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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第71話 バステビュート


 「すまないが先に行くぞ!」


 ギルドから説明を受けた後、これまたタイミング良くギルドに乗り込んで来た護衛の一人、タウラ。

 彼の話を聞く限り、此方の掴んだ情報は全て正解だった様で。

 アダマン侯爵家に幼子二人は連れていかれたらしく、ついでにダイアラスという組織の頭も現在その場に滞在しているらしい。

 そして悪い事に、街中に現れたという“神獣”が向かっているのも、その方角。

 であれば、未だ準備が終わっていない他の面々を待つ余裕などある筈も無く、俺達だけで飛び出した訳だが。


 「グラベル様! ちゃんと付いて行きますから全力で飛んで大丈夫ですよ! “胡麻ちゃん”よろしくね!」


 現状リリシアの風に乗り、俺達と案内役のタウラを飛ばして貰っているのだが。

 予想外な事に、ミーのパーティは彼女のグリフォンの背に乗り平然と付いて来ていた。

 しかも、それだけでは無く。


 「ライル! 遅れるなら置いていくからな!」


 「わぁってらい! 俺達の妹のピンチだ! 脚が千切れても付いていくからな!」


 シャームとライルザッハ王子は、建物の上を駆けながら此方を見失わない程度に付いて来ていた。

 正直、俺達だけで向かうつもりでリリシアに魔法を行使してもらったのだが……驚いた。

 今の若手は凄い、特に下を走っている二人は。

 現役の時の俺よりもずっと速いんじゃないかと思ってしまう程の速度で、ちゃんとこちらに付いて来る。


 「頼もしいな……が、もう少し急ぐぞリリシア!」


 「分かっている。タウラとやら、しっかり捕まっておけよ? お前達もちゃんと付いてこい! もっと飛ばすぞ!」


 「ひぃぃぃ! リリシア姉さん!? マジっすか!?」


 若干一名の悲鳴を聞きながら、リリシアが杖を後ろに構えて魔法を二重に行使する。

 すると速度はグンと上がり、今までよりも呼吸が苦しくなった。


 「あばばばばばばっ!」


 「正面に防壁を張ってやる! だからちゃんと道案内をしろ! 私達にはそのなんとか侯爵の家なんてわからな――」


 リリシアが苛立たし気に言葉を紡いだその瞬間。

 少し遠い場所に、雷が落ちた。

 いや、おい。この天気で、雷?

 なんて、一瞬呆けてしまいそうになったが。


 「リリシア、今のは……」


 「あぁ、間違いなく魔術だ。しかもあの威力……本当に“アイツ”かもしれないな」


 思わず、ギリッと奥歯を噛みしめた。

 もしも本当に“神獣”が蘇ったとするなら、多分この街はもう駄目だ。

 アイツは自然を愛してはいたが、人が嫌いだった。

 種族問わず、自らの縄張りに入った相手を狩り取る捕食者だったのだ。

 あんなものがもう一度蘇ったとなれば、今の俺達で倒せるかどうか……。

 どう考えても、あの頃よりずっと俺達は衰えているのだから。

 俺の場合は身体的な意味で、リリシアの場合は長期間戦線を離れたと言う意味で。

 だというのに。


 「う、嘘でしょ? さっき雷が落ちた場所、アダマン侯爵のお屋敷っすよ!? まさか先制攻撃とかしてないですよね!?」


 約一名、別の意味で焦り始めている護衛が騒ぎ始めた。

 あぁくそ、スーと王女の事でも一大事なのに。

 その現場に“神獣”と思われる個体も居るという事か?


 「クソッたれめ……リリシア、いざという時はスーを連れて逃げてくれ」


 「グラベル、しかし」


 「今の俺達には守りたい者が居る。優先順位は、しっかりと付けるべきだ」


 「……分かった」


 苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべたリリシアは、先程雷が落ちた地点に向かって更に加速するのであった。


 ――――


 「おいおいおいおい、本当に一大事じゃないか!」


 大きな屋敷、というかもはや城かと言いたくなるような建物の一部だけが、見事に破壊されていた。

 地上に降りたってからすぐに駆け出し、崩壊した場所へと足を向けたその時。


 「グラベル止まれ! もう一発来るぞ!」


 リリシアの一言に思わず足を止め、マントで身を守ってみれば。

 ズドンッ! と、耳がおかしくなりそうな轟音が響き渡った。

 それだけじゃない。

 マントで眼は守れたが、周囲に電流を放ったのか。

 やけに体がビリビリと痺れる。

 こういう所は、やはり自然現象の雷と違う様で。

 痺れる身体を無理やり動かしながら倒壊した場所へと向かってみれば。


 「スー! 無事か!?」


 破壊された壁の向こうは、食堂らしき場所。

 その場所には二人の男が倒れており、縛られた二人の幼子。

 そして、両者の間に立ちふさがっているのは。


 「出来れば違う個体だと思いたかったんだがな……お前か、お前なのか? “バステビュート”!」


 『よぉ、“こっち”じゃ久しぶりだな。グラベル』


 えらく軽い声を上げながら、巨大な猫が此方に視線を向けて来た。

 バステビュート。

 神獣と呼ばれた猫型の魔獣であり、様々な魔術を使う他……人語理解する。

 これらのあり得ない条件を満たしたコイツは、人々の罪を粛正する神の使いとも謳われ、俺とリリシアをギリギリまで追い詰めてくれた記憶の中では最強の魔獣。

 コイツを討伐した事により、俺達が英雄と呼ばれるきっかけとなった存在。

 だと言うのに、何故またコイツがココに居る?

