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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第64話 話合いの前の御挨拶


 「しゅっげぇ」


 『ほーん、あっちの男もなかなかやるじゃねぇの』


 御猫様のそんな御言葉を頂きながら、シャームと熊青年の試合を見守っている俺達。

 アレだ、二人共スピードタイプだ。

 たまに目で追えないくらいの速度に加速する程、両者走り回りながら短い木刀をぶつけ合っていた。

 やっば、アクション映画のワンシーンみたいだ。

 そう言う動きをしますって相手に伝えてあったの? ってくらいに、物凄い動きでもしっかりと攻防が続いていく。

 足払いからの踵落とし、でも平然と避けちゃう相手。

 一旦離れたかと思えば一気に接近して飛び上がりながらの連続キック、そこからの空中で体を回転させて超キック。

 どちらも見ているだけでワクワクする様な、物凄く綺麗な動きだった。

 すげぇぇ、俺もあんな風に動きたい。

 そんでもって、見た目だけなら次郎さんをこの環境に突っ込みたい。

 あの人が戦闘している所をしっかり見た事は無いが、あの見た目だ。

 三人がかりでハリウッド映画の俳優張りに格好良い動きを見せてくれるのだろう。


 「うっひゃぁ……すげぇ、それしか出て来ねぇ。おっ? シャームが押してる? いけいけ! 頑張れシャーム!」


 『うーむ、人の戦闘ならアレでも良いのかもしれんが……まだ浅いな』


 「そなの?」


 『二人共一撃一撃が軽い、あれじゃ獣相手には通用しねぇよ。ホラ、相手。平然と反撃してんだろ? 派手に攻撃しても、効いてなかった証拠だ』


 「おぉぉ……深い。連打ってのは一撃一撃を全力でってヤツだな?」


 『当然だ。騙す一撃じゃねぇなら、軽い一発なんぞ打ち込んでも意味はない。体力と時間の無駄だ』


 「ちなみに二人とビルが戦った場合は?」


 『最初から本気で掛かって来て、こっちも本気なら……十秒だな。一人五秒』


 「わぉ、ウチのブサ猫マジで兵器」


 本当かどうかは知らないが、ビルはマジで強いからな。

 しかも魔法も使うのだ、案外あり得るのかもしれん。

 でもこう格好良い戦闘は見入ってしまうモノで。

 せっかくならビルも格好良い戦闘をしてくれれば良いのに。

 なんて事を思いながら二人の戦闘を眺めていれば、隣に居る熊っ子が頬を膨らませながら此方を覗き込んで何かを呟いて来る。


 「何? どしたの?」


 『こういう方が好きなのかってよ』


 「え、好き。格好良いじゃん」


 『そうなのか?』


 「駄目?」


 『もっとこう、俺も派手に戦った方が良いか?』


 「ビルはそのままでも良い気がするけど、その方が強者感半端ないし。でもたまには派手な戦闘も見てみたいかも」


 『う~ん……考えておく』


 「でっかいビルはそのままでも格好良いから、無理せんでえぇよ?」


 そんな会話を繰り広げながら、胸に抱いたブサ猫をぶらぶら。

 本人はちょっと悩み始めている様だが、でっかいビルは居るだけで結構格好良いから別に良いと思うんだけどな。

 なんて事を思いながら、此方を睨んで来る熊っ子の頭に手を置いた。


 「君のお兄さん? かな? 凄いね、めっちゃ動くじゃん。シャームも凄いけど、お兄さんもめっちゃ格好良いね。俺もあんな風に動けないかなぁ……」


 ニカッと微笑みを浮かべてみれば、彼女は何やら言いたげな表情を浮かべたが。

 少し後にはニコッと柔らかい表情を浮かべてくれて、一緒に試合を観戦する。

 いいよね、コレがスポーツマンシップって奴だよ。

 正々堂々、実力をぶつけ合う。

 それだけでも憧れるのに、互いの動きがゲームかってくらいに激しいのだ。

 目を奪われるってのは、多分こういう事を言うのだろう。

 なんて事を思いながら、未だ走り回る二人を見つめていれば。


 「お? お?」


 『こりゃ決まったな』


 少しだけ焦った様に、熊お兄さんが踏み込んだかと思えば。

 その隙をシャームが付く形で、勝敗が決した様だ。

 え? あれ? 今までそんな事しなかったのに、そこで攻めちゃうの?

