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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第73話 満喫


 「では、そちらのグリフォンも!?」


 「はい、スーちゃんから頂きました。リーガルって言います、大きくなっても可愛いでしょう? ほらリーガル、御挨拶……は、もう済んでいるみたいですね」


 相手国の王姉殿下、アレクシア様。

 どうやらあまり遜った呼び方をされる事を嫌っているらしく、アレクシアさんと呼ばせてもらう事になったのだが……良いのだろうか?

 何てことを思いながら、彼女に案内された温室の中でお茶を頂いていれば。


 「ほんと、兄弟なんですねぇ」


 「えぇ、久々の再会で嬉しいのかしら」


 アレクシアさんの従魔……ではなく、飼っているだけだというリーガルと。

 私の従魔として契約したモモが、非常に安心した表情でピトッとくっ付いていた。

 サイズの違いがある為、兄弟というより親子の様に見えるが。


 「でも、驚いた。三匹居たグリフォンの内、一匹をアーラムに。もう一匹を“英雄の卵”に、そしてもう一匹をガルバリンデの姫……イリーゼちゃんにとなると。なんだか、彼女に繋いでもらった縁の様に感じるわ」


 優雅に紅茶を飲みながら、彼女は緩い笑みを浮かべてグリフォン達を見守っていた。

 普段だったら対面席に座る事すら恐れ多いと感じてしまう程、美しい女性。

 だというのに、何となく私と似た雰囲気を放っている気がして安心してしまう。


 「実際、そうなのかもしれません。私を友人として認めてくれて、自らが使役していた動物を私に譲ってくれて。国に関わるトラブルまで解決してくれましたし……それに何より、私は彼女に救われました」


 時間としてはとても短い間だったが、彼女との時間はこの胸に刻まれている。

 動物の扱いを教えてもらった事も、一緒に買い物をした事も。

 例え言葉が分からなくても、私が何かを呟く度に優しく微笑んでくれた事も。


 「それは私も同じかしらね。あの子が居なければ、私は既にココには居ない存在。あの子に助けられて、そして“私達”を導いてくれたからこそ……弟も獣人を受け入れる状態を整えた。急に気持ちを入れ替えろと言われても、普通なら無理だけれども。彼女はソレを可能にした、自らの行いだけでね」


 優しく笑う彼女の瞳には、今何が映っているのか。

 まるで過去を見るかのように、何処までも柔らかい視線を向けて来る。


 「その話……聞いてみたいです! こっちでもスーは活躍したんですか!? 神獣と精霊は!?」


 「ふふっ、どこから話そうかしら? あ、でもそっちも話しくれなきゃ嫌よ? 私もガルバリンデで何が起こったのか聞きたいわ」


 「それはもう、凄かったんですよ!? 精霊様が守ってくれたり、神獣様がここぞというタイミングで現れたり!」


 「あら、これは詳しく聞きたくなってきちゃったわねぇ」


 という訳で、私達は声を弾ませながらお茶会を楽しむ。

 他国への挨拶、そして他所の国を見て勉強しなさいと父に連れて来られた訳だが。

 たった数日しか滞在期間が無いのが、今から寂しく感じ始めるのであった。


 ――――


 「いやぁ、良いなこっちの国も! 旨いもんがいっぱいあるぜ!」


 「ライル、はしゃぎ過ぎるなよ? 一応お前は王族で、護衛は私一人なんだ」


 「俺が他国の王子だなんて言っても、誰も信じないって! シャーム、次は何が食いたい!?」


 「まぁ、良いか。コレも仕事だ」


 そんな事を言いながら、テンションの高い王子に続き露店を端から回っていた。

 向こうは此方にある物と同時に、海産物も豊富というイメージがあったが。

 彼からすれば物珍しい料理も多いようで、あっちにいったりこっちに行ったり。

 まるで大きな子供を連れているかのような気分になって来る。

 それこそスーの様に小さくないので、見失う心配がないのは助かるが。


 「ライル、お前滞在期間ずっとこの調子で食べ歩くつもりか?」


 「それも良いな、俺の仕事はこの国を知る事。食文化の調査だって立派な仕事だ!」


 「物は言い様だな」


 「別に食い物だけじゃなくても良いぜ? シャームはどこに行きたい?」


 「何故そこで私の意見が必要になるんだ」


 元気いっぱい状態のライルが、両手いっぱいの食べ物を持ちながら此方に振り返り、 ニカッと満面の笑みを浮かべて来る。

 こうも裏表がない性格の人間を、私は見た事があっただろうか?

 師匠達だって、言葉にはしなくとも色々と考えながら行動するし。

 スーだって無邪気に見えても、色々と悩んだりしている様に見える。

 しかし、こいつは。

 ライルだけは。

 思っている事がそのまま言葉として流れ出ている様な雰囲気だ。

 本当に、お気楽だと笑ってしまいそうになるが。


 「ホレた女を楽しませんのも、男の役目だろ。俺はあんま頭良くねぇからさ、どんどん言って欲しい訳」


 ニッシッシと笑いながら、手に持った串焼きに齧り付く他国の王子様。

 何というか、コレで良いのだろうか?