 確かに首を刎ねた筈なのに。


 「貴様は死んだ筈だ、確かに殺した。しかし“戻って来た”のは確からしいな、バステビュート。戦いを楽しむ“神獣”らしいといえばそうだが……一つだけ言っておこう、これ以上周りの人間を傷つけてみろ。また首を落すぞ?」


 ガリッと奥歯から嫌な音が聞える程に噛みしめ、長剣を抜き放ってみれば。


 『あぁ~ったく、これだから見られたくなかったんだよ……後な、俺が言うまでも無いかも知れないが。今のお前じゃ俺には勝てねぇよ、前より相当老いてんだろ。以前の勝負は俺の方が老いぼれだったが、今じゃ状況が逆だ。ちいせぇ状態ならジジィとも言える年齢だが、“この姿”じゃ現役どころか若造だぜ?』


 「訳の分からない事を……」


 相手がどう動くか分からない以上、一瞬の油断も出来ない。

 せめて、アイツの足元に居るスー達だけでも回収しなければ。

 そんな事を考えながら冷や汗を流していれば。


 『ったく。歳とってそれなりになったかと思えば、大物相手じゃ若造みてぇに焦りやがって。もっと胸を張れよ英雄、お前は俺を殺したんだろうが。なっさけねぇなぁオイ。オラ、とっとと仕事しろ。娘っ子達を回収しろってんだ』


 何やら、良く分からない事を言い始めた。

 しかも攻撃する様子は無い様で、向こうも欠伸なんぞかましているではないか。


 「何のつもりだ?」


 『何のつもりも何も、同じ場所から生まれた“妹分”を守るのは“兄貴の役目”だろうが。それは人間でも動物でも、魔獣だって同じだ。だから守ってる上に、テメェなら預けられると思って任せてるんだが……無理ならこっちでやるぜ? この姿に戻った以上、不可能じゃねぇからな』


 「お、おい待て……その話を聞いている限りだと、まるで今までスーを守って来たのはお前だと言う様に聞えるんだが……」


 だとすれば、色々と納得がいく。

 やけに強力な術師に守られているスー。

 その正体は、神獣と呼ばれた森の獣。

 こんな馬鹿デカイ物が近くに居て気付かない事は無い筈なので、普段は何かしらの魔術で誤魔化しているのだろうが。

 しかしその場合グリフォンの時も、王城でさえコイツがスーを守った事になる。

 更に言うなら、スーには精霊さえも付いているのだ。


 『んじゃ、俺は消えるぞ。リリシアにまで見られたら、流石に面倒クセェからな』


 「ま、待てバステビュート! 何故お前はスーを助ける!? お前程の魔獣が、そして精霊が彼女を保護する理由は何だ!?」


 姿をくらませるつもりなのか、周囲に風魔法を放ち始めた神獣に対して叫んでみれば。

 相手は、猫の癖にニッと口元を吊り上げてから。


 『精霊の方は知らん。が、俺の方はさっき言った通りだ。お前がスーを守ってる理由と大して変わらねぇよ』


 それだけ言って、暴風と共に神獣は姿を消した。

 残っているのは崩壊した建物と、気を失った男が二人。

 そして。


 「えぇと、グラベル様……助けに来て頂いて、ありがとうございます……」


 「あ、はい……助けたのは、どうやら私ではない様ですが」


 目を覚ましている王女と挨拶を交わしながら、彼女達の拘束を解いていくのであった。

 すぐ近くでは、ビルが不満そうな声を上げているが。

 コイツまで攫われて来たのか、それとも相変わらずスーが放さなかったのか。


 「本当に、何がどうなっているのやら……」


 大きなため息を溢しながら、その後合流した皆と共に事態解決に当たるのであった。

 これ、どう報告すれば良いんだ?


 ――――


 目が覚めると、知らない天井が広がっていた。

 大丈夫だ、覚えている。

 俺は熊っ子と一緒に攫われ、ココは身の危険がたっぷりなテーマパークに近い状況だと理解している。

 だからこそ、カッ! と目を開いた瞬間に逃げ出そうとしてみた訳だが。


 「ギャー!」


 『おう、起きた途端何してんだお前』


 カプッと何かに頭を齧られ、思わず悲鳴を上げてしまった。

 しかし隣からは、落ち着いたビルの声が聞えて来た。


 「ビルッ! 助けてっ! 頭齧られた! 食われる!」


 『そのまま噛みしめる様子を見せた瞬間俺が雷でも落としてやるよ、派手にな』


 「それ俺も死ぬやつ!」


 ギャーギャー騒いでみるものの、頭を掴んでいる硬い物はハグハグと優しく挟んで来るだけで、俺の頭はプチッとはいかなかった。

 これはどんな拷問器具かと疑問に思い、硬い物を掴んで頭から外し視線を向けてみれば。


 「うぎゃぁぁぁ! またでっかいグリフォン!」


 『うるっせぇなぁ……お前が育てた一匹だろうが』


 はい? マジで?