 なんて、第三者から見れば少しだけ違和感を覚える程度。

 でもそれは当人達からすれば決定的な差が生んだ、勝敗の分かれ目だったのかもしれない。

 とかなんとか、想像するだけで楽しいのがスポーツ観戦というモノだ。

 オリンピックとか、見ているだけで盛り上がるのもこう言う事なのだろう。


 「わーい! シャームが勝ったー!」


 『そうみてぇだな、あの娘っ子も成長したもんだ。今ならグリフォンくらい狩れるんじゃねぇか?』


 ブサ猫の御言葉を頂きながら、俺は試合会場へと走って行った。

 二人とも、超格好良かった。

 俺にとっては、ソレが大正義なのである。


 「――、――!」


 「ウェェイ!」


 グリフォンと兎を抱く熊っ子と共に、俺達は試合を終えた二人に向かって突撃するのであった。


 ――――


 「はぁ……はぁ……約束は、守ってもらうぞ」


 「強いなシャーム! 好きだ! でも強い男が好きだってんなら、俺が勝ってからだな! よし、何でも聞け!」


 そんな事を言い出す王子の首に木刀を当てていれば、隣からスーがタックルして来た。

 最初は私達の争いを止めに入ったのかと思ったが、本人は物凄く笑顔。

 どうやらしっかりと“模擬戦”だという事を理解しているらしい。

 ニコニコしながら、ムムを私の頭に乗っけて来た。

 あぁ、温かい。

 なんだか、筋肉の疲れが癒えていくような……。


 「んで、何が聞きたいんだっけ?」


 試合会場のど真ん中で胡坐をかく王子もまた、ニカッと清々しい笑顔を向けて来るではないか。

 何というか、想像と違った。

 獣人主体で人族を嫌うイメージがあったからこそ、もっとギスギスしているモノだとばかり思っていたが。


 「何故此方の国が未だアーラムに攻撃を仕掛けているのか。そして現状、此方の国では人族排他主義がどこまで進行しているのかを教えてもらいたい」


 こういうのは正直師匠やリリシアの管轄であり、私が口を出してもあまり役には立てないだろう。

 そんな事を思っていた訳だが、いつまでも甘い事は言っていられない。

 だったら私は私で、色々と情報を集めなければ。

 なんて、思っていたのだが。


 「正直、確定している様な内容はかなり少ない!」


 「……えぇぇ」


 「あぁでも待ってくれ! 役に立ちそうな情報というか、俺が知っている限りの話はするぞ? そうだな、えぇと。まずはアーラムに攻撃を仕掛けた云々、俺は知らん。少なくとも、父上もそのような行動は取ってない。という事で、一旦状況を整理しながら分かってる事を教えてやるよ!」


 などと言いながら王子はうーん、うーんと悩み始めてしまった。

 これは、聞く相手を間違ったか?

 などと思いながら、私も彼の前に膝を降ろして次の声を待っていれば。


 「行きなさいグリフォン、アナタなら勝てる筈です!」


 「んー? ビル、――!」


 王子が悩んでいる間、後ろからそんな声が聞えて来た。

 振り返ってみれば、何やら姫様から放たれたグリフォンがテッテッテと会場の真ん中に歩み寄り、対するはスーから放たれたビル。

 コレはもしかして、先程の私達の試合を見て真似しているのだろうか?

 両者とも、スーのペットである事は確かなのだが。


 「グリフォン! 行きなさい! がおー! ってしなさい!」


 「ビル! ――!」


 二人の声と同時に、物凄く緩い感じに威嚇しあう二匹の動物。

 グリフォンは羽をパタパタさせながら、キューっと可愛らしい声を上げ。

 ビルに関してはやる気無さそうに二本足で立ち上がり、前脚を上に上げると言う物凄く可愛らしい戦場が出来上がっていた。

 その後突進したグリフォンに対しビルがベシッとネコパンチを繰り広げ、グリフォンはコロコロと転がってから起き上がり再び翼を広げる。

 あの、もしかして。

 私達の戦闘は、動物から見ればあんな感じに見えていたのだろうか。

 ちょっと、些か……いやだいぶ恥ずかしいのだが?


 「諦めないで攻めるのですグリフォン!」


 「モモ」


 「ん? モモ?」


 「グリ――、モモ」


 「えーっと、あぁなるほど! このグリフォンはモモというのですね? モモ! 行きなさい! 突進です!」


 イリーゼ王女の命令と共に、翼を広げながら突っ込んで行ったグリフォンが、ビルと絡み合った状態でゴロンゴロンと会場を転げまわる。

 あぁ、緩い。

 そしてなんか、恥ずかしい。


 「ライル……その、話は別の部屋でしないか?」


 「ん? あぁ問題ない! 動いた後は水分補給だな!」


 「ん、そうしよう」


 という訳で未だ試合中の小動物を回収し、我々は別の部屋へと移るのであった。

 そうだよね、動物から見れば私達の動きなんてあんな風に映るのだろう……。


 ――――


 「それで、皆様は何を調べにいらっしゃったのでしょう? 神獣狩りの英雄、ですよね?」


 「我々の事をご存じでしたか……」


 「それはもう、私の父が一番警戒していた相手ですから」


 彼の部屋へと案内された俺とリリシアは、席に着くと同時にそんな言葉を投げかけられてしまった。

 参ったな……これは完全に相手の掌の上で躍っていた状態か。

 だとするとここで騒ぎを起こす訳にも、すぐにスーとシャームの下へ向かう訳にも行かなくなってしまった。

 なんて事を思いながら視線を鋭くしてみれば、彼は未だ緩い笑みを浮かべながら此方にグラスを並べ、高そうな酒を注いでくる。


 「そう警戒しないでください。先程言った通り、親同士話をしようと思っただけですから」


 「つまり我々を警戒してこの場に呼び出した訳では無い、と?」


 魔術用の杖に手を掛けたリリシアも鋭い声を上げるが、それでも彼は笑みを崩さないまま。

 それどころか、この部屋には護衛が居ないのだ。

 あり得るだろうか? こんな事。

 彼は王族で、しかもこの国の頂点に立っている人物だった筈。

 だというのに、ここまで無警戒に俺達の様な存在を個室に招くだろうか?