 「まだそんな事を言っているのか、ライル。お前と私では天と地ほど立場が違うというのに」


 「そんなもん知るか。同じ場所に居て、同じモン食ってりゃ立場なんぞ関係ねぇ。っていうのも、俺の立場があるから言える台詞だってのは、分かってるつもりだけどよ。でも、そんな理由で好きな奴に好きだって言えないのは、ちょっと嫌じゃね?」


 「惚れただの好きだの、軽々しく言葉にするな。恥ずかしい奴だな……それこそお前の立場を考えろ」


 此方が持っていた串焼きを彼の口に突っ込んでから、思い切り溜息を溢した。

 彼の言っている事には、正直賛同出来る。

 しかし立場とは、位とはそう簡単なモノでは無かった筈だ。

 だからこそ、どうしても譲れない一線というモノがある筈なのに。


 「お? シャームが食ってたヤツも旨いな、俺のと味付けが違う。こっちも食ってみろよ、ホレ」


 そんな事を言いながら、彼は緩い笑みを浮かべて私に串焼きを差し出して来るのであった。

 何というか、難しく考えるのが馬鹿らしくなってくるな。

 思わず此方もフッと笑みを溢し、彼から差し出された串焼きに齧りついた。


 「うん、旨いな」


 もう何というか、肩肘張るのが馬鹿らしくなり、その言葉と共に微笑んでみれば。


 「ソレ! 今の顔!」


 「なんだ?」


 「シャーム何処に行きたい!? 何が食いたい!?」


 えらく嬉しそうな様子で、ライルはまたおかしな事を言い始める。


 「またそれか……私は護衛だ。お前の好きな所に行けば良いだろ」


 「んじゃ俺はシャームの喜ぶ所に行きたい! これで良いだろ!?」


 「う、うーん? なかなか難しい注文だな」


 私が新しく国王から受けた依頼。

 この王子を、滞在中守り切る事。

 えらく責任重大だと言うのに、護衛を任されたのは私一人。

 しかも、向こうから連れて来た兵士達すら彼から離れてしまうくらいだ。

 本当に、皆何を考えているのか。

 なんて愚痴を溢した所で、他人との関りを遠ざけて来たのは私自身だ。

 自らの行いを見直す意味でも、この仕事はキッチリとやり遂げようと思っていたのだが。

 はてさて、どうしたものか。


 「私は趣味というか、娯楽の関係は疎いからな……武器屋? いやそれは違うと私でも分かる。だとするとそうだな……あぁそうだ、風呂は良い。師匠たちと出会ってから、すっかり風呂にハマってしまった」


 「いよしっ! 風呂だな!? 一緒に入ろう!」


 「ふんっ!」


 アホな事を言う王子の顔面に拳を叩き込んでから、思い切り溜息を溢した。


 「ご、ごめ……今のは違ったな、うん。俺が悪かった」


 「分かればよろしい」


 私の仕事は、このアホ王子を数日間護衛する事。

 先が思いやられるとは思うが、思わず緩い笑みがこぼれてしまうのであった。


 「では服を見に行こう。コートはスーに選んでもらっているが、中はどうしても適当なモノで間に合わせてしまうからな」


 「分かった! 服だな!? 任せろ、妹の服を選んでるのも俺だ!」


 「……待て、今の発言は事実か? あのフリフリで可愛らしい服ばかり着ているイリーゼだが、お前が選んでいるのか?」


 「全部じゃないが、土産に買って行けば大抵着てくれるぜ? それこそシャーム達と最初に会った時の服装とかは、俺が選んだやつだ」


 なんか今、物凄い情報を聞いた気がする。

 本当に仲が良いな、この兄妹は。

 しかもその……ライルのセンスは悪くない気がする。

 イリーゼの服は何というか、凄く本人の雰囲気に合っている気がするのだ。

 だがしかし。


 「私にまでフリフリを選ぶなよ?」


 「分かってるって。動きやすくて、尚且つ格好良い系だろ? いや、綺麗とかセクシーな感じを混ぜても良いんじゃないか?」


 ブツブツと呟きながら私の身体に視線を向けるライル。

 誰とも知らぬ相手なら、こんなにジロジロと身体を見られれば不快にしか思わないだろうが……彼の眼は何というか、“職人”的な瞳を向けて来ているのだ。

 真剣に考えていると言うのが伝わって来るほど、胸だの腹だの脚だの。

 ジッと近距離で見つめて来る、というか睨んで来る。

 何かもうここまで来ると、羞恥とか嫌悪の感情の前に、ため息が零れてしまうというモノだ。


 「私を使って遊ばないのなら、任せる」


 「マジで!? おっし、任せろ! 赤コートは絶対のモノとして、ソレに合わせるんだもんな。あぁくそ、こんな事ならスーも連れて来て新しい赤コートも買いたかった……」


 コイツは本当に。

 自分で馬鹿だ馬鹿だと言う癖に、変な拘りがあるというか。

 拘った処はどこまでも突き詰めるタイプなのかもしれない。


 「まぁ、何でも良いさ。まずは店を回ってみよう」


 「おう! 任せとけシャーム! いくぞぉ!」


 気分が高まったらしい王子は、私の手を掴んで大通りを駆け出した。

 本当に、全く。

 店の場所も知らないだろうに、この男は。

 そんな事を思いながらも、思わず緩い笑みを浮かべてしまうのであった。


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