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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
4章

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第75話 春


 春が来た。

 恋がどうとかの意味では無く、季節的な春。

 森の中にはまだ雪が残っている所も多いが、それでも日差しは温かくなってきている。

 という事は当然、野生動物達も冬眠から目覚める訳で。


「狩りだぜ!」


『狩りなんかなぁ?』


 足元に居るブサ猫様は、のんびりと眠そうな声を上げているが。

 本日もまたグラベルとシャームを引きつれていざ行かん、森の奥地へ。

 ダッと駆け出そうとしてみれば、後ろからシャームに止められてしまった。


「スー、――」


『まだ湿ってる所も多いから気を付けろとよ。コケて泥だらけになっても知らんぞ』


 未だ眠そうに欠伸をかましているビルが、のそのそと歩きながら隣に並んで来るが……なんか物凄く動きが遅い。

 日向でゴロンと転がったら、そのまま昼寝でもしてしまいそうな雰囲気だ。

 森の中でそんな事をしようものなら、本日は丸洗いコース決定な訳だが。


「ねぇぇ……ビルも気合い入れなよ。温かくなって来たんだから、獲物が多いかもしれないじゃん」


『ねっむ』


 駄目だこりゃ、完全に飼い猫モードになっておられる。

 しばらく家の中でゴロゴロしてばっかりだったもんなぁコイツ。

 いいもんね、今日はビル無しで頑張ってやる。

 冬の間に弓の練習をしたので、前よりも少しは使える様になってるって所を見せてやるぜ。

 とか何とか思っている内に、早速最初の獲物を発見。

 木の高い所にとまっている鶏……鶏!?

 え、何。

 こっちの世界の鶏はちゃんと飛ぶの?

 お前どうやってそんな所に登ったんだよと言いたくなる光景だが、鶏の方も気が抜けているらしく、暖かい日光を浴びながら餅の様にダレておられる。

 狩るなら今しかない!

 すぐさま弓を構え、矢を宛がい、放てーい!

