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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第68話 着々と


 「吐け、さもなければ殺す」


 「ヒュ~、やるなぁシャーム。五人相手にして、ソッコー終わらせるとは」


 気安い声を上げながら、ライルが兵を連れて室内に入って来た。

 私が今しがた撃退した連中を、民間人に偽装した兵士達がすぐに縛り上げていく。

 王族に牙を剥く、というよりも悪意を植え付けようとしている連中は、本当にそこら中に拠点を持っているらしい。

 街中で獣人主義を謳う様な奴等は、古い思想を捨てきれていないだけの集まりな様で、コレと言って暴動を起こしたりする程の行動力は見られない。

 問題なのはソレを隠れ蓑に動いている攻撃的な組織の方。

 どうやら大元は一つであり、ソイツ等が金をばら撒きながらコイツ等の様な下っ端を動かしている状態の様だ。

 ガラの悪い連中、冒険者、民間人。

 時に貧民までもが、金欲しさに“働いているだけ”という訳だ。


 「ここは随分と装備が揃っているな? 大元に近い存在の筈だ。早く吐け」


 「ハッ! 随分気の強いお嬢ちゃんだな! だが生憎と俺達は何も――」


 「そういうのは時間の無駄だ」


 組み伏せている相手の肩に、ナイフを一本突き立てた。

 随分と悲鳴を上げている所を見ると、本当に街中で威張り散らしていただけの連中みたいだ。

 先程も奇襲を掛けた私にろくに反応出来なかったんだ、戦闘経験などケンカ程度しかないのだろう。


 「次は逆の肩、その次は膝だ。安心しろ、変に動かなければそこまで出血する事は無い。コレは“そういう”ナイフだ」


 「お前誰に何してるか分かってんのか!? 俺達が誰に雇われてると思っていやがる!」


 「だからソレを聞いている」


 逆側の肩にもナイフを刺し込んで、相手の首にロープを巻きつけてから窓を開き、胸倉を掴んだまま上半身だけを外に放り出した。


 「なっ!? シャーム! それは流石にやり過ぎだ!」


 「問題ない、殺した訳じゃない」


 ライルが慌てて止めようとしてきたが、相手の脚はまだ傷つけていないのだ。

 窓枠に膝が引っかかった状態で、必死に此方へ戻ろうと足掻いている。

 首に巻かれたロープの端を私が持っている為落ちる事は無いが、手が使えない以上半端にぶら下げられては戻る事も難しいだろう。


 「しっかりと足に力を入れておく事だ。ここは四階だからな、このまま落ちれば怪我では済まないぞ?」


 「お、落ちっ!」


 膝から下だけを窓枠に残させ、首に巻かれたロープの端を調整してやれば、相手は妙な角度でぶら下がっている状態になった。


 「さぁ、話してもらおうか。言っておくが時間はそこまでないぞ? 暴れて窓枠から脚が外れれば首を吊られ、私がロープを離せばお前の態勢が崩れて地面へ真っ逆さま。精々姿勢を崩さない様に頑張ってくれ」


 などと説明している間にも首は締まっているので、相手の顔色はどんどんと悪くなっていく。

 早めに喋ってくれないと、言葉を紡ぐ為の空気が体内から無くなってしまいそうだが。


 「がっ! ぅ、ぎっ!」


 「何だって? しっかり喋らないと分からないだろう? あぁそうだ、先程次は膝だと約束していたな。ではそちらも進めてしまおうか、ナイフが刺さってもしっかりと足を引っ掛けておけよ?」


