。

 つまり、疲労回復と毒消し効果?

 だとすれば物凄く万能な果物が腐る程実っているという事になるのだが。


「あのリンゴも、どうしようか……いっそ箱に詰めて、アグニ達に御裾分けしようか」


「グラベル、何度も言う様だがアレは非常に貴重なものだ。私の予測が正しければ、になるがな? だが確かにあそこまでポコポコ金色のリンゴが出来てしまうと、悩み所だな。鶏の卵よりも早いかもしれない」


 思い切り溜息を溢すリリシアもカットされたリンゴを齧り、酒を口に含んでからゆっくりと呑み込み、ふぅぅと深い息を溢す。

 彼女もこの飲み方が気に入ってしまった様だ。

 だって旨いもの、物凄く。

 今まで飲み慣れていた筈の酒でさえ、全くの別物に変えてくれるかの様。

 コレは旨い、なんて酒の席にばかりお供させる訳にもいかず。


「グラベル! リリシア!」


 風呂上がりのスーが、頭にタオルを乗せながらテーブルへと走って来た。

 そしてそのまま皿の上に置いてあったリンゴをパクリ。

 この子もやはり、随分と気に入っている御様子だ。


「うまい!」


「コラ、スー。まだ髪を乾かし終ってないだろう? つまみ食いはその後だ」


 後から付いて来たシャームに叱られてしまい、ゴシゴシとタオルで手を拭かれていくスー。

 もはや本当に姉妹の様だ。

 例え髪色や目の色が違おうとも、二人の距離感はまさにソレと言って間違いないのだろう。

 スーは何やら謝罪の言葉を紡いだらしく、その後はシャームに従って頭をゴシゴシされていく。

 シャームはシャームで、とても幸せそうな微笑みを浮かべながら世話を焼いている程。

 まさに平穏、そう呼べる生活が目の前にある訳だが。


「世界樹、どうしようか? グラベル」


「結局の所、そこに行きつくんだよな」


 二人揃って、ため息を溢してしまうのであった。

 今となってはアーラムにもガルバリンデにも相談出来る立ち位置にあるというのは有難いが、それでもだ。

 こんな物が両国の中心地にあるとなると、本当にどういう事になるのやら。

 今から、頭を抱える他無い。


「いっその事、管理は国に任せて……俺達は街中で生活してみるか?」


「まぁ引き籠る理由も無くなった訳だしね、それも良いかもしれない」


 人生とは、何が起こるか分からないものだ。

 全てから逃げてこの森に居座ったと言うのに、この森で出会った少女によって全てが解決してしまった。

 昔の俺達が関わった事例により多くの人が傷つき、両国が直接戦う過去のきっかけを作ってしまったというのに。

 今ではその両国も友好関係を結んでいる。

 だからこそ、俺達がいつまでも隠れている理由は無くなった訳だ。

 そう考えると、この一年足らずで随分と変わったモノだと思える。

 非常に慌ただしく、心配になる事も多かったが。

 それでも。


「シャーム、くすった――」


「ん? あぁ少し優しくやり過ぎたか? すまない、これじゃくすぐったかったか」


 ウチに来た若い二人が、笑顔で生活を送っているのだ。

 結果としては、今の所最善の選択肢を選べているのだろう。

 未だ分からない事も多いが、それでも。

 俺達の手の届く範囲に居る“守りたい子達”が、こうして幸せそうに過ごしているのだ。

 だったら良いじゃないか。

 そんな風に思ってしまうが、やはり放っておくには大きな問題な訳で。


「もう少ししたら、アグニの所へ相談に行こうか」


「まぁ、我々だけで焦っても仕方のない事例だろうからね。私も賛成だ」


 二人揃って、呑気な発言を溢しながら酒の入ったグラスを傾けるのであった。

 いやはや、悪くない。

 老後としては、十分すぎる程の幸せを得ている気分になって来るというものだ。



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