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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第67話 目立つ目立つ


 明日の事は明日考えよう、そんな風に思っていたのだが。

 どうやら翌日の俺には、考えられる時間が与えられなかったらしい。


 「スー! ――!」


 フードで顔を隠した熊っ子妹キャラに引っ張られながら、現在街中を散策中。

 護衛の二人と、リリシアは付いて来てくれているのだが。

 残る皆はそれぞれお仕事中。

 だというのに、俺は熊っ子とお買い物に勤しんでいる訳だ。

 しかも、お財布係は護衛の人。

 ひぃぃ、グラベル達ならまだ養われている感があったけど、こういう若くしてしっかり働いている人達のお財布から次々お金が支払われていく所を見ると……なんというか、胸が苦しい。

 本当にごめんなさいと何度も何度も謝りながら、俺達はお買い物と言う名の修行を続けるのであった。


 「なぁビル……他の皆はどこ行くって言ってた?」


 イリーゼに選んでもらった、やけにふぁさふぁさモコモコする服。

 何かもうドレスの領域に入ってるんじゃねぇの? って感じの服を着用しながら、腕に抱いたビルに声を掛けてみれば。


 『グラベルはトップと話した後、街中の同類の調査。シャームは熊男と一緒に街の調査だとさ』


 「街中の同類……あぁ、冒険者的なアレか。シャームも街中調査かぁ……皆仕事してるなぁ」


 『おい、このふぁさふぁさしたのどうにかならねぇのか? 爪が引っかかる』


 「もう肩にでも乗ってて……フリルだらけだよ、ナニコレ。疲れる上に恥ずかしいんだけど……」


 現状の俺は、それはもう女の子していた。

 まぁね? 体がこの状態だからね?

 下着とは諦めたよ、リリシアが用意してくれたヤツ大人しく着用しましたよ。

 でもさ、最初期以外はズボンを選び続けて来たのよ。

 前の国の姫様にドレス着せられそうになった時ですら、鋼の意思で拒否して来た訳ですよ。

 結局着せられたけど。

 だというのに……また着る事になってしまった、スカート。


 「あー……落ち着かない。スースーする」


 『そんなにか? リリシアなんかは普通に着てるが』


 「慣れればそう言うモノって感じかもだけど、慣れたくない」


 『そう言うもんか』


 興味無さそうな声を上げるビルが肩に乗っかり、ムムが相変わらず頭上で鎮座。

 傍から見たら相当凄い事になっているのだろう。

 思わずため息を溢していれば、前を歩く熊っ子が不安そうな目を向けて来るのだ。

 この瞳で見つめられたら、嫌とは言えまい。

 せっかくこの子が選んでくれたのだ、穿くさ着るさ。

 まさかそのままお買い上げして、この格好のまま街中をうろつくとは思わなかったけど。

 あぁ、普通の服と革鎧が恋しい……。


 「そういや、今日周囲は大丈夫なの? いつもより人数少ないのに、また狙撃されたらヤバくない? 俺装備ペラペラなんだけど」


 今更かもしれないが、先日俺は射抜かれたばかりなのだ。

 だからこそ、もっと警戒するべきというか……本来ならお出掛けを開始する前に気付くべき事柄だった気はするのだが。


 『いつも以上に気は張ってるよ。だが敵意……つぅか害意がないと反応し辛い、お前も警戒しておけ。殺す、貶める。そう言ったつもりが無い相手は、感じ取るのが難しいんだ』


 「う、うっす。なんか良く分かんないけど、注意するわ」


 何だか怖い事を言い始めたビルに答えながら、熊っ子に手を引かれ街中を歩いていれば。

 辿り着いた先には、路上で何やらピエロが見世物をしている。

 おぉ、こっちの世界もピエロはピエロなのか。

 そんな事を思いながら、芸を続ける彼の事を見つめていると。


 『スー、少し離れるぞ。何人かこっちを狙ってやがる』


 「え? いや、それヤバいんじゃ……」


 『なるべく人混みに紛れろ。幸いこの場所には、あのおかしな顔色の奴を見る為に人が集まってるからな』


 「おかしな顔色」


 おそらくピエロの事を言っているのだろうが、酷い言われ様だ。

 ビル、アレは化粧であって普段からあの顔色じゃないんだよ?