 もう一本ナイフを取り出して、切っ先を彼の膝に軽く押し付けてみれば。


 「ぃ、いぅ! だからっ、はっ早く、戻しっ!」


 「だから早く言え。ほら、膝が震えているぞ?」


 大きなため息を吐きながら、ほんの少しだけナイフの切っ先を相手の膝に突き刺した瞬間。


 「ダイアラス! ダイアラス、だっ! だから、早く……もど……」


 「まぁ、こんなモノか」


 何やら叫んだところで相手を室内に引っ張り込み、ロープを首から外してやれば。

 彼は随分と苦しそうな息を吐きながら床の上に転がった。


 「で、ダイアラスって何だ?」


 「お前……それも知らずにこんな事に首突っ込んでるのかよ……」


 もはや抵抗の意思は無いらしく、相手はグタッと脱力している。

 そう言われても、私はこの国の人間ではないのだ。

 どうしたものかとライルへと視線を向ければ、彼の方は随分と苦い顔をしながら床に転がった相手を睨んでいた。


 「何か知ってるのか? ライル」


 「ん、まぁそうだな。ウチの国に居る暗躍組織っつぅか、暴力組織っつぅか」


 「何故そんな物を野放しにしている?」


 「色々あんだよ、貴族の後ろ盾があったりとかな。しかも詳しい情報まで上がって来ない様な、逃げ隠れするのが上手い連中だ」


 コレはまた、少々面倒くさい相手が出て来てしまったらしい。


 ――――


 ビルがどっかに走って行ってから、俺達は未だピエロの芸を見ていた。

 とはいえ流石に路上パフォーマンスな訳で、あまりデカい事は出来ないのか。

 なんというか、小規模マジックショーみたいな感じ。

 手から花が出て来たり、空っぽの帽子から花が出て来たり、ポンッという炸裂音の後に花が……いや花率高いな!?

 もはやピエロでもマジシャンでもなく、ただの植物増殖術師だよ。

 御花の錬金術師とか言われてない? 大丈夫?

 思わずそんな感想が出て来てしまうが、周囲の反応は上々の様で。

 お客さんもイリーゼも、ついでに言えばリリシアも随分と興味深そうに眺めていた。

 皆女の子だねぇ、なんて考えながら護衛二人に目を向けると。

 どちらかと言えば俺の感想に近いのか、「また花か……花だな」みたいな瞳で見つめている。

 そうだよね、男の子だったらもっとこう……色々飛び出してきてほしいよね。

 いやでも魔法がある世界でのマジックって言うと、こういうものなのかな?

 “向こう側”で言えば「魔法の様に見せる」のがマジックな訳で、元々魔法があるならどちらかと言うと華やかさが求められたりとか?

 あり得る……気がする。

 だって現状ピエロの周りが花だらけなのだ、花屋かってくらいに。

 ソレを見て足を止めるお客さん達は、女性客多め。

 今この状態で、花屋の看板とか立てたら皆買っていきそうだよね。

 などとおかしな事を考え始めた辺りで、彼は一本の杖を取り出したでは無いか。

 リリシアが持っている様なでっかいのではなく、短い……タクトっていうんだっけ?

 音楽で指揮者が持っている様なアレを上に構えた。


 「――――!」


 イリーゼも興奮した様子で此方の手を掴み、何が起こるのかと目をキラキラさせている。

 すると。


 「お? おぉ? これはえぇと、良いの?」


 周囲には結構な突風が巻き起こり、先程まで花屋状態だったピエロの周りから花びらが飛ばされていく。

 そして風は俺達ギャラリーも呑み込んでいる為、観客はそれどころではない。

 特に女性客が多かった為、皆様スカートを必死に抑えておられる。

 わぁお、数少ない男性陣のお客さんにサービスでもしてるんですかね?