 「前もって言っておきましょう。先に行った通り、親同士話がしたかった。これは本音です、私には気軽にそう言う事を相談出来る相手が居ませんので……妻にも先立たれてしまい、子育て経験のあるメイド達に色々と聞いて回る日々ですよ。ささっ、どうぞ。我が国で作っているお酒です、お口に合えばよろしいのですが。あ、毒見が先ですよね。では私から」


 そう言って彼は、同じ瓶から酒が注がれたグラスを傾け、ふぅ……と緩い息を洩らし始めた。

 大丈夫、という事で良いのだろうか。

 そもそも前回王城で使われた様な毒でない限り、リリシアがその場で解毒できるが。


 「……では、頂きます」


 「なんとも、掴めないな」


 二人して苦い声を洩らしながらクイッと酒を呷ってみれば。

 旨い、非常に。

 少々酒気が強い気もするが、好きな味だ。

 リリシアも気に入ったのか、お? と言わんばかりの表情を浮かべながら、しげしげとグラスを覗き込んでいた。


 「気に入って頂けましたかな? でしたら、酒を飲みながらダラダラと話しましょう。いやはや、こういう立場になると休む暇があまり無くて……あぁしかし、その前にお仕事の話を進めてからの方がよろしいですかな? 皆さまは何を調べに我が国、ガルバリンデに?」


 あっけらかんと語る王の言葉に、思わずむせ込んでしまった。

 もはや此方の状況は完全に把握されていると思った方が良いのだろう。

 後は俺達の思考と、態度見ようとしているのか。

 アグニとは違ったタイプで、兎に角緩い雰囲気で急に懐に入って来るタイプの王様の様だ。


 「そこまで分かっていて、よく我々をこの場に招待しましたね?」


 「娘のお友達が居たので」


 「それだけですか?」


 「それだけですね。あぁでも、欲を言うなら神獣狩りのお二人から話を聞いてみたいというのもあります」


 そんな言葉を放ちながら、此方のグラスに酒を注いでくる王様。

 本当に読めない人だ。

 常に笑っている上に、飄々としている。

 人の表情で一番感情が読みづらいのは、笑顔。

 彼はソレが分かっていて、常に笑顔を浮かべているのだろう。


 「結論から申し上げるなら、我々は貴方方の敵になろうとしている訳ではない。アグニ……失礼、今のアーラムの王なら恐らく手を取り合う事も出来るでしょう。もちろん、此方の国の情勢、更には態度次第にはなってしまうでしょうが」


 「グラベル様、ありがとうございます。その言葉を聞いて、私は今非常に安心しています。それから、堅苦しい言葉遣いも不要ですよ? 我々の子供達が友人関係にある親同士、もっと緩やかに行きましょう。その為、仕事の話はさっさと終わらせて子供の話をしましょう。ね? だから要点だけまとめて、サクッと固い話は済ませてしまいましょう?」


 ほ、本当に読めないぞ……この人。

 どうしたものかと頬を掻きながらリリシアに視線を向けてみれば。


 「はぁ……貴方の言葉を全て鵜呑みにして話を進めようとするなら、それなりに早く済み子育て話に華を咲かせる事が出来るかもしれない。かなり無礼な質疑応答になるかもしれないが、構わないだろうか? ガルバリンデの王よ」


 「あぁ、これは失礼。私はマイルカーラと申します。親しい者にはマイルなんて呼ばれて、男らしくない名前だなんて言われてしまったものです。しかし気にせず、マイルとお呼びください。その方が覚えやすいでしょう?」


 「あ、あぁ……それでは、マイル……様。早速話を――」


 「様は不要ですよ、リリシア様?」


 「で、では我々も呼び捨てにして頂ければと……」


 リリシアもやり辛いのか、タジタジになりながらどうにか会話が進み始めた。

 ガルバリンデの王様……何というか、緩いな。

 コレが全て演技で、此方から情報を引き出そうとしているのなら見事だと言う他あるまい。

 そういう警戒をしてしまいそうになるが、彼自身はさっさと仕事の話を終わらせて子供の話をしたがっている雰囲気も伝わって来る。

 何たって、その……机の上と棚の上が。

 彼の子供であるライルザッハとイリーゼの写真で溢れているのだ。

 アレは魔道具によって作られた“写真”だ、間違いない。

 画家などに描かせたと言う訳では無く、絶対に高価な魔道具を使ってまで撮影したのであろう写真が飾られている。

 つまり、この人は。


 「俺達も大概だと思っていたが……貴方も相当な様だ」


 「お褒めに預かり、光栄です」


 「あぁ、はい……」


 という訳で、ガルバリンデの王様とのお話合いが始まったのであった。


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