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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第74話 ごーるでんあっぽー


 「畑が心配で一足先に戻ったが、皆元気そうで良かった。いやはや、植物の生命力というのは凄いな」


 「グラベル」


 「これではシャームだけ街に残して来たのが申し訳ないくらいだ。はははっ、今日は大きくなり過ぎた野菜をまとめて使ってしまうか」


 「グラベル、現実を見ろ。確かに野菜は無事だが、別の何かも育っている」


 どうにか畑の野菜だけに集中しようとしているのに、リリシアから無情な一言を頂いてしまった。

 視線を向けてみれば、そこには。


 「どうして、こうなった……」


 「“世界樹の種”。いやうん、芽は出ていたし、順調に育ったよ? しかし、なぁ?」


 今ではあり得ない物体が、畑の隅に生えていた。

 いや、もう隅というか何というか。

 畑を侵食する勢いで、普通に木が生えているんだが。


 「この場合、畑の野菜は大丈夫なんだろうか……」


 「多分……というか、木に近い物程良く育っているな。嘘だろ……畑に生えるな、世界樹……」


 二人揃って、見上げる程大きくなってしまった一本の木を見つめるのであった。

 これ、どうしようか。

 スーが植えたモノだし、勝手に切り倒したら悲しむだろう。

 だったらこのまま放置するしかない気がするのだが……本物の世界樹だった場合、とんでもないデカさになる筈なのだ。

 それこそ、俺達の家なんて呑み込んでしまう程に。


 「人生は、驚きでいっぱいだな」


 「だから、現実逃避しないでくれグラベル……」


 まぁ、うん。

 後でどうするかスーに聞いてみるか。

 それからじゃないと、とてもじゃないが行動を起こせそうにない。


 「残すか切るか、スーの様子を見て、それから……」


 「だから現実逃避をするなと言っている! 世界樹だぞ!? エルフの里にすらなかった希少なモノだぞ!? 切り倒すなんて出来るか! 世界樹なんだぞ!?」


 「いや、まだ普通の……ホラ、リンゴの木って可能性も」


 「普通の植物だったら金色のリンゴは実らない! ホラ見ろ! コレが普通のリンゴに見えるか!? 輝いているぞ!?」


 もう、何というか。

 スー、またやってくれたな。

 ハハハと乾いた笑いを洩らしながら、とりあえず木から生えていた金色のリンゴを毟るのであった。


 ――――


 森の家に帰って来た瞬間、グラベルとリリシアは畑に向かった御様子。

 シャームは街に残ってお仕事しているみたいだし、俺も何か……なんて思ったが、休め休めとばかりに部屋に向かわされてしまった。

 という訳で。


 「温めてみるかー」


 『おー』


 やる気のないビルの声を聴きながら、今回のお土産を取り出した。

 卵、何かの卵。

 色々終わった後、熊っ子がパパさんに色々報告したらしく。

 いつかのもち肌お姫様の時同様、変なモノがいっぱい置いてある部屋に連れていかれた。

 今度は持ち主も同行していたので、遠慮なく一つ選ばせて頂いたのがコレ。

 他にもいっぱいあったけど、武具の類は正直いらいない。

 籠手は畑仕事にしか使わないし、玩具の銃もバッグの中に眠ったまま。

 後者に関してはマジでその内存在を忘れそうだ。

 という事で、忘れようが無さそうブツを頂いて来た訳だが……何でも孵化は諦めて宝物庫に放置されていた代物らしく、中身は多分絶望的。

 でも珍しい柄な上、材質も良く分からないので置物かもと思い保管していたって話だったが。


 『まだ魔力を感じるな。生きてるかもしれねぇぞ?』


 そんなビルの一言により、今回はコレ。

 また変なモノ貰って来ちゃった、どんどん玩具が増えていく様な気分だ。

 やったぜ。

 妙な柄が入っている上に、全体に鱗がくっ付いてるのか? って程の変な卵をとりあえず腹に抱いた。

 なんの卵だろうね? 何かもう松ぼっくりみたい。

 あそこまで鱗モドキが開いている訳じゃないが、見た目はそれっぽい。

 変なモノ見つけた! とばかり頂いたが、相手方からも「それで本当に良いの?」みたいな雰囲気があったから、多分大したモノじゃない筈。

 だったら余計に貰いやすいってもんだ。

 実は本当に置物で、ライト代わりになったりしないかな?

 でもビルは魔力がどうとか言ってたから、マジで卵なのか。

 しばらくの間温めてみて、何も生まれて来なかったらゆで卵にでもしてみようか。

 賞味期限とか色々心配だが、ビルが生きてるかもって言ってたし、多分まだ生でしょ。

 そんな訳で、卵を抱いたままベッドにゴロン。


 「うーん……」


 『どした?』


 「いや、俺の体温で温まるもんかな? 布団掛けた方が良い?」


 『そればかりは知らん』


 なんて台詞を残しながら、卵に身を寄せてくれるビル。

 ハッハッハ! このツンデレブサ猫め。

 何だかんだ言いながら小動物が減って寂しいんだな?

 分かる、分かるぞぉ!