 なんて、ピエロの説明をする前にビルは地面に降り立ちタタタッとばかりに軽快に走り出した。


 『そこに居ろ、すぐ片付けて来る。矢が飛んで来ても俺がどうにかしてやるから、動き回るな』


 「りょ、了解~……? 気を付けてね?」


 さっさと走り去ってしまうウチのブサ猫を見送ってから、改めて周囲を眺めてみたが……うん、全然わかんねぇ。

 普通の街並みに見えるし、誰かが此方を見ている様な気配はしない。

 ただ、一点。

 ちょっとだけ違和感を覚えるとすれば。


 「なんか……いや、気のせいか?」


 ピエロがやけに俺達を“正面”として芸をしている気がするのだ。

 路上の端から、つい先ほど顔を出したばかりだというのに。

 彼が此方に集中して行動している気がする。

 子供が来たから、喜ばせようとして。

 そういう事も考えられるので、絶対とは言えないが。


 「良くないな。ビルが離れたからってすぐ不安になる癖が付いちゃってる気がする……」


 頭を振って、不安を取り除こうとしたが。

 なんだろう。

 集まっている皆に芸を見せている筈のピエロが、俺達に向かって更に口元を吊り上げた気がした。


 ――――


 「すまない、他国から来た冒険者なんだが仮登録をお願いできるか? 滞在期間はそこまで長く無いので、軽い仕事などを受けられればと思っているんだが」


 「畏まりました。では身分証をお預かりしますね? えぇと、アーラム王国から来た……グラベルさん。そして人族……あぁ、あぁ~」


 獣の耳を生やした受付嬢が、何やら非常に渋い顔を浮かべ始めた。

 もしかして冒険者側には未だに人族排他な感情が残っているとか、そういうことなのだろうか?

 なんて、少しだけ不安になってしまったその時。


 「アンタ、グラベルって言うのか? それで人族な上に、アーラムから来たって聞こえたが……間違いねぇか?」


 急に冒険者の一人が絡んで来て、此方と肩を組んで来るでは無いか。

 おやおや、随分と馴れ馴れしいと言うか何というか。

 冒険者であればあり得ない事ではないが、ここまで早い段階で絡まれたのは初めてだ。

 やはり場所や人によって、認識の差が発生しているのかも――


 「盗み聞きする様な事をして悪かった……しかしお前さん、“みゃーび”って冒険者を知ってるか? アンタと同じアーラムから来た、若い女の冒険者だ」


 「うん? あぁ、えっと。もしかして“ミヤビ”か? 仲間達からはミーと呼ばれている様な」


 「そう! そいつだ! やっぱりアイツ、向こうの国でもあの暴れっぷりなのか!?」


 なんて?


 「少し待って欲しい。その……詳しく聞かせてくれるか? 酒くらいは奢ろう。あと、出来れば受付嬢の方からもお話が伺いたいのだが」


 「……私、後ちょっとで仕事が終わるので、お酒の席を共にしても良いですか?」


 「……はい、お待ちしております」


 冒険者の男は嘆き、受付嬢は完全に覇気を失った様子で乾いた笑いを浮かべていた。

 コレは本当に、何があった?

 俺が予想していた様な“人族排他”とは別の意味で、皆様彼女の事を遠ざけている様だが。

 そして何より、周囲の冒険者ですら疲れ切った顔を浮かべているのは何故だ。


 「グラベルさんだったよな!? ちょっとそっちの冒険者の状況聞かせてくれよ! どうなってんだ!? あんなのが大量に居るってんなら、もう勘弁だぜ! 聞いてくれよ! この前だって――」


 「あぁえっと、話を伺いたい所だがまだこちらでの仮登録が……」


 「大丈夫ですよ。登録が済む頃には私の仕事時間も終わりますから、お席にお持ちしますね? そして、私もお酒を頂きますね?」


 本当に、何があった。

 さっきからジョッキを片手に冒険者達が集まって来るし、受付嬢は死んだ瞳のままさっさと仕事を終わらせようとしている。

 予想されるのは全て、ミヤビと名乗った彼女の愚痴を溢す為に。

 アイツ、アイツは……今度は何をしでかしてくれた。

 本来は彼女も調査を名目にこちらの国に乗り込んだ筈なのに、一体何をしているのか。

 こちらとは違って目立って相手の目を引くとは言っていたが、些か目立ち過ぎだ。

 何故短期間でここまで敵を作っているのか。


 「こっちだこっち! ココなら皆座れるだろ! おーい何でも良いからツマミと酒! この旦那にも同じ物を持って来てくれ!」


 「アーラムで少しばかり仕事をした事はあったが……あそこまでの暴君は居なかったぞ、向こうの国で何かあったのか!?」


 「アンタ随分歳がいってるが……まさかあぁいう若者ばっかりが増えて追い出されたのか!? だったら安心してくれ、こっちには年寄りでも出来る仕事が腐る程あるからな! あ、給仕さーん! この人にビール一つー!」


 何だか、凄い事になって来てしまった。

 周りから集まって来る冒険者は同情の瞳を向けて来るし、口々にアーラムの今を知ろうとしてくる。

 更には誰も彼も酒を頼み、俺が席に着くころには目の前にジョッキが所狭しに並んでいるでは無いか。

 またか、またコレなのか。

 これを全て飲んで帰ったら、またリリシアに怒られるんだが。

 などと考えながら冷や汗を流していれば。


 「グラベルさん、此方の街での登録も終わりましたよ? はいコレ、身分証になります」


 「あ、どうも……」


 私服に着替えた受付嬢が、にこやかな笑みを浮かべながら俺のタグを渡して来たかと思えば。


 「では、頂きますね」


 「あ、はい。どうぞ」


 俺の隣に腰を下ろし、一つのジョッキを掴んだかと思えばグイグイと一気飲み。

 それはもう、見事なまでの。

 一体何がここまで彼女を動かすのかと、ちょっとだけ不安な瞳を向けていれば。


 「グラベルさん! あのミーって冒険者、貴方から何とか言えませんか!? ランク的にはほぼ変わらないですよね!? 是非お願いします! ここ最近目立つ行動が多すぎます!」