 何て事を思ったその時。


 「うぇっ!? え、何!?」


 急に強く手を引っ張られ、その場でコケそうになってしまった。

 先程まで手を掴んでいたのはイリーゼ。

 いきなり走りだしたりしたのかと、そちらに視線を向けてみれば。


 「あっ、コレ絶対不味いヤツ」


 先程のピエロが、イリーゼを抱えながらその場から離れようとしているではないか。

 しかしイリーゼは此方に助けを求めるかの様な瞳を向け、必死に何かを叫びながら俺の手を掴んでいる。

 で、あるならば。


 「放せピエロ! 人生初の癒し妹キャラに何しやがる!」


 叫びながら飛び掛かってみれば、カウンターパンチの如く顔面に掌を向けられてしまった。

 あっ、ヤバ。

 多分これなんかの魔法、しかも意識飛ぶヤツ……何て思考を最後に、何故か俺までピエロの脇に抱えられるのであった。


 ――――


 吹き荒れる突風が視覚を奪い、騒がしい風の音で状況の把握もままならない。

 思わず目を細め、スカートを抑えながら周囲に舞う花びらを見つめていれば。

 それはやがて空に向かって飛び去って行き、誰しもが離れていく花びらの群れを視線で追ってしまった。


 「いやはや……何かと思ったが、最近の大道芸は派手なんだな。まさかこんな魔術で締めくくるとは」


 遠くへ行ってしまった色とりどりの花々を見送ってから、改めて視界を正面に向けてみれば、先程の道化の姿さえも消えていた。

 見事なモノだ。

 混乱に至りそうな程の派手な演出と、目を引く色取りどりの花々。

 ソレが向かう先に意識を持って行き、その隙に姿をくらます。

 非常に単純だが、効果的な上に強い印象を残す事だろう。


 「なかなか面白かった。スー、どうだった? ……スー? あれ? スー!? どこだ!?」


 先程まで私達の少し前で、一緒に大道芸を見ていた筈の彼女の姿が見当たらない。

 最後の方には随分と人が集まって来ていたから、大人の影に隠れてしまっているのではないかと周りの必死に探してみたが。


 「イリーゼ様! イリーゼ様!? どこですか!?」


 「お嬢ー!? どこ行ったぁぁ!?」


 向こうの護衛二人も慌てふためいている所を見ると、やはり異常事態と考えて良さそうだ。

 護衛対象の二人が、忽然と姿を消してしまった。

 幼い二人である以上、興味を惹かれたモノに走り出したとか。

 先程の花びらを追って駆け出した、なんて事も考えられるが……。


 「護衛二人、地上は任せる! 私は上から捜す!」


 杖に腰かけ、再びその場に突風を巻き起こせば。

 周囲に居た一般市民は驚きの声を上げるが、今はそれどころでは無いのだ。

 すまないと心の中で謝りながら、上空へと飛び立ってみれば。


 「……っ! 人が多すぎる」


 しかも住宅地に近い事もあり、脇道も随分と入り組んでいる。

 そこら中に影が落ちて、大通りくらいしかまともに確認する事が出来ない。


 「上から大声で叫びながら探すか? しかしあの子が居なくなる時は、大抵食事関係……もしくは人助けか。だが今回は王女を連れているんだ、後者は考えにくい。周囲に食べ物の露店も無いとなれば、やはり誰かしらの手によってと考えるべきか……」


 ブツブツと一人で呟きながら、上空で周囲を観察していれば。


 「エルフの姉さーん! コレ! これ見て下さい!」


 護衛の一人が、下から大声を上げて来た。

 何かを見つけたのかと急降下してみると、そこには。


 「どうした、お前達」


 二匹の小動物が、何やら慌てた様子で動き回っていた。

 スーがイリーゼ王女に譲渡したらしい、グリフォンと兎。

 何かを探し回る様にウロウロと動き回ったかと思えば、兎の方が急に裏路地に向かって走り始めた。

 それに続き、グリフォンまで急加速して路地裏へと向かっていく。


 「クソッ、速いな……すまない、追うのは任せて良いか? 後で信号を……いや、相手に気付かれるな。二人で追って、片方は報告に来てくれ。私は冒険者ギルドに向かい、グラベルを連れて来る」


 「わかりましたぁ! 増援期待してますよ!?」


 「此方がハズレという可能性もあります、くれぐれも周囲を観察しながら移動してください!」


 それだけ叫んだ二人が、小動物の後に続いて走り出した。

 片方の兎は、既にイリーゼ王女と従魔契約を結んでいるのだ。

 だったら、“そう言う事”なのだと信じたいが。


 「あぁもう、何をやっているんだ私は! 何度も何度も同じミスばかり、長く生きていると言うのにまるで成長していないではないか! 一人では何も出来ない未熟者め!」


 自らに悪態つきながら、杖に乗って冒険者ギルドを目指す。

 完全に対象を見失ってしまったのだ、闇雲に探しても良い結果にはならないだろう。

 コレが普通の迷子だったのなら、見失った周囲を探すべきだが……片方は王族。

 もう片方は、いつでもトラブルに巻き込まれるスーなのだ。

 だとすれば、早めに戦力を整えておいた方が良い筈。

 なんて、これも自らに対しての言い訳なのかもしれないが。


 「今日は私が護衛だったんだ、だというのに何故目を離した馬鹿者! どの種族でも、子供から眼を離すなと母は言うでは無いか。本当にもう……どうして私はこうなんだ」


 両目に悔し涙を溜めながら、私は一直線に冒険者ギルドへとすっ飛んでいくのであった。


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