 と、気合いを入れて放ったまでは良かったのだが。


『お見事、下の方にあったキノコに当たったな』


「ちっげぇの! 俺が欲しいのそっちじゃないの!」


 確かに昔より飛ぶ様になったし、割と狙った方向へ行ってくれる。

 しかしながら、未だに筋力が足りないのだ。

 ピョーンと放物線を描いて飛んで行った矢は、鶏に届かないどころか木の根元の方に落下してしまった。


「フシャー!」


『怒るな怒るな』


 物凄く眠そうなビルに宥められながら、もっと近づいて何本も矢を放ったが……惨敗。

 全っ然届かない。

 鶏とかもはや敵だとすら認識していないらしく、木の上で昼寝を始めやがった。

 何かもう兎に角悔しくなってしまい、真下まで接近して矢を放った結果。


「スー!」


 グラベルが慌てた様な声を上げ、此方に駆け寄って来た。

 やばい、また何かやっちまったのかも。

 思わず彼の方へと振り返ってみれば、物凄い速度で接近して来たグラベルが俺を担ぎ上げて即座にバックステップ。

 何だ何だ、何が起きた。

 新しい獣でもやって来たのかと周囲を見回していれば。


『ぶわぁぁか、何やってんだお前は』


 ビルから御叱りの声が上がったと同時に、先程放った矢がトスッと音を立てて地面に突き刺さった。

 間違いなく、先程まで俺が立っていた場所に。

 あ、なるほど。

 真上に撃ったら普通そうなるか。

 綺麗に真上に飛んでくれた矢は結局届かなかったが、重力に沿って鏃の方から俺に向かって落ちて来た訳だ。

 もはやギャグマンガみたいな状況ではあるが、自由落下してくる矢なんぞが体に突き刺さったら一大事。

 頭にぶっ刺さったら普通に死亡していたかもしれない。

 弓矢で初めての生き物討伐が自分自身とか、ガチで洒落にならない事態になる所だった。


『向こうはシャームに任せて、お前は矢拾ってこいよ。ったく、何本使ってんだか』


「りょ、りょうかーぃ……」


 思わず溢れ出した冷や汗を拭いながら、ビルの言う通り周囲に散らばった矢を回収し始める俺。

 うん、ものっ凄く情けないね。

 ちなみに鶏はシャームが無事確保、しかも生きたまま捕獲したのだ。

 結構背の高い木だったのにも関わらず、三角蹴りみたいな事しながら上まで登ってしまったのは流石としか言い様がない。

 異世界の人、やっぱ身体能力高っか。

 俺はいつになったら最初に見た“グラベル砲”を放てる様になるのだろうか……。

 しょぼくれた気持ちになりながら、自分が使った矢を一本ずつ矢筒へと戻していくのであった。


 ――――


「ただいま、戻ったぞリリシア」


「おかえり……ってまた、おかしなモノを捕まえて来たな」


 洗濯物を取り込んでいたリリシアに声を掛けてみれば、これまた物凄い視線を向けられてしまった。

 まぁそれもその筈。

 厚い革手袋を付けて、鶏に似た暴れる魔獣を掴んでいるのだから。

 元々コイツは気性が荒い……筈なのだが。

 スーがいくら矢を放っても木の上で昼寝していた程だ。

 “愛猫”の影響か、それとも完全に此方を舐めていたのかは分からないが。

 とにかく今は俺が掴み取っている為、バッサバッサと暴れている。


「それで、今回のソレはどうするんだい?」


「せっかくなら、卵でも産ませようかと思ってな」


 この魔獣は、普通の鶏と同じ様に結構な頻度で卵を産む。

 しかし親鳥が狂暴な為、本来はかなり厳重な環境を用意して飼育する必要があるのだが……。


「うまい!」


 スーが一声かけると、すぐさま大人しくなる魔獣。

 これはまた、魔獣であっても手懐けられる対象の様だ。

 であれば多分問題ないのだろう。

 普通の鶏と違って何でも食べるので、餌に困る事も無い筈。


「今日の午後にでも、簡単な鶏小屋を作るよ。シャーム、手伝ってくれ」


「もちろんだ、師匠」


 という事で一度放してやれば、バッサバッサと羽ばたきながらスーの近くへと着地する魔獣。

 威嚇する時なんかは凄い声を上げる筈なのだが、今ではコッコッコッと緊張感のない鳴き声を洩らしつつ彼女の周りを歩き回っている。

 なんともまぁ、いつ見ても凄い光景だ。


「スー、ウチの動物達と顔合わせさせてやってくれるかい? 今のうちに慣れておかないとな、後で襲われても困る」


 声を掛けてみれば不思議そうに首を傾げて見せたが、少しすれば意味を理解したのか。

 ニコッと微笑みを浮かべてから畑の方に走っていくスー。

 馬小屋なんかもそちらに有るので、ちゃんと意味は理解してくれた様だ。

 まだ言葉は拙いにしても、言われている事は何となく分かって来ているのだろう。

 そして、当然の様に付いていく鶏の魔獣。

 最初の頃はこれだけでも驚いていたが、今となっては普通の光景になってしまった。

 更に言うなら、もっと驚くべき代物が走っていく先には見えている訳で。


「また、大きくなったか?」


「順調に育ってるねぇ……世界樹。いやはや私も驚きだよ、畑に生えるとは」


「私は未だ信じられないのだが……アレは本当に世界樹なのか?」


 三人揃ってボヤいてしまう程に、あの木は大きくなっていた。

 まだそこらの大樹と比べたら小さいが、それでも見上げる程の大きさになっているのだ。

 この勢いで成長したら、そろそろ引っ越しを考えなければいけないかもしれない。

 今ですら畑を随分と侵食されてしまったくらいだ、このままでは近い内に畑は無くなってしまうだろう。


「ここまで大きくなってしまうと、隠しておくわけにもいかないだろうな……」


「一度アーラムへ相談に行こうか、世界樹の種をくれた本人には話を通すべきだ」


「師匠……コレ、ムムとスーがもう一つ植えたらどうなるんだろうか?」


「「怖い事を言うな」」


 流石に無いとは思うが、世界樹なんてモノが二本も三本も生えてみろ。

 世界の何処かに一本だけ生えている大樹、なんてお伽噺で言われている代物がボコボコ出現したらこの森はどうなってしまう事やら。

 想像しただけでもため息を溢してしまうが、もはや今の段階で結構不味いのだ。

 コレは、どうしたものかな……などと頭を悩ませていれば。


「うまい! り、ご! うまい!」


 他の動物に鶏の紹介を終えたのか、スーが金色に光るリンゴを幾つも抱えて此方に走って来るでは無いか。

 この光景だけでも、世界樹を探している探検家などは腰を抜かすだろうな。


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