 などと思いながらモゾモゾ。

 だ、抱きづれぇ……鱗っぽい何かがめっちゃ邪魔。

 松ぼっくり卵、扱いに困る。

 そんな事をやっている内にムムまで卵にへばり付き、皆揃って温め始めた。

 この温かく緩い光景を、何と言葉にしようか。

 そうだな、ぴったりな言葉が一つだけ見つかった。

 それは。


 「過保護か」


 『俺も思った』


 ムムはプクプクと声を上げながら未だ卵にへばり付いている訳だが。

 コレはアレよ、傍から見たら俺等の方がお馬鹿さんに見える光景だよ。


 「とりあえず抱っこしておけば良いかな?」


 『良いんじゃねぇか? どうせ向こうでも色々試して駄目だったんだろ。なら体温がどうとかって話じゃねぇかもな』


 早くも飽きたらしいブサ猫が、欠伸をかましながら俺の体に乗っかって来やがった。

 重いです。

 まぁ、いつもの事だけど。


 「何の卵だろうねぇ?」


 『割ってみるか?』


 「割るなら食える状態で割りたい」


 『……お前はそう言う奴だったよ』


 呆れた視線を向けて来るブサ猫と会話していれば、何やら下から俺を呼ぶ声が聞えて来る。

 畑に行った二人が戻って来たのだろうか?

 だとすればご飯? もうご飯の時間かな?

 久しぶりの森料理に期待を膨らませつつ、お手伝いがあるなら俺も仕事をしなければとベッドから起き上がった。

 その胸に、卵を抱えて。


 『邪魔じゃね?』


 「確かに、何かで固定してから行くか」


 ビルと会話しながら、卵を服で包み体に縛り付けてみた。

 些か見栄えは良くないが……まぁ良いか。

 要は卵が落ちなくて、俺の両手が空けば良いだけだし。


 「うし、行くかー」


 『ういよー』


 相変らず緩いと言うか、ダレた声を聴きながら。

 俺達はキッチンへと向かって足を向けた。

 今日も今日とて異世界生活。

 違う国に行って、色々あった訳だが。

 また良く分からないお土産も貰って来たし、刺激としては十分だろう。

 身の危険って意味では、嫌という程に味わったのだ。

 であれば、家に帰って来た時くらいはゆっくりしたいモノ。

 そんな訳で、ルンルン気分のままキッチンに向かってみれば。


 「スー……、――、――」


 何かを呟きながら、リリシアが金色のリンゴ差し出して来たではないか。

 うわ、ナニコレ凄い。

 ここに来てまたファンタジーな代物が出て来てしまった。

 金ぴかだし、何か光ってる。

 食べたらステータスとか上がりそう。

 とか思って、差し出されたソレに齧り付いてみれば。


 「スー!?」


 「え、あれ? 駄目だった? えぇと……金ぴかリンゴ、味は良いよ?」


 『普通こんな色のリンゴに齧りつかねぇだろ……何か光ってんぞ』


 リリシアからは慌てたような声が上がり、ブサ猫様からは呆れた声を頂いてしまった。

 そうか、金ぴかリンゴは食べては駄目だったか。

 とりあえず毒が無い事を祈ろう。


 「ファンタジー基準が未だわっかんねぇ……ビル、口の中も光ってる?」


 『光ってる、お前が口開けると光が漏れる感じで』


 「マジで? それはちょっと見たい」


 『危機感無いな本当に……』


 そんな訳で、現状を確かめたくて鏡がある風呂場へと向かってみれば。

 鏡に映っているのはいつもの妹の顔……はもうどうでも良い。

 流石に見慣れた、今更言う事無い。

 という事で、カパッ! と口を開いてみれば。


 「お? おぉ? 確かに光ってる……様な? 七色に」


 『さっきはもっと光ってたぞ』


 「もう一口貰ってくる! 超見たい!」


 『お前は本当にさぁ! 毒だとか考えねぇのか!? 口の中光ってんだぞ!?』


 ドタバタと走り回り、ビルからは苦情を頂き。

 リリシアの持っていた金色リンゴに齧り付こうとした瞬間、グラベルに捕獲されてしまった。

 金色リンゴ、高かったのかな。

 だとしたら、齧った事を謝らなければいけない事態になるのだが。

 二人は「どうしたものか」とばかりに、俺の食い掛けリンゴに視線を向けている。

 あ、ありゃ?

 本当に悪戯に齧ったら不味い物だった?

 とかなんとか、後悔し始めたその瞬間。

 リリシアがリンゴに包丁を入れ始めたではないか。

 つまりアレは食える。

 しかも二人の表情を見る限り、超高級だから齧られて困ったって訳ではないらしい。


 「ビル! 通訳!」


 『あぁ~えっと。大丈夫そうだとか、試しに食ってみるかって言ってるな。あとは世界樹がどうとか――』


 「ならば問題無し! ステータスアップのチャンス!」


 グラベルの腕から抜け出し、スライスされていく金ぴかリンゴの一欠片を奪って口に入れ。

 思い切り噛みしめながら、再び鏡に向かって走った。

 モグモグしてから呑み込んで、カパッと口を開いてみれば。


 「……光ってない」


 『最初の一口だけか?』


 鏡には、妹似の少女が間抜けに口を開いている光景だけが映し出されていた。

 おかしい、俺はファンタジーを求めてあの果物を齧ったと言うのに。

 今は、暗い部屋で大口を開けている猫耳少女が映っているだけだ。

 違う、こういうの求めてない。

 思い切り溜息を溢しながら、キッチンへと戻ってみれば。

 そこには。


 「スー、――」


 また勝手につまみ食いした事を怒っているらしいリリシアが、包丁片手に笑いながらリンゴをスライスしていた。

 こ、こえぇ。


 「ビル、助けて」


 『無理』


 「でっすよねぇ」


 今後は珍しい物を見つけても、すぐ口にする行動は控えよう……なんて本気で反省する程、分からない言葉でお説教を貰ってしまうのであった。

 だって……ステータス上がるかと思ったんだもん。


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