 確かに悲鳴を上げてみれば、ちょっと悲しそうな顔を此方に向けて、クルルゥっと可愛らしい声を上げて来るが。

 もしかしてお前、ウチに居たグリフォン?

 こんなにデカくなったの? 馬みたいじゃん。


 「お、俺は嬉しいよ……立派に美味しそうになってくれて……」


 『相手からしたらたまったもんじゃねぇ発言だな』


 ビルに突っ込みを頂きながらも、ヒシッとグリフォンに抱き着いてみれば。

 脇腹辺りにゴスゴスと突っ込んで来る感触が一つ。

 今度は何だと視線を向けてみれば、そこにはいつも通りのサイズのウチに居たグリフォンが。

 ありゃ? それじゃこの子は誰グリフォン?

 わき腹に突っ込んで来る君は、間違いなくウチに居た子なんだけど。

 何故か額に紋章みたいなのがあるね、いつの間にか誰かと従魔契約を交わした兎さんみたいになっておられる。


 『そいつはお前が妹に渡したグリフォンだ。んで、さっきから拗ねてんのがお前が飼ってたヤツ。あのクマ娘に付いたぞ、喰う喰うと言いながらグリフォン全部取られやがって。だから言ったろ、間抜け』


 プークスクスとばかりに、ウチのブサ猫が煽って来て下さいますが。


 「お前がモモか」


 「ピュールルゥ」


 変な鳴き声を上げるグリフォンを抱き上げてみれば、未だ小型犬サイズのグリフォンは大人しく胸の中に納まってくれた。

 撫でてみれば、気持ちよさそうに目を細めてくれやがりまして。

 俺はお前等を食うつもりでいたと言うのに。


 「兎もそうだが、お前まで取られちゃったか」


 にへへっと笑えば、グリフォンの方も機嫌良さそう。

 従魔契約とやらを交わしても、これだけ嬉しそうにしてるんだ。

 なら、まぁ良いか。


 「ちゃんとあのクマっ子を守るんだぞ?」


 「ピューイ」


 「あの子はマジで妹系だからな、しっかりしろよ? お前が頼りだ」


 「ピィ!」


 任せろ! とばかりに羽を広げて見せるモモ。

 だったら、良いだろ。

 俺は食いたいだけだったが、イリーゼはこの子を求め、モモはイリーゼに付く事を選んだのだ。

 なら、俺が口を出す事ではない。

 何てことを思いながら、ニヤニヤしつつグリフォンをモフッていると。


 「ンピュルルル……」


 なんか凄い声を上げたデカいグリフォンが、俺の頭に顎を乗っけて来た。

 その際頭の上に居たムムが瞬時に脱走し、俺の服の中に入り込んで来たが。


 「あーはいはい。お前の事もモフッてやんよ、お疲れ様。妹の相手は疲れるだろ? ごめんなぁ? だけど、頼む。アイツは色々面倒くさいけど、寂しがり屋だしさ。俺としても心配なのよ」


 「……ピィ」


 「不満そうな声上げんじゃねぇよ、そんだけでっかくなれたのに」


 という事で、頭の上のグリフォンもモフモフ。

 しばらく二匹をモフってご機嫌取りをしていれば、今度は扉が良い勢いで開かれた。

 そして、慌てた様子でご登場成されたのは。


 「――! ――、スー!」


 目に涙を浮かべた熊っ子が、此方に向かってダイビングして来るではないか。

 待って、非常に待って。

 前は君のお兄さんとか、護衛の人とか居たけど。

 今はどう見ても獣しかいないんだわ。


 「ビ、ビル!」


 『無理』


 「あ、はい」


 一番頼りになる攻撃特化の御猫様に受けとめる術はなかったらしく、幼い熊っ子のダイレクトアタックを正面から受け止めるのであった。

 光景的には、素晴らしいね。

 嬉しい感情の爆発的なシーンだね。

 でもさ、飛びこむ勢いで誰かのお腹に突っ込んじゃいけないよ?


 「ぐはぁ!?」


 『お疲れさん』


 小動物達は一斉に俺から飛び退き、ビルは呆れた声を上げ。

 俺の後ろに構えた大型グリフォンは、吹っ飛ばない様に支えてくれたのだろうか?

 そのお陰で、俺はこの身一つで幼子の全力タックルを受け止める他無くなった訳だが。


 「――! ――、――!」


 なんか言っているけど、わかんねぇんすよ。

 ついでに、お腹も痛い上に頭もクラクラします。


 「ごめ、ビル……落ち着いたら起こして」


 『あいよ、ゆっくり寝とけ。いちいち手のかかるバカタレ』


 「あはは、マジでソレはごめん……今回も助けてくれたのかな、さんきゅ……」


 それだけ言ってから、完全に意識を手放すのであった。

 お姫様は、非常に石頭でした。


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