 一瞬にして酔っ払いの雰囲気になった受付嬢が、先程とは打って変わり攻撃的な姿勢を向けて来た。

 これは、なんというか。

 情報収集に来たのに、凄い事になって来たな。


 「具体的には、何をしたのですか?」


 「討伐系の仕事成果は凄く良いんですよ、でも対人がまるで駄目です! 何やら入国の際に揉めたらしく、獣人の男性が声を掛ければ喧嘩が始まり。冒険者あるあるの軽いノリで声を掛ければ喧嘩が始まり、それを収める為に兵士が駆け付ければソッチにも襲い掛かり。なんなんですかあの子は! 獣人がそんなに嫌いなんですか!?」


 「あぁぁ……あの馬鹿、やり過ぎだ」


 獣人の“人族排他主義”の連中から目を引こうとした結果なのか、それとも彼女素行不良なのかは知らないが。

 流石に、ココまで来ると不味い。

 一応ギルドが匿っている所を見ると、“いよいよ”という一線は超えていない様だが……これではアーラムが“獣人排他”を謳っている様に思われてしまうだろう。

 もうちょっと、いろいろと釘を刺しておくべきだった……。

 しかし彼女の周りのメンバーは、案外普通だと思ったんだが。

 彼女の行動を許容している? もしくは止められない程に暴君と化しているのか?

 どっちにしろ問題なので、やはりもう一度お話合いをすべきだと心に誓ったその瞬間。


 「ちょっともう何なの!? なんで道を歩くだけで獣人から絡まれなきゃいけないのよ!? そんなに人族が嫌いな訳!?」


 「確かにコレは異常だけど……最後の方は絶対違う、ミーの眼つきと態度が悪いだけ……」


 「あと言葉遣いも悪い、そもそも少し声を掛けて来た相手なんか無視すれば良いだろうが……」


 「もう、嫌だ……ただでさえグリフォン連れて目立つのに。やっかみ含め絡まれる事は予想してたけど、全部の喧嘩を買う馬鹿がココに居る。私もう、リーダー辞める……」


 プリプリと怒った様子の一人と、思い切り疲れた表情の三人がギルドに入って来た。

 その瞬間、周囲では警戒する雰囲気が伝わって来る。

 あぁもう、彼女の行動はココまで大事になっているのか……なんて、大きなため息を溢したその瞬間。


 「クルルゥゥ……ガルルル」


 「“胡麻ちゃん”まで怒らないでよ! 私だって喧嘩したくてしてる訳じゃないの、相手が襲って来るんだから仕方ないじゃない。だって急にナイフ抜いて襲い掛かって来たらぶん殴るでしょう!?」


 やけにデカいグリフォンが、彼女達に続いてギルド内に入って来たでは無いか。

 うん? うん、あれは……スーが彼女にあげたグリフォンか?

 ウチに居るのはまだ小さいと言うのに、随分大きくなったものだ。

 アグニ達の元に残して来た個体も、まだ大型犬くらいの大きさだった気がしたが……本当に馬の様な大きさだな、アレは。

 人が乗っても問題なさそうだ。

 というか、デカい魔獣をギルドに連れて来るなと言いたい。

 そんな訳で大きなため息をつき、彼女達に説教の一つでもしようかと立ち上がった瞬間。


 「クエェェェ!」


 少女達より早くこちらの存在に気付いたらしいグリフォンが、奇声を上げながら突っ込んで来る。

 待て、何だ。

 その行動は何を意味している?

 攻撃しようとしているのなら、色々と対処が変わって来るのだが?


 「グリフォン、止まれ!」


 通じているかも分からない言葉を放ちながら、腰の剣に手を掛けてみれば。

 ズサッー! と音が響きそうな勢いで膝を折り、頭を下げたグリフォンが目の前に近寄って来た。

 ……敵意は、無い様だ。


 「クルルルゥ」


 何処か悲しそうな声を上げながら、デカくなったコイツは此方を見上げて来る訳だが。


 「えぇと、お疲れ様。大変だな、お前も……それからそっちの四人、すぐにこっちに来い。座れ、今すぐ聞きたい事が色々と出て来てしまった」


 ギルドに入って来た四人衆を睨みつけてみれば、三人はビクッと背筋を伸ばし。

 もう一人は。


 「グラベル様!」


 嬉々とした表情を浮かべたが、思い切り敵意を向けてみれば。


 「すみません、すぐ行きます……」


 笑顔のままダラダラと汗を流し、俺の前に正座して見せるのであった。

 本当に、何をやっているんだこの子達は……。


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